
この記事では、蓄電池の「充放電効率」の意味と、それが蓄電所の費用にどう影響するかを説明します。効率の数字の読み方と、収支試算で確かめたい点が分かります。
充電した電気は全部は戻らない
蓄電池に電気をためて取り出すと、その途中で一部が失われます。電池の内部で熱になる分、直流と交流を変換するパワーコンディショナ(PCS)で失われる分などがあるためです。充電した電気に対して、放電で取り出せる電気の割合を充放電効率と呼びます。充電から放電までをひと回りで見るため、「往復効率」とも言います。
系統用蓄電池の解説ブックでは、往復で85〜90%程度としています。100の電気を充電すると、放電で戻ってくるのは85〜90程度で、残りの10〜15程度は失われるということです。
往復効率85〜90%程度の場合のイメージ。設備と運用条件で変わる。
失われた分は費用として買い足す
失われた電気は、どこかで補わなければなりません。蓄電所は自前で発電しないため、充電に使う電気は系統から買うことになります。効率が低いほど、同じ量を放電するために多くの電気を買う必要があります。
解説ブックでは、差し引く費用の一つとして「充電の電力費・損失」を挙げ、充放電の効率の分だけ電気を買い足すこと、託送料金や再エネ賦課金がかかる場合があることを説明しています。効率の数字は、そのまま電力費の大きさに効いてきます。
| 項目 | 効率との関係 |
|---|---|
| 充電の電力費 | 効率が低いほど買う量が増える |
| 託送料金・賦課金 | かかる場合は買う量に比例して増える |
| 卸電力市場の値差 | 失われる分を上回る値差がないと利益にならない |
需給調整市場と卸電力市場で効き方が違う
収入の中心である需給調整市場では、約定した時間に待機していること自体に対価が支払われます。実際に放電する量は周波数の変化に応じて決まるため、効率の影響は充電の電力費という形で間接的に表れます。
一方、卸電力市場(JEPX)で昼夜の値差を取る運用では、効率の影響がより直接的です。安い時間に買った電気の一部が失われるため、放電時の価格が充電時の価格を少し上回るだけでは利益が出ません。失われる分を上回る値差があって初めて、収入になります。
効率は時間とともに変わりうる
充放電効率は、設備の構成や運転の条件で変わります。外気温が高い時期には冷却に電気を使い、待機中も監視や空調の電気がかかります。こうした補機の消費を含めて見るかどうかで、数字の見え方が変わります。また、電池は充放電を繰り返すことで劣化し、ためられる量が減っていきます。
そのため、カタログの効率の数字だけを見るのではなく、どの範囲を含めた効率なのかを確かめることが大切です。
試算と契約で確かめたいこと
- 収支試算で置いている往復効率の数字と、その範囲(補機の消費を含むか)
- 充電の電力費を誰が負担するか(オーナーかアグリゲーターか)
- 託送料金や再エネ賦課金を費用に含めているか
- メーカーが効率について何らかの保証をしているか
アグリゲーターとの契約では、充電費の負担区分が会社ごとに違います。効率が同じでも、負担の決め方でオーナーの手取りは変わります。
効率の差は長い期間で積み上がる
往復効率の数%の違いは、1回の充放電では小さく見えます。しかし、蓄電所は長い期間にわたって毎日のように充放電を繰り返します。わずかな差でも、運転期間全体で積み上がると、充電の電力費に無視できない差となって表れます。
複数の機器や案件を比べるときは、価格だけでなく効率の前提をそろえて比べることが大切です。同じ投資額でも、効率の前提が違えば、運転期間を通じた費用の見込みが変わるためです。
オーナーが日々気にする必要はあるか
充放電のタイミングを決めるのはアグリゲーターであり、オーナーが毎日効率を気にして操作する必要はありません。ただし、効率の低下は設備の不調のサインであることもあります。月ごとの運用報告で、充電した量と放電した量の比が大きく変わっていないかを見ておくと、点検や保守の相談をする手がかりになります。遠隔監視の仕組みと、異常があったときの連絡の流れも、契約時に確かめておくとよいでしょう。
まとめ
- 充放電効率は、充電した電気のうち放電で戻る割合で、往復で85〜90%程度が目安です。
- 失われた分は系統から買い足すため、充電の電力費に効きます。
- 卸電力市場の値差運用では、失われる分を上回る値差が必要です。
- 試算の効率の範囲と、充電費の負担区分を契約前に確かめます。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。