
この記事では、需給調整市場の一次調整力にある「オフライン枠」が何か、なぜ低圧の蓄電池がここに入るのかを説明します。一次調整力の役割、オンライン枠との違い、投資や用地提供を考えるうえでの意味が分かります。
一次調整力の役割
電気は、使う量と作る量が常に一致している必要があります。ずれると周波数が変動し、大きくずれると停電につながります。一次調整力は、この周波数の変動に対して最も素早く応じる調整力です。送配電事業者が需給調整市場で調達し、応じられる状態で待機していることに対価が払われます。
蓄電池は、指令から短い時間で充電にも放電にも切り替えられるため、一次調整力に向いた設備です。低圧蓄電所の収入の中心も、この一次調整力の待機の対価です。
オンライン枠とオフライン枠
調整力を提供する設備は、一般に送配電事業者の指令を受けて動きます。そのための専用線を引いてオンラインでつなぐのが基本の形です。一方、一次調整力は周波数の変化を設備側で検出して自ら応答する性質があるため、専用線でのオンライン接続を必要としない参加の枠が設けられています。これがオフライン枠です。
オンライン枠
- 専用線でオンライン接続する
- 専用線の整備が前提になる
- 大きな設備に向く
オフライン枠
- 専用線でのオンライン接続が不要
- 低圧の蓄電池などが入る
- アグリゲーターが束ねて参加
- 低圧蓄電所の主な役割
低圧蓄電所とオフライン枠
需給調整市場は2021年に始まりましたが、低圧の受電点で計測する設備の参加は、2026年度から全商品で認められました。一次調整力には、低圧の蓄電池などを束ねて参加するオフライン枠があり、ここに入るのが低圧蓄電所の主な役割です。49.9kWの設備ごとに専用線を引くのは現実的ではないため、オフライン枠があることで小さな設備でも参加しやすくなっています。
ただし、最低入札量は1MWです。49.9kWの蓄電池は、アグリゲーターが同じエリアで束ねて初めて入札できます。オフライン枠に入れるかどうかは、そのエリアで束ねが成立する見込みとあわせて確かめる必要があります。
単価と収入の考え方
需給調整市場は2026年3月に前日取引へ移りました。一次調整力などのΔkWの上限は、2026年9月1日の実需給から10円です。収入は出力×単価×約定したコマ数で決まります。待機の対価が中心で、JEPXのスポット市場で充電と放電の値差を得る収入は副次的です。単価は上限以下で市場により決まるため、単価を下げた場合の試算も確かめておくと判断がしやすくなります。
検討の際に確かめること
- アグリゲーターがオフライン枠での参加に対応しているか
- そのエリアで1MWの束ねが成立しているか、成立の見込みがあるか
- 設備の仕様が一次調整力の要件に合っているか
- 収支の前提に使った単価と約定率
オフライン枠に関わる人の役割
オフライン枠での参加には、三者が関わります。設備を持つオーナー、設備を束ねて入札と制御を行うアグリゲーター、調整力を調達する送配電事業者です。オーナーは設備を良い状態に保ち、アグリゲーターは複数の蓄電池の出力を合わせて1MW以上にし、前日取引で入札します。約定したコマでは、蓄電池が周波数の変化に応じて充電や放電を行い、その実績が計量されて精算されます。
オーナーが市場の画面を見たり、自分で入札したりする必要はありません。その代わり、アグリゲーターとの契約内容が収入を大きく左右します。手数料や収入の配分方法、契約期間、解約の条件、所有者が変わった場合の扱いなどを、購入前に書面で確かめておくことが大切です。
高圧との違い
高圧2MW級の蓄電所は、一次から三次までの調整力、卸電力市場、容量市場に参加できます。これに対して低圧蓄電所は、一次調整力が中心です。参加できる市場が限られる分、一次調整力の単価の動きが収入に与える影響は大きくなります。オフライン枠の仕組みを理解したうえで、単価の幅を持たせた収支を見ておくと、判断の材料がそろいます。
オフライン枠は低圧蓄電所が市場に参加するための入口であり、その仕組みを知ることが案件を見極める第一歩になります。
仕組みを理解したうえで、アグリゲーターの説明を聞くと、確認すべき点が見えやすくなります。
まとめ
- 一次調整力は周波数の変動に最も素早く応じる調整力で、待機していることに対価が払われます。
- オフライン枠は、専用線でのオンライン接続を必要としない一次調整力の参加の枠です。
- 低圧の蓄電池はアグリゲーターが束ね、主にこの枠で参加します。
- エリアでの束ねの見込みと、単価を下げた試算をあわせて確かめます。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(低圧編)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。