
この記事では、需給調整市場で取引されるΔkW(デルタキロワット)とは何か、なぜ待機しているだけで対価が支払われるのかを解説します。系統用蓄電池の収入の中心を理解するための基礎です。
ΔkWは「出力を増減できる能力」
ΔkWは、指令に応じて出力を増やしたり減らしたりできる能力を表す単位です。電力量(kWh)のように実際に流した電気の量ではなく、いざというときに出力を出せる状態そのものを数えます。需給調整市場では、このΔkWが商品として取引されています。
電力網は、使う量と発電する量を常に一致させないと周波数が乱れます。周波数の乱れに備えて、すぐに出力を変えられる設備をあらかじめ確保しておく必要があります。その確保の対価として支払われるのが、ΔkWの代金です。
待機が売り物になる仕組み
需給調整市場では、約定した時間帯は、実際に放電しなくても待機の対価が支払われます。買い手は各エリアの一般送配電事業者で、周波数を保つための調整力を前日に調達しています。蓄電所は、約定した時間に指令へ応じられる状態を保つことで収入を得ます。
上段がサービス、下段がお金の流れ。収益の中心は待機の対価で、スポット市場の値差は副次的。
太陽光発電が発電した電気を売って収入を得るのに対し、蓄電所の中心的な収入は、出せる状態を保つことへの対価です。収入の性質が根本的に違う点を押さえておく必要があります。
売上の決まり方
需給調整市場の売上は、出力(kW)×単価(円/ΔkW・30分)×約定したコマ数で決まります。1日は30分ごとの48コマに分かれ、どのコマに入札するか、充電をいつするかは、運用を受託するアグリゲーターが市場の動きを見て決めます。入札は実需給の前日に締め切られ、その日のうちに約定が決まります。
応動の速さによって、一次から三次②まで五つの商品があります。蓄電池は、周波数の変化を自ら検知して10秒以内に応動する最も速い一次調整力で強みを発揮します。
上限価格の見方
ΔkWの単価には上限が設けられています。2026年9月1日の実需給から、一次調整力などの上限は10円、二次調整力②と三次調整力①は7.21円となりました。上限は「最高でもこの価格」という意味で、その価格で約定し続けるわけではありません。
- 収支は上限より低い単価で組むのが基本です
- 約定率(入札したコマのうち落札されたコマの割合)も売上を左右します
- 単価や約定率の前提がどの時点の制度にもとづくかを確認します
電気を売る事業との違い
ΔkWの仕組みは、電気を売って収入を得る事業と比べると理解しやすくなります。太陽光発電は、発電した電力量(kWh)を売ることで収入を得ます。天気がよく、たくさん発電した日ほど収入が増えます。
これに対して、需給調整市場で蓄電所が売るのは、出力を出せる状態です。約定した時間帯にどれだけ実際に放電したかではなく、その時間に指令へ応じられる状態を保っていたかが問われます。周波数の乱れが小さく、ほとんど放電しなかった時間でも、待機の対価は支払われます。
その一方で、約定した時間に応じられる状態を保てなければ、対価を得られないだけでなく、ペナルティが生じることがあります。待機の対価は、確実に応じられる体制があってこそ得られるものです。充電の量を保つ計画や、設備の不具合を防ぐ保守が重要になるのはこのためです。
スポット市場の値差との関係
系統用蓄電池は、卸電力市場(スポット市場)で安い時間に充電し、高い時間に放電して値差を得ることもできます。ただし、収入の中心はあくまで需給調整市場の待機の対価であり、スポット市場の値差は副次的な位置づけです。
需給調整市場で約定した時間帯は、その出力を待機に充てているため、同じ出力をスポット市場の取引に使うことはできません。どの時間をどちらの市場に割り当てるかは、運用を受託するアグリゲーターが市場の動きを見て判断します。案件の資料を読むときは、収入の内訳がどちらの市場を前提にしているかを確かめておくとよいでしょう。
このように、ΔkWは「出せる状態」に値段をつける考え方です。電力量の多さではなく、約束した時間に確実に応じられるかどうかが価値になります。仕組みの前提を押さえておくと、案件ごとの収入の説明を落ち着いて読み比べることができます。
まとめ
- ΔkWは電力量ではなく、指令に応じて出力を増減できる能力です。
- 約定した時間帯は、放電しなくても待機の対価が支払われます。
- 売上は出力×単価×約定したコマ数で決まり、入札はアグリゲーターが担います。
- 上限価格は「最高でも」の価格で、収支は上限より低い単価で考えます。
出典
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(高圧編)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。