
売り手の事業計画書は、結論の数字よりも前提条件の書き方で信頼度が決まります。単価、約定率、劣化率、稼働の条件、費用の5つが書面で開示され、複数の条件で試算されているかを最初に確かめることが大切です。
事業計画書のどこから読み始めるべきですか?
最初に読むべきなのは、収支表ではなく前提条件の一覧です。
高圧2MW・8MWh級の蓄電所の計画書には、年間の売上や累計の収益が大きく示されることがあります。しかし、その数字は前提の置き方で大きく変わります。解説ブックでは、収支の試算について「単価、約定率、劣化率、費用の前提がすべて開示されているか。複数の単価で試算されているか」を確かめる項目に挙げています。前提が一覧になっていない計画書は、それだけで追加の資料を求める理由になります。
- 単価いつ・どの商品・どのエリアの数字か。上限価格の改定後か
- 約定率入札したコマのうち落札される割合。複数の水準で試算されているか
- 劣化率年ごとの容量の減り方と、メーカーの容量保証との関係
- 稼働の条件充電のための待機、点検や故障で止まる時間の扱い
- 費用手数料、保険、固定資産税、保守、地代、撤去
上から順に、収支への影響が大きくなりやすい項目です。
単価の前提は何を確かめればよいですか?
単価は「いつの」「どの商品の」「どのエリアの」数字かを特定できるかを確かめます。
需給調整市場は2026年3月14日に前日取引へ移り、一次調整力などの上限価格は19.51円から15.00円、さらに9月1日から10.00円(ΔkW・30分あたり)に引き下げられました。二次②・三次①は7.21円です。改定前の実績単価をそのまま使った計画書は、現在の制度の下では成り立たない前提を含んでいる可能性があります。
- 単価の出典(取引実績の年度、エリア、商品)が明記されているか
- 上限価格の改定後の水準で組み直されているか
- 上限価格そのものを平均単価として置いていないか
上限10円は「最高でも10円」という意味で、その価格で約定するわけではありません。何円まで下がっても成り立つかを示す試算があるかどうかが、計画書の誠実さを測る目安になります。
約定率はどのように置かれているべきですか?
約定率は一つの値に固定せず、幅を持たせた試算で示されていることが望まれます。
約定率は、入札したコマのうち実際に落札されたコマの割合です。解説ブックの計算例では、同じ単価でも約定率90%と70%で年間の売上が大きく変わることを示しています。高い約定率だけで組まれた計画書は、下振れしたときの姿が分かりません。考え方は約定率70%と90%の差でも解説しています。
劣化と稼働の前提はどこに表れますか?
劣化と稼働の前提は、年ごとの売上の推移と、機器の保証条件に表れます。
電池は充放電で容量が減ります。計画書の売上が15年間横ばいであれば、劣化を織り込んでいない可能性があります。劣化率の数字があれば、メーカーの容量保証(何年で何%)と整合しているかを確かめます。稼働については、充電のための待機時間や、点検・故障で止まる時間をどう扱っているかが論点です。
費用の前提で漏れやすいものは何ですか?
漏れやすいのは、アグリゲーター手数料の計算基礎、固定資産税の逓減、撤去費用です。
| 費用 | 確かめる点 |
|---|---|
| アグリゲーター手数料 | 収益の10%前後が多い。売上か運用益か、計算の基礎 |
| 保険 | 火災、機器故障、事業中断、賠償の範囲 |
| 固定資産税(償却資産) | 取得価額の約1.4%から逓減する前提か |
| 劣化と更新 | PCSの交換時期と費用が入っているか |
| 地代・保守 | 契約書の金額と一致しているか |
計画書を確かめる手順はどう進めればよいですか?
前提の一覧化、出典の照合、条件を変えた再計算の順に進めると効率的です。
- 計画書から前提条件を抜き出し、上のチェック表に当てはめる
- 空欄になった項目を売り手に書面で照会する
- 単価と約定率を下げた条件で、売上を自分で計算し直す
- 費用の各項目を、見積書や契約書の写しと突き合わせる
計算は「出力2,000kW×年間17,520コマ×単価×約定率」が基本の形です。実際には商品の組み合わせや卸電力市場・容量市場の収入で変わりますが、この形で概算を置くと、計画書の数字がどの前提に依存しているかが分かります。デューデリジェンス全体の項目はデューデリジェンスの12項目にまとめています。
まとめ
- 計画書は収支表より先に、単価・約定率・劣化率・稼働・費用の前提一覧から読みます。
- 単価は出典と上限価格改定後の水準かを確かめ、下がった条件でも試算します。
- 空欄の前提は書面で照会し、見積書・契約書と突き合わせて確かめます。
高圧・特別高圧の案件は、蓄電所の案件と用地でご紹介しています。
出典
- タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック2026 高圧編」
- 電力需給調整力取引所(EPRX)取引規程・上限価格の改定に関する公表資料
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。