
この記事では、需給調整市場の収入を「コマ」という単位で考える方法を説明します。1年が17,520コマになる理由、売上の計算式の骨格、そして試算の数字を読むときの注意点が分かります。
需給調整市場は30分を1コマとして取引する
需給調整市場では、1日を30分ごとに区切って取引します。この30分の区切りを「コマ」と呼びます。1日は24時間なので、30分のコマが48個あります。これが365日続くと、1年で17,520コマになります。
蓄電所の収入は、この17,520コマの一つひとつで「待機の対価」を受け取れるかどうかの積み重ねです。太陽光発電のように「1年でどれだけ発電したか」で考えるのではなく、「どのコマで、いくらの単価で、どれだけの出力を待機させたか」で考えます。
- 30分=1コマ取引の最小単位
- 1日48コマ24時間×2
- 1年17,520コマ48コマ×365日
- ×出力×単価×約定率待機の対価が積み上がる
- 年間の売上ここから費用を差し引く
売上の式を分解する
需給調整市場の売上は、次の式で表せます。
売上=出力(kW)×単価(円/ΔkW・30分)×約定したコマ数
約定したコマ数は、入札したコマ数に約定率を掛けたものです。全コマに入札すると仮定すれば、約定したコマ数は17,520×約定率になります。高圧編の解説ブックでは、出力2,000kWの蓄電所を例に、2,000kW×17,520コマ×単価×約定率という形で計算例を示しています。
| 要素 | 何で決まるか | 動きやすさ |
|---|---|---|
| 出力 | 設備の規模 | 運転後はほぼ一定 |
| 単価 | 市場の需給、上限価格 | 時期とエリアで動く |
| コマ数 | 入札するコマと約定率 | 運用と競争で動く |
全コマに入札できるわけではない
計算例では分かりやすさのために「全コマに入札」と置いていますが、実際の運用ではそうなりません。蓄電池は放電した分を充電で取り戻す必要があり、充電の時間帯は待機に充てられないことがあります。また、商品の組み合わせや、卸電力市場での運用に回す時間帯もあります。
そのため、17,520コマという数字は「上限」として理解するのが適切です。実際に収入を生むコマ数は、入札するコマの選び方と約定率によって、それより少なくなります。
単価は「上限」と「平均」を分けて見る
単価には上限価格が設けられています。2026年9月1日の実需給分からは、一次調整力などが10円、二次調整力②と三次調整力①が7.21円の上限となりました。上限は「最高でもこの価格」という意味で、その価格で約定することを約束するものではありません。
試算を見るときは、置かれている単価が上限なのか、それより低い平均的な水準なのかを確認します。解説ブックでも、収支は上限より低い単価で組むのが基本だとしています。単価が何円まで下がっても成り立つかを見ると、案件の強さが分かります。
コマ単位で考えると見えること
コマ単位で考える利点は、収入の変動要因を分けて捉えられることです。売上が想定を下回ったとき、単価が下がったのか、約定コマが減ったのか、入札できるコマが少なかったのかを切り分けられます。アグリゲーターから運用報告を受け取る際も、この3つに分けて確認すると、何が起きているかを把握しやすくなります。
- 単価の変化:市場全体の動き、上限価格の改定
- 約定コマの変化:競争の度合い、入札価格の付け方
- 入札コマの変化:充電計画、設備の停止や点検
17,520コマの考え方を費用側にも当てはめる
コマ単位の考え方は、収入だけでなく費用を見るときにも役立ちます。たとえば、アグリゲーターの手数料は収益の10%前後が多いとされますが、その計算の基礎が売上なのか運用益なのかで、オーナーの手取りは変わります。また、充電のために電気を買うコマが多いほど、充電の電力費は増えます。
年間の数字だけを並べた試算では、こうした内訳が見えにくくなります。どのコマで収入が生まれ、どのコマで費用がかかるのかを意識して試算を読むと、前提の置き方の違いに気づきやすくなります。月ごとや季節ごとの内訳を示してもらえるかどうかも、確認しておきたい点です。
まとめ
- 需給調整市場は30分を1コマとし、1日48コマ、1年で17,520コマです。
- 売上は出力×単価×約定したコマ数で決まります。
- 17,520コマは上限で、充電や運用の都合で実際に収入を生むコマはそれより少なくなります。
- 試算の単価が上限か平均的な水準かを分けて確認します。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。