
答え:蓄電所の投資回収年数は、最初にかかった投資額を、毎年の手取りの累計が上回るまでの年数です。手取りは売上そのものではなく、アグリゲーター手数料、保守費、保険、税などを差し引いた金額で考えます。単価が年を追って下がる前提でも回収できるかを確かめることが、回収年数を読むうえでの基本です。
回収年数を決める二つの数字
回収年数は「投資額」と「毎年の手取り」の二つで決まります。どちらの数字に何を含めるかで、同じ案件でも年数は大きく変わります。
- 売上出力×単価×約定したコマ数(+卸電力市場など)
- 手数料を引くアグリゲーター手数料。収益の10%前後が多い
- 運用の費用を引く充電の電力費、保守・監視、保険、地代
- 税などを引く固定資産税(償却資産)、発電側課金、法人税など
- 手取りこれを毎年積み上げ、投資額を上回る年が回収
投資額に何を含めるか
投資額は、設備と工事の代金だけでなく、土地の代金や賃料、工事費負担金、接続の手続きの費用、諸手続きの費用まで含めて考えます。低圧編では、IRRや回収年数を比べるときに、分母の投資額に土地と工事費負担金を入れているかを揃えるよう注意を促しています。
土地や負担金を除いた金額で回収年数を計算すると、実際より短く見えます。売り手の試算を見るときは、投資額の内訳を最初に確認します。
手取りは年ごとに変わる
回収年数を「投資額÷1年目の手取り」で計算すると、多くの場合は短く出すぎます。手取りは毎年同じではないためです。
- 単価の変化:需給調整市場の単価は制度と参加者の数で動き、上限価格も引き下げられてきた。年を追って下がる前提を置くかどうかで結果が変わる
- 電池の劣化:容量が減ると、使える時間や約定できる量に影響する
- 機器の更新:PCSの交換などの費用が途中の年に発生する
- 固定資産税:設備の簿価に対して毎年かかり、取得価額の約1.4%から逓減する
このため、年ごとの手取りを並べて累計を取り、累計が投資額を超える年を見るのが確実です。単価が高い初期に多く回収できるかどうかも、この累計で分かります。
回収年数と合わせて見る指標
| 指標 | 見るポイント |
|---|---|
| 投資回収年数 | 累計の手取りが投資額を超える年。初期に多く回収できるか |
| 累計の収益 | 営業利益と減価償却費の累計が、投資額の何倍になるか |
| IRR(内部収益率) | 投資と回収の時期を含めた利回り。15年か20年か、期間を揃える |
| 下振れへの強さ | 単価を2割、3割下げても回収できるか |
自分で確かめる手順
- 投資額の内訳(設備、工事、土地、工事費負担金、諸手続き、税の区分)を確認する
- 売上の前提(単価、約定率、劣化率)を確認する
- 差し引く費用がすべて入っているかを、費用の一覧と照らして確認する
- 年ごとの手取りと累計の表を出してもらう
- 単価を下げた試算でも回収できるかを確かめる
表面利回り(売上÷投資額)と、費用を引いた後の実質の利回りは大きく違います。回収年数も、手取りで計算されているかを最初に確かめてください。
まとめ
- 回収年数は、毎年の手取りの累計が投資額を上回るまでの年数で決まる
- 投資額には土地と工事費負担金まで含め、手取りは手数料・運用費・税を差し引いて考える
- 単価の変化、劣化、機器の更新、固定資産税の逓減で手取りは年ごとに変わるため、累計の表で確かめる
- 単価を2割、3割下げた試算でも回収できるかを、IRRや累計収益と合わせて確認する
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。