タンソーマンGX 蓄電所の案件と用地

高圧・低圧 共通

「節税になる蓄電所」は本当か。大胆な投資促進税制の条件と落とし穴

「蓄電所は節税になる」という話を耳にする機会が増えました。この話は半分が本当で、半分は誤解です。この記事では、令和8年度税制改正でできた大胆な投資促進税制の中身と、蓄電所で使うときの条件と落とし穴、そしてどのような事業者に向いているのかを整理します。

大胆な投資促進税制とはどのような制度か

制度を使う手続きの順番
  1. 投資計画中小企業者等は合計5億円以上、利益率15%以上
  2. 大臣の確認経済産業大臣の確認。審査は30日程度
  3. 設備の取得確認の前に取得した設備は対象外
  4. 効果を選ぶ即時償却か税額控除7%

「節税になる蓄電所」という話の元になっているのは、令和8年度の税制改正で創設された大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)です。系統用蓄電池を含む設備投資について、即時償却か税額控除のどちらかを選べる制度です。

2つの大きな要件

  • 投資計画の取得価額の合計が35億円以上であること(中小企業者等は5億円以上)
  • 年平均の投資利益率が15%以上となる見込みであること

手続きと効果

手続きは、経済産業大臣の確認を受けてから設備を取得する流れです。審査には30日程度かかります。

項目 内容
選べる効果 即時償却 または 税額控除
税額控除率 7%(建物・構築物などは4%)
控除の上限 法人税額の20%
手続き 経済産業大臣の確認を受けてから取得(審査は30日程度)

即時償却は、設備の取得価額をその年に一度に費用として計上できる仕組みです。税額控除は、取得価額の一定割合を法人税額から差し引く仕組みです。どちらが有利かは、その年の利益の大きさや今後の見通しによって変わります。いずれも税金の支払いを減らしたり、時期を早めたりする効果があるため、「節税になる」と言われているわけです。

ただし、これらの効果を受けるには、ここで挙げた要件をすべて満たしたうえで、決められた順番で手続きを進める必要があります。条件のどれかひとつでも外れると、制度は使えません。以下では、蓄電所に当てはめたときに特に注意すべき点を見ていきます。

蓄電所で使うときの条件と落とし穴

取得価額に入るもの・入らないもの

対象になる

  • 設備
  • 未使用の完成品の購入

対象にならない

  • 土地・接続の権利・工事費負担金
  • 運転開始後の設備(中古扱い)
  • 貸付けの形の契約

確認の前に取得した設備は対象外

最も多い失敗は、手続きの順番です。経済産業大臣の確認を受ける前に取得した設備は、対象になりません。売買契約を結んだ後で制度の存在を知ったという場合には、間に合わないことになります。検討の初期段階から、制度を使うかどうかを決めておく必要があります。

取得価額に入らないもの

取得価額に含まれるのは設備です。土地、系統への接続の権利、工事費負担金は含まれません。たとえば7億円の完成品を購入したとしても、その全額が制度の対象になるわけではありません。対象となる金額がいくらになるのかを、契約前に確かめておくことが大切です。

完成品の購入は対象、運転開始後は中古扱い

自社で建設する必要はなく、未使用の完成品を購入する場合も対象になります。ただし、売主がすでに運転を始めた設備は中古の扱いとなり、対象外です。

貸付けの形の契約と、他の税制との併用

設備を貸し付ける形の契約も対象外です。収入を固定する代わりに運用を他社に任せるような契約は、この貸付けに近いと判断される可能性があるため注意が必要です。また、計画期間中は中小企業経営強化税制などとの併用ができません。

このように、蓄電所の売買では、契約の形や設備の状態、価格の内訳によって制度の対象になるかどうかが変わります。売主から提示された条件をそのまま受け入れるのではなく、制度の要件に照らして一つずつ確かめることが重要です。

投資利益率15%についての誤解

この制度で最も誤解されやすいのが、投資利益率15%の計算方法です。

  • 分子:営業利益の増加額と減価償却費の年平均
  • 分母:設備の取得価額

分母が設備の取得価額であるため、設備を高く購入するほど利益率は下がり、要件から遠ざかります。「節税になるのだから多少高くてもよい」という考え方は、この制度の仕組みとは逆です。適正な価格で取得することが、要件を満たすうえでも前提になります。

1か所で5億円に届かない場合の考え方

中小企業者等の場合、要件は投資計画の取得価額の合計で5億円以上です。前述のとおり土地や接続の権利、工事費負担金は取得価額に入らないため、蓄電所の購入額そのものではなく、設備部分の金額で判断する必要があります。

2メガワットの蓄電所1か所では、中小企業者等の5億円の要件に届かない場合があります。その場合、複数か所をひとつの投資計画にまとめることで、合計で要件を満たせる場合があります。

あわせて、売買契約では土地や接続の権利と、設備の価格を分けて記載しておくことが大切です。取得価額に入るものと入らないものが明確になり、制度の対象となる金額を説明しやすくなります。

どのような事業者に向いているのか

この制度が向いているのは、高圧の蓄電所を複数か所、法人で保有し、本業で利益が出ている会社です。即時償却を選べば、初年度の税負担を大きく減らすことができます。

一方で、低圧の蓄電所を1基だけ保有する場合は5億円に届かないため、対象外です。「蓄電所なら規模を問わず節税になる」という理解は正しくありません。

税制は、あくまで付随的な効果と考えるべきものです。まず問うべきは、適正な価格で取得でき、制度がなくても事業として成り立つ案件かどうかです。そのうえで税制を活用すれば、投資の回収を早めることができます。国も蓄電池への投資を後押ししており、条件と順番を押さえて使えば、蓄電所投資にとって有力な制度になります。

なお、適用の可否は案件ごとに異なります。必ず顧問税理士にご確認ください。

まとめ

  • 大胆な投資促進税制は、系統用蓄電池を含む設備投資で即時償却か税額控除(7%、建物・構築物などは4%、法人税額の20%が上限)を選べる制度です。
  • 中小企業者等は投資計画の合計5億円以上、年平均の投資利益率15%以上が要件で、経済産業大臣の確認を受けてから取得する必要があります。
  • 土地・接続の権利・工事費負担金は取得価額に入らず、運転開始後の設備や貸付けの形の契約は対象外です。
  • 高く買うほど投資利益率は下がります。制度がなくても成り立つ案件を選ぶことが前提です。

出典

  • 経済産業省 特定生産性向上設備等投資促進税制 申請要領(2026年)
  • 租税特別措置法42条の12の7
  • ※適用の可否は、案件ごとに顧問税理士にご確認ください。

※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。

コラムの一覧へ→