
この記事では、系統用蓄電池が収入を得る3つの市場を、売るもの、お金の出し手、金額の決まり方で比べて説明します。どの市場が収入の中心になるのか、低圧と高圧で何が違うのかも分かります。
蓄電所は発電しないのに収入がある
系統用蓄電池は、自分で発電もしなければ、電気を使う工場でもありません。電力網に直接つながり、電気が余るときに預かり、足りないときに返す働きをします。その働きに対して、一般送配電事業者や電力市場から対価が支払われます。
この働きは大きく3つに分けられます。周波数が乱れたときに瞬時に応じる「調整力」、安い時間にためて高い時間に出す「電力量」、将来電気を出せる能力としての「供給力」です。それぞれ取引する市場が違います。
需給調整市場
- 売るもの:調整力(ΔkW)
- 出し手:一般送配電事業者
- 前日に30分ごとに約定
- 収入の中心
卸電力市場
- 売るもの:電力量(kWh)
- 相手:市場の買い手
- 昼夜の値差を取る
- 収入の補い
容量市場
- 売るもの:供給力(kW)
- 4年後分を年1回入札
- 落札で1年分の契約金
- 低圧単独は対象外
需給調整市場 待機に対価が出る
需給調整市場は、周波数を保つための調整力を、一般送配電事業者があらかじめ確保しておく市場です。取引されるのは電力量ではなく「いざというとき出力を出せる状態」(ΔkW)で、約定した時間帯は、実際に放電しなくても待機の対価が支払われます。
金額は、30分ごとの単価×出力×約定したコマ数で決まります。応動の速さで一次から三次②まで5つの商品があり、蓄電池は最も速い一次調整力で強みを発揮します。高圧でも低圧でも、収入の中心はこの市場です。
卸電力市場 昼夜の値差を取る
日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格は、太陽光が多い春や秋の昼に下がり、夕方に上がる傾向があります。安い時間に充電し、高い時間に放電すれば、その値差が収入になります。
ただし、充放電では電気の一部が失われ、充電には電力費がかかります。値差が十分に開く日でなければ利益は出ません。需給調整市場で約定しなかった時間を補う、副次的な収入と位置づけるのが適切です。
容量市場 4年先の供給力
容量市場は、4年後に必要な供給力(kW)を確保するための市場で、電力広域的運営推進機関が運営します。年1回のオークションで落札すると、1年分の容量確保契約金が支払われます。蓄電池は、継続して放電できる時間に応じて評価されます。
ただし、容量市場には最低1,000kWの参加要件があるため、出力49.9kWの低圧蓄電所が単独で参加することはできません。容量市場は主に高圧以上の蓄電所にかかわる収入源です。
お金の流れを一つにまとめる
3つの市場への入札、充放電の計画、計量と精算は、アグリゲーターに委託するのが一般的です。オーナーが市場ごとに取引する必要はなく、アグリゲーターが日々の組み合わせを最適化し、手数料を差し引いた収益をオーナーに支払います。
手数料の計算基礎や充電費の負担区分は会社ごとに違う。
試算を見るときの視点
収支の試算を受け取ったら、3つの市場の収入がそれぞれどれだけ見込まれているかを分けて確認することをおすすめします。容量市場の収入が低圧蓄電所の試算に含まれていれば、それは前提の誤りです。卸電力市場の値差を収入の柱のように見込んでいる試算も、慎重に読む必要があります。需給調整市場の収入については、単価と約定率の前提、上限価格の改定を反映しているかを確かめます。2026年9月1日の実需給分からは、一次調整力などの上限が10円、二次調整力②と三次調整力①が7.21円となっています。収入源ごとに前提が開示されている試算ほど、比べやすく信頼しやすいといえます。
3つの市場の仕組みを知っておくと、提案を受けたときに、どの収入が確かでどの収入が変わりやすいのかを自分で見分けられるようになります。
まとめ
- 蓄電所の収入源は、需給調整市場(ΔkW)、卸電力市場(kWh)、容量市場(kW)の3つです。
- 収入の中心は需給調整市場の待機の対価で、卸電力市場の値差は副次的です。
- 容量市場は最低1,000kWの要件があり、低圧蓄電所は単独では参加できません。
- 3市場の組み合わせはアグリゲーターが最適化し、手数料を引いて分配します。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。