
この記事では、電力網に欠かせない「調整力」とは何か、再生可能エネルギーが増えるほど調整力が必要になるのはなぜか、そして蓄電池がその担い手として注目される理由を解説します。
電力網は常に需要と発電を一致させている
電気はためておくことが難しく、電力網では使う量と発電する量を常に一致させる必要があります。両者がずれると、周波数が乱れます。周波数が大きく乱れると、機器の動作に影響が出たり、最悪の場合は停電につながったりします。
そこで電力網には、ずれが生じたときにすぐ出力を増やしたり減らしたりして、周波数を元に戻す仕組みが用意されています。この「すぐに出力を調整できる能力」が調整力です。
再エネが増えると揺れが大きくなる
太陽光は天気で、風力は風で出力が変わります。雲がかかれば太陽光の出力は下がり、風が弱まれば風力の出力も下がります。再生可能エネルギーの割合が増えるほど、こうした出力の揺れが電力網全体に与える影響は大きくなります。
- 再エネの増加太陽光・風力の割合が高まる
- 出力の揺れ天気や風で発電量が変わる
- 周波数の乱れ需要と発電がずれる
- 調整力が必要すぐに出力を増減できる設備を確保
- 蓄電池が応動指令から1秒以内に出力を変えられる
担い手は火力から蓄電池へ
これまで調整力の中心は火力発電でした。しかし、脱炭素の流れの中で火力は減っていきます。一方で、再生可能エネルギーが増えるほど、揺れを打ち消す調整力はより多く必要になります。この需要と供給のすき間を埋める担い手として、蓄電池が注目されています。
蓄電池は、指令から1秒以内に出力を変えられ、燃料も要りません。充電と放電の両方ができるため、電気が余れば吸収し、足りなければ供給するという両方向の調整が可能です。
速さが評価される市場
調整力は、一般送配電事業者が需給調整市場であらかじめ確保しています。市場には応動の速さによって一次から三次②まで五つの商品があり、最も速いのが一次調整力です。一次調整力は、周波数の変化を設備が自ら検知し、10秒以内に応動します。
需給調整市場では、速く正確に応える設備ほど高く評価される性格があります。2025年度の一次調整力では、蓄電池の落札単価が火力を上回っていました。応答の速さと正確さが、そのまま市場での評価につながっている例です。
投資や用地提供を考える人への示唆
調整力の必要性は、再生可能エネルギーの導入と脱炭素の流れに支えられています。ただし、市場の単価は制度の見直しや参加する設備の増加によって変わります。調整力の需要が続くことと、単価が高い水準で続くことは別の話として考える必要があります。
- 調整力の必要性は構造的なものです
- 単価は上限価格の引き下げや供給の増加で変動します
- 収支の前提が、どの時点の制度と単価にもとづくかを確かめます
調整力はどのように確保されているか
調整力は、必要になってから探すのでは間に合いません。そのため、各エリアの一般送配電事業者は、需給調整市場を通じて前日にあらかじめ確保しています。確保された設備は、約定した時間帯に指令へ応じられる状態で待機し、その待機に対して対価が支払われます。
市場で取引されるのは電力量ではなく、出力を増減できる能力(ΔkW)です。周波数の乱れが小さく、実際にはほとんど動かなかった時間帯でも、待機していたこと自体に価値があると考えられています。調整力が「保険」のような性格を持つといわれるのは、このためです。
系統用蓄電池は、電力網に単独でつながり、こうした調整力を提供することで収入を得ます。自前で使う電気を持たない系統用蓄電池にとって、調整力は事業の中心となる働きです。
蓄電池だけがもつ両方向の強み
火力発電は、出力を上げ下げして調整力を提供しますが、電気を吸収することはできません。蓄電池は、電気が余れば充電して吸収し、足りなければ放電して供給できます。一台で上げる方向と下げる方向の両方に対応できる点が、蓄電池の大きな特徴です。
ただし、ためられる電気の量には限りがあります。放電を続ければ電池は空になり、充電を続ければ満杯になります。そのため、調整力を提供しながら、次の待機に備えて充電の量を適切に保つ運用が求められます。この運用は、蓄電所から委託を受けたアグリゲーターが市場の動きを見ながら計画します。
調整力の役割を理解しておくと、系統用蓄電池が電力網の中でどのような価値を提供しているのかが見えてきます。収入の説明を読むときも、どの働きへの対価なのかを意識すると、前提の違いに気づきやすくなります。
まとめ
- 電力網は需要と発電を常に一致させないと周波数が乱れます。
- 再エネが増えるほど出力の揺れが大きくなり、調整力が多く必要になります。
- 調整力の担い手は、減っていく火力から、速く応動できる蓄電池へ移りつつあります。
- 需要が続くことと単価が高く続くことは分けて考えます。
出典
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(高圧編)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。