この記事は2026年10月時点の情報です。元記事で紹介した「先進的省エネルギー投資促進支援事業」と「省エネルギー投資促進支援事業」は、現在は国の「省エネ・非化石転換補助金」(令和7年度補正予算、正式名称「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」ほか)に統合され、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が公募しています。先進的な設備・システムへの更新は、工場・事業場型の「先進枠」として位置付けられています。2026年10月23日時点では、工場・事業場型と設備単位型の4次公募(2026年10月5日〜10月30日17時必着、交付決定は2026年12月下旬予定)が受け付けられています。
本記事では、中小企業がこの補助金を活用する際に知っておきたい点として、中小企業向けの枠と補助率、審査で評価される取組、省エネ診断やエネルギーマネジメントシステム(EMS)の活用を、SIIの4次公募用の公募要領に基づいて解説します。

中小企業が省エネ補助金を活用する意義
省エネ性能の高い設備への更新は、エネルギーコストの削減とCO2排出量の削減を同時に進められる取組です。一方で、空調・ボイラ・生産設備などの更新には大きな初期費用がかかり、資金面の制約から更新を先送りしている中小企業も少なくありません。
省エネ・非化石転換補助金は、こうした設備更新の費用の一部を国が補助する制度です。中小企業者等は大企業より高い補助率が設定されている区分が多く、中小企業だけが申請できる枠もあります。
省エネ・非化石転換補助金の全体像
令和7年度補正予算の省エネ・非化石転換補助金は、次の2つの公募に分かれています。
| 公募 | 事業区分 | 概要 |
|---|---|---|
| 工場・事業場型 | (Ⅰ)工場・事業場型(先進枠・一般枠・中小企業投資促進枠・サプライチェーン連携枠)、(Ⅳ)エネルギー需要最適化型 | 先進設備やオーダーメイド型設備などを組み合わせ、工場・事業場全体で省エネ効果を上げる事業 |
| 設備単位型 | (Ⅲ)設備単位型[従来枠]、(Ⅲ)GX設備単位型、(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型、(Ⅳ)エネルギー需要最適化型 | SIIが基準を定めて公表した設備(指定設備)などへ設備単位で更新する事業 |
旧「先進的省エネルギー投資促進支援事業」で対象となっていた、SIIが審査・登録した先進設備・システムへの更新は、現在は(Ⅰ)工場・事業場型の先進枠で扱われています。旧「省エネルギー投資促進支援事業」の(C)指定設備導入事業は(Ⅲ)設備単位型に、(D)エネルギー需要最適化対策事業は(Ⅳ)エネルギー需要最適化型に、おおむね相当します。
中小企業者等の補助率と上限額
4次公募での主な事業区分の補助率は次のとおりです。
| 事業区分 | 中小企業者等 | 大企業・その他 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| (Ⅰ)先進枠 | 2/3以内 | 1/2以内 | 15億円(非化石転換の場合20億円)※単年度 |
| (Ⅰ)一般枠 | 1/2以内(投資回収年数7年未満は1/3以内) | 1/3以内(投資回収年数7年未満は1/4以内) | 同上 |
| (Ⅰ)中小企業投資促進枠 | 1/2以内(投資回収年数5年未満は1/3以内) | 対象外 | 同上 |
| (Ⅲ)設備単位型[従来枠] | 1/3以内 | 1億円(下限30万円) | |
| (Ⅱ)電化・脱炭素燃転型 | 1/2以内 | 3億円(電化の場合5億円) | |
| (Ⅳ)エネルギー需要最適化型 | 1/2以内 | 1/3以内 | 1億円(下限30万円) |
中小企業投資促進枠
(Ⅰ)工場・事業場型の中小企業投資促進枠は、中小企業者等だけが申請できる枠です。省エネルギー効果の要件(原油換算、いずれか1つ)は、一般枠より低く設定されています。
- 省エネ率+非化石割合増加率7%以上(一般枠は10%以上)
- 省エネ量+非化石使用量500kl以上(一般枠は700kl以上)
- エネルギー消費原単位改善率5%以上(一般枠は7%以上)
投資回収年数の要件も、先進枠・一般枠の5年以上に対し、中小企業投資促進枠は3年以上とされています。工場全体での大幅な省エネが難しい場合でも、検討しやすい枠です。
設備単位型で中小企業が注意したい点
(Ⅲ)設備単位型・GX設備単位型は設備費のみが補助対象で、工事費は対象外です。一方、(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型では、中小企業者等が実施する事業に限り工事費も補助対象になります。ボイラや空調を電気式に切り替える場合などは、どの区分で申請するかによって補助額が大きく変わるため、事前に比較しておくことが大切です。
中小企業者等の範囲
中小企業者等は、資本金基準と従業員数基準のいずれか一方を満たす事業者です(製造業その他:3億円以下または300人以下、卸売業:1億円以下または100人以下、小売業:5千万円以下または50人以下、サービス業:5千万円以下または100人以下)。資本金5億円以上の法人に100%の株式を保有される会社など「みなし大企業」は除かれます。個人事業主は青色申告者に限られます。
審査で評価される中小企業の取組
採択は、計画省エネルギー量、計画省エネルギー率、経費当たり計画省エネルギー量、EMSを活用した省エネの取組などの評価項目に基づき、外部審査委員会の評価を踏まえて上位から予算の範囲内で行われます。工場・事業場型の4次公募要領では、「中小企業取組関連」として次の項目に該当する場合に追加の評価を行うとされています(抜粋)。
- 中小企業者等が行う省エネルギー事業
- 資源エネルギー庁の「省エネ・地域パートナーシップ」におけるパートナー金融機関の支援を受けた事業者が行う省エネルギー事業
- 2023年度以降に、国の省エネルギー診断事業(「エネルギー利用最適化診断等事業」「地域エネルギー利用最適化取組支援事業」など)で省エネルギー診断を受けた事業所の省エネルギー事業
- 中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けた計画に記載された事業、または経営革新計画の認定を受けた企業が実施する省エネルギー事業
- 『パートナーシップ構築宣言』登録企業の省エネルギー事業
このほか、売上高に対するエネルギーコストの割合が10%以上のエネルギー集約型企業の事業や、サプライチェーンの下流企業がCO2削減を対外的にコミットしており、申請する中小企業がそのサプライチェーンに入っている事業なども追加の評価の対象です。設備単位型の公募要領でも、中小企業者等の事業や省エネルギー診断を受けた事業が追加評価の対象とされています。
省エネルギー診断の活用
省エネルギー診断は、専門家が工場や事業所を訪問するなどして、エネルギーの使用状況を確認し、設備の運用改善や更新の提案を行うものです。診断結果は、どの設備を更新すれば効果が大きいかを判断する材料になり、上記のとおり補助金の審査で追加の評価を受けることもできます。
2026年度は、資源エネルギー庁の「令和8年度中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費(エネルギー利用最適化診断等事業)」により、一般財団法人省エネルギーセンターが「省エネ最適化診断」などの省エネ支援サービスを実施しています。2026年10月時点で、診断の実施時期ごとに申込を受け付けています。受付期間や費用は、同センターの省エネ支援サービスのウェブサイトで確認してください。都道府県や市区町村が独自に無料の省エネ診断や診断費用の補助を行っている場合もあります。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の活用
EMSは、エネルギーの使用状況を計測・可視化し、設備の運転を最適化する仕組みです。(Ⅳ)エネルギー需要最適化型は、SIIが採択・公表したエネマネ事業者からEMS機器を導入し、EMS活用計画を作成して改善の成果を報告・公表する事業で、中小企業者等の補助率は1/2以内です。計画期間は2年間で、省エネルギー率2%改善が目安とされています。補助対象経費は設計費・設備費・工事費です。
EMSによる可視化は、補助金を使うかどうかにかかわらず、次のようなPDCAサイクルで省エネを継続するための基盤になります。
- P(計画):エネルギー使用状況を分析し、効果的な改善策を計画する
- D(実施):運用改善や設備更新を実施する
- C(検証):エネルギー使用量の変化から改善策の効果を評価する
- A(見直し):検証結果をもとに改善策を見直す
申請の流れ
- SIIホームページで公募要領を確認する
- SIIホームページでアカウントを登録し、補助事業ポータルのユーザ名等をメールで取得する
- 3者以上の見積を取得し、省エネルギー量の計算などを行って事業計画を作成する
- 補助事業ポータルに必要事項を入力し、申請書類を出力する
- 申請書類一式を「一般社団法人環境共創イニシアチブ」宛てに郵送する
- 審査・採択を経て交付決定を受けた後に、契約・発注し、事業を実施する
4次公募(単年度事業)のスケジュールは、交付決定が2026年12月下旬予定、事業完了が2027年1月31日まで、補助金の支払いが2027年1月末〜3月末です。事業完了後も、成果報告(事業完了の翌々年度の5月末日まで)が求められます。
中小企業が申請前に確認したい注意点
- 交付決定前の発注は対象外:契約・発注は必ず交付決定日以降に行います。
- 補助金は後払い:設備代金を支払い、実績報告を経てから補助金が支払われるため、いったん全額を立て替える資金計画が必要です。
- 3者以上の見積:補助対象経費は原則として3者以上の価格競争による最低価格が上限です。
- 他の補助金との併用:補助対象経費が重複する国の補助金等とは併用できません。中小企業経営強化税制との併用は可能とされています。
- 設備の処分制限:補助金で取得した設備を法定耐用年数内に処分する場合は、事前にSIIの承認が必要です。
省エネルギー量の計算や区分の選択には専門的な知識が必要です。公募要領でも、販売事業者やエネマネ事業者と十分に連携して申請手続きを行うよう求められています。
まとめ
中小企業向けの国の省エネ設備補助金は、現在は「省エネ・非化石転換補助金」として実施されています。中小企業者等は多くの区分で補助率が高く、中小企業投資促進枠では省エネ要件も緩和されています。また、省エネルギー診断の受診や経営力向上計画の認定などは審査で追加の評価を受けられます。申請を検討する場合は、まず省エネ診断などで自社の改善余地を把握し、最新の公募要領で要件と締切を確認したうえで、早めに準備を進めることが大切です。
参考資料
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)|SII 一般社団法人環境共創イニシアチブ
- 省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)公募要領(4次公募用)|SII
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)|SII
- 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募用)|SII
- 省エネ特設サイト|SII
- 令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領|SII
- 省エネ支援サービス(令和8年度 エネルギー利用最適化診断等事業)|一般財団法人省エネルギーセンター
- 中小企業・小規模企業者の定義|中小企業庁
著者のプロフィール

- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。








