
この記事では、系統用蓄電池の申込みが急増しているという話を聞いたときに、「もう参入しても遅い」と結論づけるのがなぜ早計なのかが分かります。申込みの量と連系済みの量の差を見たうえで、案件の価値を数ではなく進捗で見る考え方を整理します。
申込みは急増、運転開始はまだ一部
高圧以上の系統用蓄電池について、接続の契約申込みは全国で約4,087万kWに達しました。これに対して、すでに系統につながったのは約128万kWです(2026年6月末、資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 2026年10月)。
2026年6月末、高圧以上。次世代電力系統WG(2026年10月)。申込みの数ではなく、手続きの進み具合が価値の分かれ目。
数字を並べると、連系済みは申込みのごく一部にとどまっていることが分かります。申込みの量だけを見て「もう枠が埋まった」と考えるのは、この差を見落としています。
申込みの多くは止まると見られている
申込みをしたからといって、すべてが運転開始までたどり着くわけではありません。申込みの多くは、系統の空きや工事費、資金のめどが立たずに止まると見られています。
系統につなぐまでには、事前相談、接続検討、契約申込みと保証金の入金、連系承諾と土地の権利の提出、工事費負担金契約といった段階があります。工事費負担金は数千万円から億単位になることがあり、資金のめどが立たない案件はこの段階で止まります。
2026年のルール変更で何が変わったか
2026年は、接続の手続きが厳しくなった年でした。2026年4月以降の申込みは、工事費負担金の見込額の10%を保証金として入金する必要があります。東京電力パワーグリッドでは、2026年10月1日以降に受け付けた申込みについて、連系承諾から原則2か月以内に土地の使用権原を示す書類の提出が求められます。
これにより、資金や土地の裏付けがない申込みは続けにくくなりました。参入の壁は高くなりましたが、裏を返せば、これらの手続きを終えた案件の価値ははっきり上がっています。
数ではなく進捗で見る
案件を検討するときに大切なのは、全体の申込みが多いか少ないかではなく、その案件が手続きのどこまで進んでいるかです。たとえば次のような点を確かめます。
- 接続検討の回答を得ているか。工事費負担金の金額と工期が分かっているか
- 契約申込みを済ませ、保証金の入金と受付完了の証憑があるか
- 連系承諾を得て、土地の権利を期限内に提出できる状態か
- 土地の売買・賃貸借の契約、地目と現況、許認可の見通しが整っているか
「保証金入金済み・受付完了」の証憑があるかどうかは、開発権の価値の分かれ目といえます。申込みの数が多い市場では、こうした進捗の裏付けがある案件ほど希少になります。
低圧での見方
低圧では、現在、接続検討も保証金もなく、契約申込みと同時に容量が確保されます。ただし、この扱いと分割設置の規制は国の審議会で見直しの議論が続いており、ルールが変わる前に連系の承諾を得た案件かどうかが、ここでも進捗の目安になります。低圧の需給調整市場への参入は2026年4月に解禁されています。
土地を提供する地主にとっての意味
連系承諾から原則2か月以内に土地の権利を示す書類を出す必要があるということは、用地の契約を早い段階で固めておく必要があるということです。地主の方が、登記の内容や地目、現況を早めに確かめておくと、手続きが滞らずに進みます。
手続きを終えた案件が希少になるほど、それを支える土地の役割も大きくなります。申込みの数が多いという話題に惑わされず、手続きを着実に進められる案件と土地の組み合わせが価値を持つ、と考えるのが実態に近い見方です。
投資家の方は、案件の説明を受けるときに、全体の市場の話よりも、その案件がどの段階まで進み、次に何が残っているかを具体的に尋ねると、価値の判断がしやすくなります。残っている手続きと、その期限を一覧にしてもらうのも有効です。
申込みの多さは、それだけ多くの事業者が蓄電所の役割に期待していることの表れでもあります。期待の大きさと、実際に運転を始められる案件の少なさの差こそが、進んだ案件の価値を支えています。
まとめ
- 申込みは約4,087万kWに達したが、連系済みは約128万kW(2026年6月末)
- 申込みの多くは系統の空き・工事費・資金のめどが立たずに止まると見られている
- 保証金や土地の権利の提出など2026年のルール変更で、手続きを終えた案件の希少性が上がった
- 市場全体の申込み数ではなく、個々の案件の手続きの進捗で価値を見る
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出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 解説ブック 2026」高圧編・低圧編
- 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 資料(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。