
蓄電所の資料に書かれた「利回り」は、どの費用を差し引いた後の数字かで意味が大きく変わります。数字の大小を比べる前に、その数字が売上の段階か、費用・劣化・税を引いた後の段階かを確かめます。
同じ「利回り」という言葉でも、売上を投資額で割っただけの表面の数字と、手元に残る金額に近い数字とでは、比べる対象になりません。本記事では、売上から手取りに至るまでの段階を分解し、資料の数字がどの段階に当たるかを見分ける方法を説明します。計算式の検算の方法は利回り表示を検算する記事で扱っているため、ここでは段階の見分け方に絞ります。
- 売上出力×コマ数×単価×約定率
- 委託後アグリゲーターの手数料を差し引く
- 運転費用後充電の電力費、発電側課金、保守・監視、保険、固定資産税、土地の賃料
- 劣化・更新後容量の減少、PCSの交換、撤去の費用
- 税引後法人税などを差し引いた手取り
上の段ほど数字は大きく、下の段ほど手取りに近くなります。
表面の利回りとは、どの段階の数字ですか
表面の利回りは、多くの場合、売上を投資額で割った最上段の数字です。
解説ブック(低圧編)は、年間売上の計算の例として「49.9kW×17,520コマ×単価×約定率」を示し、見積りや収益の見込みではないと断っています。この式で出るのは売上であり、手数料や運転費用は含まれていません。資料の利回りが売上から直接計算されていれば、それは表面の数字です。
手数料と運転費用は、どの程度の項目がありますか
アグリゲーターの手数料に加え、充電の電力費から撤去までの費用が差し引かれます。
解説ブックは、アグリゲーターの手数料は収益の10%前後が多いとしつつ、計算の基礎が売上か運用益かで手取りが変わると指摘しています。運転費用としては、充放電の効率(往復で85〜90%程度)の分だけ電気を買い足す充電の電力費、発電側課金、保守・監視、保険、固定資産税(償却資産)、借地の場合の土地の賃料が挙げられています。資料の費用欄にこれらがすべて入っているかを確かめます。
劣化は、利回りにどう効きますか
電池の容量が年々減るため、初年度の数字を毎年同じと置くと、後半の年の収入を多く見積もることになります。
試算に劣化率が入っているか、PCSの交換時期と費用が見込まれているか、運用終了時の撤去費用が誰の負担かを確認します。劣化率の根拠としては、メーカーの容量保証(何年で何%)と照らし合わせます。
税は、どの段階で考えればよいですか
税は最後の段階で差し引かれ、持ち方(個人か法人か)や他の事業との関係で影響が変わります。
税引後の数字は、所有者ごとの条件に左右されるため、売り手の資料に一律に書くことは難しい性質のものです。資料に税引後の利回りがある場合は、どのような前提で計算したかを確認します。低圧の税の基本は低圧蓄電所の税金の記事で整理しています。個別の扱いは顧問税理士と確認します。
売り手には、どのように質問すればよいですか
数字の段階を特定するための質問を、書面で送ります。
- この利回りは、売上・手数料控除後・費用控除後・税引後のどれを投資額で割ったものか
- 手数料の計算の基礎は売上か運用益か
- 費用欄に含まれていない項目は何か
- 劣化率と、PCSの交換・撤去の費用は見込まれているか
- 単価を下げた場合の試算はあるか
質問の目的は売り手の数字を否定することではなく、比べられる形にそろえることです。前提が開示されれば、自分で単価や費用を置き換えて試算し直すこともできます。
回答を受け取ったら、案件ごとに同じ段階の数字にそろえてから比べます。
利回り以外に、あわせて確かめる指標はありますか
累計の収益、IRR、投資回収年数、単価の下振れへの強さをあわせて確かめます。
解説ブックは、見るべき指標としてこの4つを挙げています。特にIRRは15年で見るか20年で見るかをそろえる必要があり、単価については2割、3割下げても回収できるかの確認を勧めています。
まとめ
- 資料の利回りが、売上から手取りまでのどの段階の数字かを最初に確かめます
- 手数料の計算の基礎、運転費用、劣化と更新が試算に入っているかを確認します
- 案件同士は、同じ段階の数字にそろえてから比べます
高圧・特別高圧の案件は、蓄電所の案件と用地でご紹介しています。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(高圧編)。同書が出典とする東京電力パワーグリッド 発電量調整供給契約申込みの手続き・約款改定のお知らせ(2026年)、資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ資料
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(低圧編)。同書が出典とする電力需給調整力取引所(EPRX)「2025年度の取引実績について」(2026年6月)、東京電力パワーグリッド 低圧の系統連系技術協議依頼票の改定(2026年5月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。