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高圧・低圧 共通

単価が何円まで下がっても成り立つか、蓄電所の収支の下振れ試算の作り方

この記事では、蓄電所の売上を単価と約定率で分解し、単価が下がった場合にどうなるかを見る「下振れ試算」の作り方を説明します。売り手から1本だけの試算を受け取ったときに、何を求めればよいかも整理します。

売上は三つの数の掛け算で決まる

需給調整市場の売上は、出力(kW)×単価(円/ΔkW・30分)×約定したコマ数で決まります。1日は30分のコマが48あり、1年では17,520コマです。全コマに入札したとして、そのうち何割が落札されたかが約定率です。

この式から分かるとおり、出力は設備で決まりますが、単価と約定率は市場で決まります。将来の単価は、制度の変更や参入する蓄電池の量によって動きます。海外の先行市場では、蓄電池の設備量が調整力の必要量を超えたところで調整力の単価が下がりました。そのため、一つの単価だけで組んだ試算は、条件が変わったときの姿が見えません。

単価ごとの売上を並べる

出力2,000kWの蓄電所で、全コマに入札して9割が約定したとすると、単価ごとの年間売上は次のようになります。

単価別の年間売上(出力2,000kW・約定率90%)
  • 単価10円約3.15億円
  • 単価7円約2.21億円
  • 単価5円約1.58億円
  • 単価3円約0.95億円

2,000kW×17,520コマ×単価×約定率で計算した例です。見積りや収益の見込みではありません。実際には商品の組み合わせや充電のための待機などで変わります。

単価が半分になれば売上も半分になります。費用の多くは単価にかかわらず毎年かかるため、利益はそれ以上の割合で減ります。どの単価で費用を賄えなくなるかを知ることが、下振れ試算の目的です。

約定率も下げて見る

同じ条件で約定率を70%にすると、単価10円でも年間売上は約2.45億円になります。約定率は入札したコマのうち実際に落札されたコマの割合で、90%を超える約定率は楽観的な前提であることが多いとされています。単価だけでなく、約定率も下げた組み合わせを用意すると、試算の幅が見えてきます。

平均の約定単価 約定率90% 約定率70%
10円 約3.15億円 約2.45億円
7円 約2.21億円 約1.72億円
5円 約1.58億円 約1.23億円
3円 約0.95億円 約0.74億円

差し引く費用も前提をそろえる

売上から差し引く費用には、保守・監視、保険、固定資産税、借地なら土地の賃料、電池の劣化と機器の更新、運用終了時の撤去費用、充電のための電力費があります。アグリゲーターへの手数料もかかります。これらは単価が下がっても大きくは減りません。下振れ試算では、費用を楽観的に置いていないかも一緒に確かめます。

売り手の試算が1本だけのとき

単価を2割、3割下げても回収できるかが、見るべきポイントです。売り手の試算が1本だけなら、次のような形で複数の試算を求めます。

  1. 試算に使った単価、1日の約定コマ数、約定率を明示してもらう
  2. 単価を2割下げた場合、3割下げた場合の試算を並べてもらう
  3. 約定率を下げた場合の試算も加えてもらう
  4. それぞれで投資回収年数とIRRがどう変わるかを確認する

試算表の作り方の例

下振れ試算は、複雑なモデルでなくても作れます。表の縦に単価、横に約定率を並べ、それぞれの組み合わせで年間売上を出します。次に、毎年かかる費用を差し引いて年間の利益の目安を出し、投資額を何年で回収できるかを並べます。こうすると、どの組み合わせから回収が難しくなるかが一目で分かります。

単価の置き方にも注意が必要です。需給調整市場では、2026年9月1日の実需給から一次調整力などのΔkWの上限が10円、二次調整力②と三次調整力①が7.21円になりました。上限の単価がずっと続く前提は、試算としては楽観的です。上限より低い単価をいくつか置き、平均の約定単価として見るのが現実的です。

年ごとに単価を変える方法もあります。初期は高めに置き、蓄電池の参入が進むにつれて下がる形にすると、単価が高い初期にどれだけ回収できるかが見えます。運用期間全体を一つの単価で置いた試算と並べると、前提の違いが結果にどう効くかが分かります。

低圧の49.9kWでも同じ考え方が使えます。出力が小さい分、売上の絶対額は小さくなりますが、単価と約定率で売上が比例して動く点は変わりません。

どの試算でも、前提として置いた数字を表の下に書き添えておくと、後から見直すときに役立ちます。

まとめ

  • 売上は出力×単価×約定したコマ数で決まり、単価と約定率は市場で動きます。
  • 単価を変えた複数の試算を並べ、費用を賄えなくなる水準を確かめます。
  • 約定率も下げて見ると、楽観的な前提を避けられます。
  • 試算が1本だけなら、2割・3割下げた場合の試算を求めます。

出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。

出典

  • 系統用蓄電池 解説ブック2026(高圧編)

※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。

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