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テキサス・イギリス・豪州で起きた蓄電池の値崩れと日本への示唆

蓄電池は収益性が高いと言われてきましたが、日本より先に蓄電池が増えた海外の市場では、主な収益源だった調整力の単価が大きく下がりました。この記事では、アメリカ・テキサス州、イギリス、オーストラリアで何が起きたのか、なぜ値崩れしたのか、そして日本の蓄電所投資をどう考えればよいのかを整理します。

テキサスで起きたこと

テキサス州の電力市場では、蓄電池の導入が急速に進みました。設備量は2024年末に9.5ギガワットとなり、2026年4月から6月期には16ギガワットに達しています。

この間、調整力の単価は大きく下がりました。ある調整力の商品では、2023年から2024年の1年間で、単価がおよそ8分の1になっています。蓄電池にとって最も条件のよかった収益源が、短い期間で縮小したことになります。

イギリスとオーストラリアで起きたこと

イギリスの蓄電池1MWあたり年間総収益
  • 2022年15万6千ポンド
  • 2023年5万1千ポンド
  • その後7万2千ポンド

ダイナミック・コンテインメントの単価は17ポンドから1.38ポンドへ(約12分の1)。

イギリスでも同様の動きがありました。蓄電池の主要な収益源だったダイナミック・コンテインメントという調整力の単価は、1メガワット・1時間あたり17ポンドから1.38ポンドまで下がりました。約12分の1の水準です。

蓄電池1メガワットあたりの年間総収益も大きく変動しました。

年 1MWあたりの年間総収益
2022年 15万6千ポンド
2023年 5万1千ポンド
その後 7万2千ポンドまで持ち直し

一度大きく落ち込んだあと、一定の水準まで回復している点は押さえておく必要があります。オーストラリアでも、調整力にかかる四半期ごとの費用は、ピークから大きく下がっています。

なぜ値崩れが起きたのか

値崩れが起きる流れ
  1. 小さな市場調整力の必要量はもともと小さい
  2. 蓄電池が殺到応答が速く燃料不要で短期間に参入
  3. 単価が崩れる設備量が必要量の1.5〜2倍に達したあたり
  4. 値差で下げ止まり卸電力の値差の価値付近で止まる

3つの市場には共通するパターンがあります。

  1. 調整力の市場は、もともと必要とされる量が小さい
  2. そこに、応答が速く燃料も要らない蓄電池が短期間で大量に参入する
  3. 蓄電池の設備量が必要量の1.5倍から2倍に達したあたりで、単価が崩れる

ただし、単価はゼロまでは下がりませんでした。蓄電池には、卸電力市場で安い時間帯に充電し、高い時間帯に売るという別の収益機会があるためです。調整力の単価は、この値差の価値に近い水準で下げ止まります。その結果、蓄電池の収益の中心は、調整力から卸電力の値差へと移っていきました。

値崩れの影響を受けたのはどの案件か

海外の経験から読み取れるのは、値崩れの影響が案件の時期によって大きく異なったという点です。単価が高い時期に運転を始めた蓄電池は、最初の数年で投資の多くを回収できました。影響を強く受けたのは、遅れて市場に入った案件です。また、値崩れの後も蓄電池は卸電力の値差で収益を上げ続けています。電力網に調整の力が必要だという構造そのものは変わらないためです。

日本の現状

日本でも、高圧以上の系統用蓄電池の接続の契約申込みは約4,087万kWに達しています。一方、実際に系統につながったのは約128万kW(2026年6月末時点)で、まだ一部にとどまります。

申込みの多くは、空き容量、工事費、土地の問題で進んでいません。申込みのすべてが建設されるわけではありません。それでも、時間をかけて蓄電池が増えていけば、海外と同じ流れをたどると考えておくべきです。実際、日本でも2026年は、前日取引への移行や上限価格の引き下げにより、調整力の単価が下がってきています。

日本の蓄電所投資の考え方

海外の事例は、蓄電池への投資がもう遅いということを示しているわけではありません。むしろ、日本は海外より数年遅れて同じ道を歩いているため、先に答えが見えているとも言えます。そこから導かれる考え方は次のとおりです。

  • 運転開始まで早く進められる案件を選ぶこと
  • 調整力の単価が下がっても成り立つ収支で計画を組むこと
  • 調整力だけでなく、卸電力の値差による収益も前提に入れておくこと

これらを満たす案件であれば、日本の蓄電所は今も投資を検討する価値があると当社は考えています。

まとめ

  • テキサス、イギリス、オーストラリアでは、蓄電池の増加により調整力の単価が大きく下がった
  • 値崩れは、蓄電池の設備量が必要量の1.5倍から2倍に達したあたりで起き、単価は卸電力の値差の価値付近で下げ止まった
  • 日本でも申込みは約4,087万kWに達し、2026年は単価が下がり始めている
  • 早く動ける案件を選び、単価が下がっても成り立つ収支で組むことが重要

出典

  • Potomac Economics(ERCOT独立市場監視)State of the Market Report 2024
  • Modo Energy(英国の蓄電池収益指数)
  • AEMO Quarterly Energy Dynamics
  • 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 資料(2026年10月)

※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。

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