
答え:蓄電所の売上は毎月一定ではありません。卸電力市場の価格は季節や天候で動き、需給調整市場の単価も募集量や参加者の数、制度の変更で変わるためです。収支は年単位の試算で判断しつつ、資金繰りは月ごとの変動を前提に組み立てることが大切です。
売上の式から見る、変わる要素
需給調整市場の売上は「出力×単価×約定したコマ数」で決まります。出力は設備で決まっているため、月ごとに動くのは単価と約定したコマ数です。卸電力市場の値差による収入は、充電する時間と放電する時間の価格差で決まり、これも月や日によって大きく変わります。
- 需給調整市場の単価募集量、応札する設備の数、上限価格などの制度で動く
- 約定したコマ数入札したコマのうち落札された割合(約定率)で変わる
- 卸電力市場の値差太陽光の多い時期の昼の安値と夕方の高値の差
- 設備の稼働点検や不具合で止まった時間は収入にならない
上から順に、収入への影響が大きくなりやすい要因です。
卸電力市場は季節で値差が変わる
日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格は、太陽光の発電が多い春や秋の昼に下がり、夕方に上がる傾向があります。昼に安く充電し、夕方に高く放電する運用では、この値差が大きい時期ほど収入が増えます。反対に、昼と夕方の価格差が小さい時期や日は、値差の収入は少なくなります。
卸電力市場の収入は、需給調整市場で約定しなかった時間を補う位置づけで、収入の支えになります。季節による変動は、主にこの部分に表れます。
需給調整市場は制度と参加者で動く
需給調整市場の単価は、制度と参加者の数で決まります。2026年度は、前日取引への移行、募集量の見直し、揚水発電の随意契約、上限価格の引き下げが重なり、単価は全エリアで下がりました。このように、季節よりも制度の変更や市場に参加する蓄電池の増加によって、ある時点から水準が変わることがあります。
月ごとの変動と、制度の変更による水準の変化は、性質が違います。前者は一年を通せばならされますが、後者はその後の年の収入全体に影響します。試算を見るときは、この二つを分けて考えます。
年単位と月単位、両方で見る
| 見方 | 使う場面 | 確かめること |
|---|---|---|
| 年単位の試算 | 投資の判断、回収年数の見積り | 平均の単価と約定率の前提、複数の単価での試算 |
| 月単位の見込み | 資金繰り、返済計画 | 売上が少ない月でも、返済や固定費を払えるか |
融資の返済や保守費、保険料などは毎月または毎年決まった額が出ていきます。売上の少ない月が続いても支払いが滞らないよう、手元に余裕資金を持つか、返済の条件を売上の変動に合わせて相談しておくことが考えられます。運用月から入金まで数か月かかる点も、資金繰りに織り込みます。
試算を受け取ったら確かめること
- 年間の売上が、月ごとや季節ごとの内訳で示されているか
- 単価の前提が「いつの」「どの商品の」「どのエリアの」数字か
- 上限価格の改定後の水準で組み直されているか
- 単価や約定率を下げた場合の試算があるか
月ごとの内訳があれば、運用が始まった後に精算書と比べて、試算どおりに動いているかを確かめる手がかりにもなります。
まとめ
- 蓄電所の売上は、単価、約定したコマ数、卸電力市場の値差によって月ごとに変わる
- 卸電力市場の値差は、太陽光の多い春や秋に昼が安く夕方が高い形で季節の影響を受ける
- 需給調整市場の単価は制度と参加者の数で水準そのものが変わることがあり、季節変動とは分けて考える
- 投資判断は年単位の試算で、資金繰りは月ごとの変動を前提に組み立てる
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。