
同じ2メガワットの蓄電所でも、ある案件は4億円、別の案件は8億円と、値段が2倍近く違って見えることがあります。多くの場合、これは高すぎる、安すぎるという話ではなく、比べている価格の中身が異なることによるものです。この記事では、公表された取引の価格、値段がそろわない理由、比べるときにそろえる3つの点、価格と税制の関係を整理します。
公表された取引の値段
上場企業の適時開示など(2024〜2026年)。含まれる範囲が種類ごとに違う。
出力2メガワット、容量8メガワットアワー級の蓄電所について、上場企業の適時開示などで公表された事例を種類ごとに並べると、次のようになります。
| 取引の種類 | 公表事例の価格 |
|---|---|
| 完成品の一括取得(ターンキー) | 5.6億〜7億円 |
| 開発権(土地と接続の地位) | 1.2億〜1.7億円 |
| 自社で複数か所を開発する事業者の開示(土地・負担金・蓄電池・施工込み) | 1か所あたり約4億円 |
| 工事代金(2024〜2025年の開示) | 7.4億〜8.1億円 |
価格は公表事例の幅であり、個別の取引条件を表すものではありません。
なぜ値段がそろわないのか
完成品
- 用地
- 接続の権利
- 工事費負担金
- 設備と工事
開発権
- 土地
- 接続手続きを進めた地位
- 設備と工事は買い手が別途発注
それぞれの価格に何が含まれているかを見ると、違いの理由が分かります。
完成品と開発権
完成品の価格には、用地、接続の権利、工事費負担金、設備、工事まですべてが含まれています。一方、開発権は、土地と、電力会社への接続手続きを進めた地位だけです。設備と工事は、購入した側が別途発注します。開発権の価格に工事代金を足すと、完成品の価格に近づきます。
工事代金と自社開発の数字
8億円前後の工事代金は、機器の価格が高かった時期のものであり、現在の水準より高く出ています。また、約4億円という数字は、自社で開発を手がける事業者の原価に近いものです。外部から購入する人が、この値段で完成品を取得できるわけではありません。
比べるときにそろえる3つのこと
蓄電所の価格を比べるときは、次の3点をそろえる必要があります。
- 取引の種類。完成品なのか、開発権なのか、工事代金なのかを確認します。
- 税の区分。税込か税抜かを確認します。7億円の案件であれば、その差は7,000万円になります。見落とされやすい点です。
- 土地と工事費負担金。価格に含まれているのか、別払いなのかを確認します。負担金は、場所によって数千万円から億単位になることがあります。
この3点をそろえて初めて、価格が高いのか安いのかを判断できるようになります。
価格と税制の関係
価格を考えるうえでは、税制との関係にも注意が必要です。即時償却が使える大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)には、年平均の投資利益率が15%以上という要件があります。この計算の分母は、設備の取得価額です。
つまり、高く購入するほど要件を満たしにくくなります。節税になるから高くてもよい、という考え方は逆であり、税制の利用を考えるのであれば、なおさら価格の妥当性が重要になります。
中身をそろえて比べる意味
蓄電所の値段は一見分かりにくく見えますが、中身をそろえて比べれば、適正な価格の案件ははっきり見えてきます。調整力が不足している状況は続いており、手続きを終えた案件の価値は高まっています。適正な価格で、中身のそろった案件を選ぶことが、検討の出発点になります。
まとめ
- 2MW・8MWh級の公表事例は、完成品5.6億〜7億円、開発権1.2億〜1.7億円、自社開発約4億円、工事代金7.4億〜8.1億円と種類ごとに大きく異なる
- 価格差の多くは、含まれる範囲や時期の違いによるもの
- 比べるときは、取引の種類、税込か税抜か、土地と工事費負担金の扱いの3点をそろえる
- 大胆な投資促進税制の投資利益率15%要件は取得価額が分母のため、高く買うほど要件から遠ざかる
出典
- 上場企業の適時開示・プレスリリース(2024〜2026年)
- 経済産業省 特定生産性向上設備等投資促進税制 申請要領(2026年)
- ※価格は公表事例の幅で、個別の取引条件を表すものではありません。
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。