
答え:系統用の低圧蓄電所は、停電のときに地域や自宅で使える非常電源にはなりません。電力網に充電と放電の働きを提供して対価を得る設備であり、停電中は系統から切り離れて止まるのが原則です。
低圧蓄電所は、もともと何のための設備ですか
電力網(系統)の周波数を保つための調整力を提供し、その対価を受け取るための設備です。
系統用蓄電池は、家庭や工場の中ではなく、電力網に単独でつながる蓄電池です。自前で電気を使うことはなく、電力網に対して充電と放電の働きを提供します。出力49.9kW・容量200kWh前後の低圧蓄電所は、電柱から低圧で受電し、アグリゲーターが束ねて需給調整市場に入札します。収入の中心は、一次調整力の「待機の対価」です。
一次調整力は、周波数の変化を蓄電池自身が検知し、10秒以内に自動で出力を変える調整力です。つまり低圧蓄電所の役目は、電力網が正常に動いている状態を支えることにあります。特定の家や地域に電気を届ける役目は、設計の段階から想定されていません。
停電が起きたとき、低圧蓄電所はどう動きますか
電力網から切り離れて運転を止めるのが原則です。
系統につながる発電設備や蓄電設備は、電力網が止まったときに単独で電気を流し続けないように作られています。停電中に設備から電気が流れると、復旧作業をする人や周辺の設備に危険が及ぶためです。低圧蓄電所も同じ考え方で、系統の異常を検知すると切り離れ、系統が戻ってから運転を再開します。
通常時
- 電力網とつながって待機する
- 周波数の変化に応じて充電・放電する
- アグリゲーター経由で対価を受け取る
停電時
- 電力網から切り離れて止まる
- 周辺の家や施設へは電気を送らない
- 系統の復旧後に運転を再開する
系統用の設備は、電力網が動いていることを前提に働きます。
それなら、停電中の収入はどうなりますか
運転が止まっている間は、その時間の調整力を提供できません。
需給調整市場では、約定した時間に正しく待機・応動できたかが評価されます。停電や機器の不具合で止まった時間は、待機の対価を得られません。こうした止まった期間の収入への備えとして、保険の一つに事業中断の補償があります。停電を含む止まり方と保険の関係は、機器保険と事業中断保険の違いで整理しています。
自宅の非常用に使える蓄電池とは、何が違いますか
電気をどこで使うかと、誰から対価を得るかが違います。
家庭や工場に置く需要家側の蓄電池は、建物の中の電気を賄うための設備です。機種や配線によっては、停電時に建物の中だけで電気を使える仕組みを持つものもあります。一方、系統用の蓄電池は建物の中の電気を賄わず、電力網への働きで対価を得ます。同じ「蓄電池」という言葉でも、目的と配線が別物です。
| 項目 | 系統用(低圧蓄電所) | 需要家側の蓄電池 |
|---|---|---|
| つながる先 | 電力網に単独でつながる | 建物の中の配線につながる |
| 電気の使い道 | 自前では使わない | 建物の中で使う |
| 収入 | 調整力の対価 | 電気代の削減が中心 |
| 停電時 | 切り離れて止まる | 機種により建物内で使える |
地域の防災に役立てる方法はありますか
系統用の蓄電所で地域へ直接電気を送ることは想定されていませんが、電力網を支える働きを通じて間接的に安定に寄与します。
太陽光や風力が増えるほど、周波数を保つ調整力の需要は増えます。蓄電池は応答が速く正確なため、その担い手として評価されています。電力網の周波数が保たれることは、大規模な停電を防ぐ土台の一つです。ただし、個別の停電の場面で近隣に電気を配る機能はありません。地元の方から「停電のときに使えるのか」と尋ねられたときは、この違いを正確に説明することが大切です。
購入前に、何を確かめておけばよいですか
停電や系統の異常で止まったときの扱いを、契約と保険で確かめます。
- 系統の異常で止まった時間のペナルティを、誰が負うか(アグリゲーター契約)
- 停電の後、運転の再開を誰が確認するか(保守・監視の契約)
- 止まった期間の収入を補う保険が付いているか
- 通信の不具合で応動できなかった場合の取り決め
止まったときの責任の分担は、アグリゲーター契約書の確認点もあわせてご覧ください。
近隣の方に尋ねられたら、どう説明すればよいですか
電力網を支える設備であり、停電時に電気を配る設備ではないと説明します。
地元では、蓄電池と聞いて防災用の設備を思い浮かべる方も少なくありません。期待と実際が食い違ったまま設置が進むと、後で不信につながります。説明の際は、電力網に調整力を提供して対価を得る仕組みであること、停電時は安全のために止まること、周波数を保つ働きが電力網の安定に寄与することの三点を、順に伝えると誤解が生じにくくなります。
まとめ
- 低圧蓄電所は電力網に調整力を提供する設備で、停電時の非常電源にはなりません。
- 停電中は系統から切り離れて止まるのが原則で、地域や自宅へ電気を送る仕組みはありません。
- 非常用の電源が目的なら、建物の中で使う需要家側の蓄電池を別に考えます。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。