
この記事では、2026年3月14日に行われた需給調整市場の取引方法の変更と、それが蓄電所の運用と収入にどう影響するかを説明します。アグリゲーターの運用の巧拙で差がつきやすくなった理由も分かります。
何が変わったのか
2026年3月14日、需給調整市場の一次調整力から三次調整力①までの取引が、前日・30分単位に移行しました。同時に、一次調整力などの上限価格が19.51円から15.00円/ΔkW・30分に引き下げられました。さらに2026年9月1日の実需給分からは、一次調整力などが10円、二次調整力②と三次調整力①が7.21円の上限になっています。
前日取引では、入札は実需給の前日に締め切られ、その日のうちに約定が決まります。取引の単位は1日48コマの30分ごとです。
変更前
- 一次などの上限は19.51円
- 取引の時間単位とタイミングが現在と異なっていた
- 単価が高い水準の時期があった
変更後
- 一次〜三次①は前日に約定
- 30分単位で入札
- 上限は15.00円、9月から10円・7.21円
三次調整力②は対象外。上限は「最高でも」の価格。
前日に決まることの意味
実需給に近い前日に約定が決まると、入札する側は、翌日の天気や電力の需給の見通しをある程度踏まえて判断できます。30分単位で入札できるため、時間帯ごとに入札するかどうか、いくらで入札するかを細かく決められます。
蓄電池にとっては、充電の計画と入札の計画を一体で組み立てやすくなったともいえます。どのコマで待機し、どのコマで充電し、どのコマを卸電力市場での運用に回すかを、前日の見通しに合わせて決めていくことになります。
単価は落ち着いた
上限価格の引き下げにより、需給調整市場の単価は落ち着きました。それでも、蓄電池が調整力の中心的な担い手であることは変わりません。蓄電池は速く正確に応えられるため、一次調整力では引き続き重要な役割を担っています。
上限価格が下がったことで、収支試算の前提も見直しが必要になります。上限は「最高でもこの価格」であり、収支は上限より低い単価で組むのが基本です。過去の高い単価の時期の実績をそのまま将来に当てはめた試算には注意が必要です。
運用の巧拙で差がつく
前日・30分単位の取引では、48コマの一つひとつで入札の判断が求められます。どのコマにいくらで入札するか、充電をいつ行うか、約定しなかったコマを卸電力市場でどう補うか。これらの組み合わせで、同じ設備でも収入に差が出ます。
この判断を担うのはアグリゲーターです。オーナーが市場の画面を見る必要はありませんが、どのアグリゲーターに委託するかが、これまで以上に収入を左右するようになりました。
- 入札戦略:単価と約定率の釣り合いをどう取るか
- 充電計画:待機に必要な電気をどの時間に確保するか
- 複数市場の組み合わせ:需給調整市場と卸電力市場の配分
低圧の参入とあわせて見る
2026年4月からは、低圧の設備をアグリゲーターが束ねて需給調整市場に応札できるようになりました。出力49.9kWの低圧蓄電所は、一次調整力のオフライン枠に束ねて参加するのが中心です。前日・30分単位の取引の中で、束ねた設備をどう運用するかも、アグリゲーターの力量が問われる部分です。
オーナーが確かめておきたいこと
前日取引への移行は、オーナーにとっても無関係ではありません。収支の試算が移行後の取引方法と上限価格を前提にしているか、アグリゲーターがどのような体制で日々の入札を行っているか、運用の結果をどの程度の頻度と細かさで報告してくれるかを確かめておくことが大切です。
- 試算の単価は、2026年9月以降の上限価格を踏まえているか
- コマごとの入札と充電の計画を、誰がどう決めているか
- 月ごとの報告で、単価・約定コマ・卸電力市場の収入を分けて示してもらえるか
取引のルールは今後も見直される可能性があります。制度の変更があったときに、その影響を試算に反映して説明してくれるかどうかも、委託先を選ぶうえでの判断材料になります。
まとめ
- 2026年3月14日、一次〜三次①の取引が前日・30分単位に移行し、上限価格も引き下げられました。
- 前日の見通しを踏まえて、コマごとに入札と充電を組み立てる運用になりました。
- 単価は落ち着き、収支は上限より低い単価で組むのが基本です。
- アグリゲーターの運用の巧拙が収入の差として表れやすくなりました。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。