
この記事では、蓄電所になぜサイバーセキュリティの対策が求められるのか、その仕組みが分かります。あわせて、国の認証制度であるJC-STARの位置づけと、高圧・低圧それぞれで求められる時期の予定、機器を選ぶときの確かめ方を整理します。
蓄電所は遠隔で制御される設備
蓄電所の多くは無人で運転されます。現地のEMSやパワーコンディショナ(PCS)は通信回線でつながり、アグリゲーターから入札の結果に応じた指令を受けて、充電と放電を切り替えます。運転の状態も遠隔監視で常に送られています。
この仕組みがあるからこそ、蓄電所は指令から短い時間で出力を変え、調整力として働くことができます。一方で、外部とつながっているということは、外部からの不正な操作や情報の盗み取りの入口にもなりうるということです。
指令と対価の流れが通信に乗るため、入口になる機器にセキュリティの要件がかかる。
なぜ機器の認証が必要か
電力網は、使う量と発電する量を常に一致させないと周波数が乱れます。蓄電所はこの調整を担う設備で、系統に直接つながっています。もし多数の蓄電所が同時に不正に操作されれば、調整どころか系統を乱す側に回るおそれがあります。
1か所の蓄電所の規模は小さくても、同じ機器が全国に数多く設置されれば、共通の弱点が大きな影響につながります。そのため、個々の事業者の努力に任せるだけでなく、系統につながる機器そのものに一定の水準を求める考え方がとられています。
JC-STARとは
JC-STARは、IoT機器がセキュリティの要件に適合していることを示す国の認証制度です。インターネットなどにつながる機器について、あらかじめ決められた基準を満たしているかを確認し、適合した製品にラベルを付ける仕組みです。
蓄電所では、PCSなどの機器にJC-STAR★1の適合が求められる予定です。解説ブックで確認できる予定は次のとおりです。
| 区分 | 求められる時期(予定) |
|---|---|
| 高圧・特別高圧 | 2027年4月1日以降に受け付ける契約申込みから |
| 低圧 | 2027年10月以降に新たに連系する設備から |
| 国の補助金 | PCS・EMS・BMSのJC-STAR★1適合が要件 |
いずれも予定であり、細部は今後の決定によって変わる可能性があります。手続きの細部は一般送配電事業者ごとに異なる点にも注意が必要です。
投資家・事業者にとっての意味
機器選びの段階で確かめる
認証への対応は、運転を始めてから後付けできるものではありません。案件を検討するときは、採用するPCSやEMSのメーカーと型番を確かめ、対応品かどうかを確認します。高圧では、申込みの時期によって求められるかどうかが変わるため、申込みの予定時期もあわせて見ます。
運用の体制も見る
認証は機器の水準を示すものですが、それだけで安全が保たれるわけではありません。ソフトウェアの更新を誰が行うか、通信回線や監視の体制を誰が管理するかといった運用の分担も大切です。アグリゲーター契約や保守契約で、これらの役割が決まっているかを確かめます。
低圧蓄電所での考え方
出力49.9kW級の低圧蓄電所も、2026年4月に需給調整市場への参入が解禁され、アグリゲーターを通じて遠隔で制御されます。1か所の規模は小さくても、同じ型番の機器が多くの場所に設置されるのが低圧の特徴です。だからこそ、機器ごとのセキュリティの水準が全体の安全に影響します。
低圧では、2027年10月以降に新たに連系する設備のPCSなどにJC-STAR★1が求められる予定です。それより前に連系する区画であっても、運転期間中に機器を交換する際には、その時点の要件に合う機器を選ぶ必要が出てくる可能性があります。長く運転する設備だからこそ、対応品を選んでおくことが将来の手間を減らします。
なお、セキュリティへの備えは、機器の認証だけで完結するものではありません。現地の盤やコンテナの施錠、フェンスなど物理的な対策も、遠隔制御の設備を守るうえで欠かせない要素です。
まとめ
- 蓄電所は通信で遠隔制御され系統に直接つながるため、外部からの操作への備えが欠かせない
- JC-STARはIoT機器のセキュリティ要件への適合を示す国の認証制度
- PCSなどへのJC-STAR★1適合は、高圧は2027年4月以降の申込み、低圧は2027年10月以降の連系から求められる予定
- 機器の型番で対応を確かめ、更新や監視の運用分担も契約で確認する
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 解説ブック 2026」高圧編・低圧編
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。