タンソーマンGX 蓄電所の案件と用地

低圧(49.9kW)

よくある誤解2 「上限10円で売れる」と考えた収支の試算が危うい理由

この記事では、需給調整市場の「上限10円」という数字が何を意味し、何を意味しないのかが分かります。上限価格を前提にした収支の試算がなぜ危ういのか、そして試算を見るときにどのような単価で確かめればよいかを整理します。

上限価格とは何か

需給調整市場では、一般送配電事業者が調整力を前日に調達します。蓄電所は、出力を出せる状態で待機することに対して対価を得ます。この待機の対価をΔkWといい、30分ごとの単価に、出力と約定したコマ数を掛けて収入が決まります。

このΔkWには上限価格が設けられています。2026年9月1日の実需給分から、一次調整力などは10円、二次調整力②と三次調整力①は7.21円が上限とされています。

ここで大切なのは、上限価格は「これより高くは約定しない」という天井であり、「この価格で約定する」という約束ではないということです。

なぜ「10円で売れる」と誤解されるのか

上限価格は分かりやすい数字なので、収支の説明で目に留まりやすくなります。上限が下がったという話題とあわせて「10円」という数字が強く印象に残り、それがそのまま売れる価格のように受け取られることがあります。

しかし実際の約定価格は、入札の状況によって決まります。調整力を提供する設備が増えれば、競争によって約定価格は下がりえます。高圧編の解説でも、海外の先行市場で、蓄電池の設備量が調整力の必要量を超えたところで単価が下がった例が紹介されています。

上限と、試算で確かめたい単価の水準
  • 上限(一次等)10円
  • 確認する単価A7円
  • 確認する単価B5円
  • 確認する単価C3円

7円・5円・3円は予測ではなく、感度を見るための例。上限は2026年9月1日実需給分から。

上限を前提にした試算の危うさ

収入は単価に比例します。上限の10円を前提に組んだ試算は、単価が7円になれば収入が3割減り、5円になれば半分になります。費用は単価に関係なくかかるため、利益はそれ以上の割合で減ります。

さらに、試算には約定率も関わります。入札したすべてのコマが約定するとは限らず、約定しなかった時間は待機の対価が得られません。上限価格と高い約定率を同時に前提にした試算は、二重に楽観的になっている可能性があります。

試算を見るときの確かめ方

単価を下げて確かめる

大切なのは、上限に近い単価が続く前提ではなく、何円まで下がっても成り立つかという見方です。上の図のように、上限より低い複数の単価で収支を計算し、どこで赤字になるかを確かめます。

前提がすべて開示されているか

単価のほか、約定率、劣化率、充電の電力費、保守や保険などの費用の前提が開示されているかを確認します。前提が示されていない試算は、比較も検証もできません。

どの商品に入札する前提か

一次調整力と二次調整力②・三次調整力①では上限が異なります。試算がどの商品を前提にしているかで、使える上限が変わる点も見ておきます。

低圧蓄電所の試算での注意

出力49.9kW級の低圧蓄電所も、2026年4月に需給調整市場への参入が解禁され、一次調整力などの待機の対価が収益の中心になりました。低圧の区画は1か所あたりの出力が小さいため、アグリゲーターが複数の区画を束ねて入札します。束ねがそのエリアで成立しているか、成立の見込みがあるかも、約定率に影響します。

JEPXスポットの値差は副次的な収入であり、調整力の単価が下がった局面で収益を補う役割を持ちます。試算の中で、収入のうち調整力と値差がそれぞれどれだけを占めているか、値差を過大に見込んでいないかも確かめておきたい点です。

上限の数字は制度の改正で変わることもあります。実際に、上限は2026年9月の実需給分から引き下げられました。将来も同じ上限が続く前提を置かないことも、試算を見るうえでの基本です。

試算を受け取ったら、単価を変えたときに年間の収入と利益がどう変わるかの表を求めるのも一つの方法です。単価ごとの結果が並んでいれば、どの水準までなら許容できるかを、自分の判断基準で確かめられます。

単価だけでなく、約定率や劣化率も同じように変えて確かめると、試算がどの前提に強く依存しているかが分かります。前提の一つが崩れただけで成り立たない試算は、慎重に扱う必要があります。

まとめ

  • 上限10円は「最高でも10円」という意味で、その価格で約定する約束ではない
  • 2026年9月1日実需給分から、一次等は10円、二次②・三次①は7.21円が上限
  • 上限と高い約定率を同時に置いた試算は二重に楽観的になりうる
  • 複数の低い単価で計算し、何円まで下がっても成り立つかで判断する

出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。

出典

  • 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 解説ブック 2026」高圧編・低圧編

※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。

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