タンソーマンGX 蓄電所の案件と用地

高圧(2MW級)

系統用蓄電池は何で稼ぐのか。3つの市場と2026年の変化を整理

系統用蓄電池は発電設備ではありません。それでは何によって収入を得ているのでしょうか。この記事では、3つの収入源の仕組みと、2026年に起きた制度と単価の変化を、公表されているデータをもとに整理します。

収入源は3つの市場

系統用蓄電池の主な収入源は、需給調整市場、卸電力市場、容量市場の3つです。

市場 売るもの
需給調整市場 周波数の乱れにすぐ応えられる「待機」(ΔkW)
卸電力市場 電気そのもの(安い時間に充電し、高い時間に放電する値差)
容量市場 将来、電気を出せる能力

高圧の蓄電所では、中心となるのは需給調整市場です。

3つの市場は、売るものも価格の決まり方も異なります。それぞれの仕組みを知っておくと、案件の収益計画がどの市場の、どの単価を前提にしているのかを読み取りやすくなります。以下、順に見ていきます。

需給調整市場で評価される理由

需給調整市場で取引されるのは電気そのものではなく、周波数が乱れたときにいつでも出力を変えられる状態で待機していることです。約定した時間帯は、実際に放電しなくても対価が支払われます。太陽光や風力が増えるほど、この調整の役割は大きくなります。

この市場では蓄電池が高く評価されています。2025年度の一次調整力では、蓄電池の平均落札単価が月ごとに8.82円から13.52円、火力は2.05円から3.39円でした。指令から1秒以内に出力を変えられ、燃料も要らないという特性が、単価の差に表れています。

調整力は不足している

2025年度の一次調整力は、北海道・中国・四国を除くエリアで、募集量に対して4割から9割以上が不足していました。なかでも東京エリアは不足が全国で最も大きく、平均単価も年間を通じて全国平均を上回りました。

需給調整市場の単価は、調整力が足りているか不足しているかで大きく変わります。不足しているエリアでは、速く正確に応えられる蓄電池の価値が高く評価されやすくなります。どのエリアの、どの商品に参加する前提の計画なのかを確かめることが、収入を見積もる出発点になります。

需給調整市場の収益の流れ
蓄電所出力を変えられる状態で待機
調整力(ΔkW)対価
アグリゲーター束ねて市場へ
調整力約定代金
送配電事業者需給調整市場で調達

約定した時間帯は、放電しなくても対価が支払われる。

2026年に起きた変化

2026年は、市場の仕組みと単価の両面で変化がありました。

  • 2026年3月14日から、取引が前日に決まる形に変わりました。
  • 一次調整力の上限価格は19.51円から15円に下がり、2026年9月1日からは10円になりました。

上限が10円というのは、最高でも10円という意味であり、その価格で売れることを示すものではありません。事業を考えるうえで大切なのは、単価がどこまで下がっても成り立つかを確かめることです。

単価によって売上はどう変わるか

出力2,000kWの蓄電所が、年間17,520コマ(30分単位)のうち9割で約定したと仮定した計算例です。

平均単価 年間売上(計算例)
10円 約3.15億円
7円 約2.21億円
5円 約1.58億円

この数字は「2,000kW×17,520コマ×単価×約定率90%」の計算例であり、見積りや収益の見込みではありません。単価が半分になれば売上もほぼ半分になるという関係が分かります。

なお、ここで示しているのは需給調整市場からの売上だけで、実際の事業では充電にかかる電力費や運営の費用などが差し引かれます。案件の資料で収益を見るときは、どの単価と約定率を置いているか、その前提が2026年9月以降の上限価格と整合しているかを確認することが欠かせません。

平均単価別の年間売上(計算例)
  • 10円約3.15億円
  • 7円約2.21億円
  • 5円約1.58億円

2,000kW×17,520コマ×単価×約定率90%の計算例。見積りではない。

卸電力市場と容量市場

卸電力市場の値差

太陽光の多い春や秋の昼は電気が安く、夕方は高くなる傾向があります。安い時間に充電し、高い時間に放電することで、その値差が収入になります。需給調整市場で約定しなかった時間帯にも収入を得る手段になります。

容量市場

容量市場は、4年後に電気を出せる能力を、年1回のオークションで確保する仕組みです。対象実需給年度2029年度のメインオークション(2026年1月公表)の約定価格は次のとおりです。

エリア 約定価格(円/kW)
東京・東北 15,111
九州 15,112
北海道 14,972
中部〜四国 12,388

次の2030年度分は2026年10月が応札期間で、12月頃に結果が公表される予定です。

このように、3つの市場はそれぞれ性格が異なります。需給調整市場は単価の変化が売上に直結し、卸電力市場は季節や時間帯の値差に左右され、容量市場は年1回のオークションで価格が決まります。ひとつの市場だけに頼る計画か、複数を組み合わせる計画かによっても、単価の変化への耐えやすさは変わります。

海外で起きたこと

英国、米国テキサス州、オーストラリアでは、蓄電池が増えて調整力の必要量を上回ったところで単価が下がりました。その後、収益の中心は卸電力の値差に移っています。日本でも同様の流れになると見られています。

一方で、単価が高い時期に運転を始めた設備ほど、初期の数年で多く回収できるという面もあります。調整力の担い手が火力から蓄電池へ移りつつあることも、各国に共通しています。市場の仕組みと単価の前提を理解し、運転開始の時期を見通せる案件かどうかを確かめることが重要です。

まとめ

  • 系統用蓄電池の収入源は、需給調整市場・卸電力市場・容量市場の3つで、高圧では需給調整市場が中心です。
  • 2025年度の一次調整力では、蓄電池の平均落札単価は月ごとに8.82〜13.52円で、火力(2.05〜3.39円)を大きく上回りました。
  • 2026年3月14日に前日取引へ移行し、一次調整力の上限価格は2026年9月1日から10円になりました。
  • 単価が下がった場合の売上を試算し、運転開始の時期が読める案件かを確認することが大切です。

出典

  • 電力需給調整力取引所(EPRX)「2025年度の取引実績について」(2026年6月)
  • 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月)
  • 電力広域的運営推進機関 容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度2029年度、2026年1月公表)
  • ※売上の数字は「2,000kW×17,520コマ×単価×約定率90%」の計算例で、見積りや収益の見込みではありません。

※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。

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