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上限10円時代の需給調整市場 蓄電池の収入はこれからどこへ向かうのか

2026年9月1日、蓄電池の主な収入源である一次調整力の上限価格が10円になりました。この記事では、需給調整市場で何が売られているのか、2026年に何が変わったのか、そしてこれから蓄電池の収入はどこへ向かうのかを、公表データをもとに解説します。

上限価格は19.51円から10円へ

一次調整力の上限価格は、2年前までは19.51円でした。2026年3月に15円、9月から10円へと引き下げられ、1年足らずで半分近くまで下がったことになります。蓄電所の広告には、以前の単価で計算したとみられる数字もまだ見られるため、前提の確認が欠かせません。

上限価格の推移は、市場の前提が短期間で大きく変わりうることを示しています。収益の見通しを考えるときは、現在の単価だけでなく、その単価がどのような制度のもとで決まっているかを理解しておく必要があります。

需給調整市場で売っているもの

需給調整市場で売っているのは電気そのものではありません。周波数が乱れたときに、すぐに出力を出せる状態で待機していること、すなわちΔkW(デルタキロワット)です。買い手は東京電力パワーグリッドのような各エリアの送配電会社で、約定した時間帯は実際に放電しなくても対価が支払われます。

この市場で蓄電池は高く評価されてきました。2025年度の一次調整力では、蓄電池の平均落札単価が月ごとに8.82円から13.52円、火力は2.05円から3.39円でした。指令から1秒以内に出力を変えられ、燃料も要らない。速く正確に応える設備ほど高く売れるという市場の性格が、数字に表れています。

需給調整市場で売っているもの
蓄電所すぐ出力できる状態で待機
ΔkW対価
アグリゲーター複数の市場を最適化
ΔkW約定代金
送配電会社各エリアの買い手

約定した時間帯は、放電しなくても対価が支払われる。

2025年度は調整力が足りなかった

2025年度の一次調整力は、北海道・中国・四国を除くエリアで、募集量に対して4割から9割以上が不足していました。特に東京エリアは不足が全国で最も大きく、平均単価も1年を通じて全国平均を上回りました。

不足が大きいほど、応札した設備が約定しやすく、単価も高くなりやすい状況でした。2025年度の蓄電池の高い落札単価は、こうした需給の状況を背景にしたものだといえます。

2026年に重なった変化

2026年にはいくつもの変化が重なりました。

  • 3月14日から、取引が前日に決まる形に変更
  • 募集量の見直し
  • 揚水発電の随意契約の開始
  • 上限価格の引き下げ

この結果、単価は全エリアで下がっています。一方で、不足の幅も縮まってきています。

単価の下落と不足の縮小は、同じ方向の動きです。調整力の供給が増え、制度の見直しが進むにつれて、以前のような高い単価を前提にすることは難しくなっています。

単価で売上はどう変わるか

上限10円は「最高でも10円」という意味で、10円で売れ続けるわけではありません。2MWの蓄電所が9割の時間に約定したと仮定し、平均単価ごとの年間売上を計算すると次のとおりです。これは計算例で、見積りや収益の見込みではありません。

平均単価 年間売上(2MW・約定率9割の計算例)
10円 約3.15億円
7円 約2.21億円
5円 約1.58億円
3円 約0.95億円

単価が半分になれば、売上もほぼ半分になります。試算がいつの単価で作られているかが重要なのはこのためです。

上限価格の引き下げは、上限近くで落札されていた時期の数字をそのまま使えないことを意味します。試算を見るときは、単価をいくらに置いているか、その根拠は何かを最初に確認します。

平均単価別の年間売上(2MW・約定率9割)
  • 10円約3.15億円
  • 7円約2.21億円
  • 5円約1.58億円
  • 3円約0.95億円

計算例で、見積りや収益の見込みではない。

需給調整市場だけではない収入源

先に蓄電池が増えた海外では、蓄電池の設備量が調整力の必要量を超えたあたりで調整力の単価が下がり、収益の中心は卸電力市場の値差に移りました。日本でも同じ流れになるとの見方があり、需給調整市場だけに頼らない収入の組み立てが重要になります。

  • 卸電力市場:太陽光が多い昼は電気が安く、夕方は高い。この値差を取ります。
  • 容量市場:4年先の供給力を確保する市場です。2029年度分の約定価格は、東京・東北エリアで1kWあたり15,111円でした。

こうした複数の市場の組み合わせはアグリゲーターが日々最適化するため、どのアグリゲーターと組むかも収入を左右します。

収入源が複数になると、どの市場にどれだけの容量を振り向けるかの判断が収益を左右します。需給調整市場の単価が下がる局面では、卸電力市場の値差や容量市場の収入をどう組み合わせるかが、案件ごとの差になって表れます。試算を見る際は、需給調整市場以外の収入をどのような前提で置いているかも確認しておくことが重要です。

上限10円時代の案件の選び方

上限に近い単価が続く前提で選ばないことが基本です。何円まで下がっても回収できるかを確かめ、売り手の試算が1本だけであれば、複数の単価での試算を求めます。

運転開始の時期も重要です。単価が高いうちに動き出した案件ほど、最初の数年で多く回収できます。調整力の主役が火力から蓄電池に移っている流れは変わっていません。

下振れに強く、早く動ける案件を選ぶことができれば、上限10円の時代でも蓄電所は投資対象として検討に値すると考えられます。

まとめ

  • 一次調整力の上限価格は19.51円から15円、2026年9月1日から10円になりました。
  • 2025年度は調整力が大きく不足し、蓄電池は火力を大きく上回る単価で落札されていました。
  • 2026年は複数の変化が重なり単価は下落。売上は単価にほぼ比例して変わります。
  • 卸電力市場や容量市場を組み合わせ、下振れに強く早く動ける案件かを見ることが重要です。

出典

  • 電力需給調整力取引所(EPRX)「2025年度の取引実績について」(2026年6月)
  • 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月)
  • 電力広域的運営推進機関 容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度2029年度)
  • ※売上の数字は計算例で、見積りや収益の見込みではありません。

※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。

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