タンソーマンGX 蓄電所の案件と用地

高圧・低圧 共通

系統用蓄電池の申込み4,087万kW、つながったのは128万kW。行列の実態

系統用蓄電池は、申し込まれた量に対して実際に動いている量がごく一部にとどまっています。この記事では、国の審議会の数字をもとに「行列」の長さを確かめ、なぜ前に進まないのか、2026年10月から何が変わるのか、案件を選ぶときに何を確認すべきかを整理します。

申込みの約3%しか動いていない

資源エネルギー庁の次世代電力系統ワーキンググループ(2026年10月6日)で示された数字では、系統用蓄電池の電力網への接続申込みは全国で約4,087万kWです。これに対し、実際につながったのは約128万kW(2026年6月末)にとどまります。

128万kW÷4,087万kWで約3.1%です。残りの約97%はまだ電力網につながっておらず、市場からの収入もありません。いわば、申込みの列に並んでいる状態です。

区分 量
接続の申込み 約4,087万kW
実際につながった量(2026年6月末) 約128万kW
比率 約3.1%

高圧の蓄電所は1か所あたり2,000kW程度のものが多く、4,087万kWを単純に割ると約2万か所分になります(1か所2,000kWとした単純計算です)。これだけの数がすべて建つことは考えにくく、申込みの多くは、とりあえず列に加わっておくという性格のものだと見られます。

ここで注意したいのは、申込み量と実際に稼働している量の間にこれほど大きな差があるという点です。電力網につながっていない蓄電池は、どれだけ立派な計画があっても市場で収入を得ることはできません。案件の説明で「申込み済み」と書かれていても、それは長い列の後ろのほうに並んでいる可能性があるということを、まず前提として押さえておく必要があります。

申込みと実際につながった量
  • 接続の申込み約4,087万kW
  • 連系済み約128万kW

2026年6月末。次世代電力系統WG第13回資料。比率は約3.1%。

なぜ申込みが集まったのか

理由は大きく2つあります。

補助金の条件がよかった

国の補助金は設備費の3分の1で、上限は10億円です。東京都の令和8年度の補助は3分の2、上限20億円という条件でした。都の分はすでに受付を終えていますが、これだけ条件が整うと、まず申し込んでおこうという動きが広がるのは自然です。

調整市場の単価が高かった

もう一つは、電気の需給を調整する市場(需給調整市場)の単価です。最も高く売れていた一次調整力の上限価格は、19.51円から15円へ、さらに2026年9月から10円へと下がりました。上限が10円になったということは、10円で売れるという意味ではありません。広告などで示される利回りが、いつの時点の単価で計算されたものかは必ず確認する必要があります。

前に進めない3つの壁

電力網につながるまでには、申込み、接続の検討、契約の申込み、工事費負担金、土地の権利という段階があります。途中で止まる理由は、主に次の3つです。

  1. お金:契約の申込み時に、電力会社側の工事費の見込額の10%を保証金として入れます。その後の負担金の契約では、初回に全体の50%以上を支払います。工事費は場所によって大きく異なり、見積りの段階で断念する例もあります。
  2. 時間:電力会社側の工事は3か月で済む場所もあれば、数年かかる場所もあります。その間、収入はありません。
  3. 土地:電力網に空きがあっても、その土地を本当に使えるのか、所有者は誰か、契約書はあるのかが曖昧なまま申し込まれている案件は少なくありません。
つながるまでの段階
  1. 申込み列に並ぶ入口
  2. 接続の検討工事費と期間の回答
  3. 契約の申込み見込額の10%を保証金
  4. 工事費負担金初回に50%以上
  5. 土地の権利書類で示す

2026年10月から、土地の裏付けが求められる

東京電力パワーグリッドは2026年9月18日のお知らせで、ルールの変更を示しました。2026年10月1日以降に受け付けた申込みは、連系の承諾から原則2か月以内に、土地を使えることを示す書類(登記簿や土地の賃貸借契約書の写しなど)を提出する必要があります。

これにより、土地の裏付けがないまま列に並んでおくことは難しくなります。「申込み済み」という段階は入口に立っただけであり、それだけで案件の価値が確定するわけではありません。

このルールは、土地の裏付けを持つ事業者にとっては、むしろ列が整理されて前に進みやすくなる面もあります。逆に、土地の契約がないまま権利だけを売り出している案件は、今後この期限の中で書類を整えられるかが問われます。案件を検討する側は、土地の書類がいつ、誰の名義で用意されているかを確認しておくと安心です。

低圧でも同じ動きが始まっている

小規模な低圧の蓄電所でも、2026年8月末時点で約2,800件、約13万kWの申込みがあると国の審議会で報告されました。大きな土地を細かく分けて申し込む「分割」が問題とされ、土地の名義を確認する期間を1年から5年に延ばす案が議論されています。2026年10月時点では決まっていませんが、決まれば低圧の申込みも一段と厳しく見られることになります。

案件を選ぶときに確認すること

利回りの数字は前提次第で大きく変わります。先に確かめたいのは、その案件が手続きのどこまで進んでいるかです。

  • 接続の契約は成立しているか
  • 土地の権利を書類で示せるか
  • 工事費負担金はいくらか
  • 周辺の民家との距離や浸水のリスクを確認したか

接続の契約が成立し、土地の権利も確かな案件と、申し込んだだけの案件とでは、同じ「蓄電所」でも中身はまったく異なります。

まとめ

  • 系統用蓄電池の申込み約4,087万kWのうち、つながったのは約128万kW(2026年6月末、約3.1%)です。
  • 申込みが集まった背景には、補助金の条件と、需給調整市場の高い単価がありました。上限価格は2026年9月から10円です。
  • 2026年10月1日以降の東京電力パワーグリッドへの申込みでは、連系承諾から原則2か月以内に土地の権利の書類が必要です。
  • 案件は利回りより先に、接続契約・土地・負担金・立地リスクの4点で見ることが大切です。

出典

  • 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 第13回(2026年10月6日)資料2
  • 東京電力パワーグリッド お知らせ(2026年9月18日)
  • 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月30日)
  • 環境共創イニシアチブ(SII)令和7年度補正、東京都 令和8年度 の各公募要領
  • ※「約2万か所分」は、1か所2,000kWとした単純計算です。

※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。

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