
東京都の系統用蓄電池の助成は、今年度の受付を2026年9月30日で終えました。この記事では、いま蓄電所に使える国の補助金と、即時償却を選べる「大胆な投資促進税制」の条件、使うときの注意点、そして低圧の蓄電所の扱いを整理します。
東京都の助成は今年度の受付を終了
東京都の系統用大規模蓄電池導入促進事業は、補助率3分の2、上限20億円という手厚い制度でした。対象は、東京電力管内の系統に直接つなぐ蓄電池で、都内に本店または支店がある法人です。国の補助を受ける場合は、その分を差し引く仕組みになっていました。
この助成は今年度の受付が9月30日で終わっています。そのため、これから計画する案件では、国の補助金と税制が検討の中心になります。
都の制度は国の補助と組み合わせる前提で設計されており、東京電力管内で高圧以上の案件を計画していた事業者にとっては大きな後押しでした。次年度以降の扱いは、東京都の公表を確認する必要があります。
国の補助金:系統用蓄電システム等導入支援事業
国の補助金は、環境共創イニシアチブ(SII)が執行する系統用蓄電システム等導入支援事業です。主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率・上限 | リチウムイオン電池で1万kW未満の場合、補助率1/3・上限10億円 |
| 公募期間 | 9月4日から11月4日まで |
| 交付決定 | 2027年1月上旬の予定 |
| 対象設備 | 1,000kW以上 |
| 申請件数 | 1社2件まで |
対象が1,000kW以上であり、1社あたりの申請件数にも上限があるため、どの案件で申請するかを事前に絞り込んでおくことが求められます。また、交付決定が2027年1月上旬の予定であることから、発注や着工の時期はその後に組む必要があります。工程表を作る段階で、補助金の手続きの日程を織り込んでおくことが重要です。
補助金を使うときの注意
補助金は使えれば有利ですが、手続きと事業運営にいくつかの制約がかかります。
- 交付決定の後の契約・発注が対象:補助の対象は交付決定の後に契約や発注をしたものです。すでに完成した蓄電所を買う形とは両立しにくくなります。
- 申請は設備の所有者本人:代理申請はできず、GビズIDプライムによる電子申請です。
- 地域との協議:自治体や地権者との協議が必要で、100メートル以内での説明会が求められることもあります。
- 機器の要件:PCSやEMSなどにJC-STARの星1が必要です。
- 処分の制限:補助を受けた設備は、一定期間、売却や担保提供に承認が要ります。
将来の売却や資金調達の計画がある場合は、処分の制限が事業計画と合うかを先に確かめておく必要があります。
このように、補助金は投資額を直接下げる効果がある一方で、発注の時期、申請者、機器、売却や担保の扱いまで、事業の進め方そのものに条件がかかります。完成品を購入する形や、早期の売却を想定した形とは相性がよくない点を理解したうえで、使うかどうかを判断します。
- 公募に申請9月4日〜11月4日。設備の所有者本人
- 交付決定2027年1月上旬の予定
- 契約・発注交付決定の後のものが対象
- 運転・保有一定期間は売却や担保に承認が必要
大胆な投資促進税制で選べる即時償却
もうひとつの柱が税制です。令和8年度の税制改正で、大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)ができました。系統用蓄電池を含む設備投資で、即時償却か税額控除7%を選べます。構築物などは4%です。
主な要件
- 投資額が合計35億円以上、中小企業者等は5億円以上
- 年平均の投資利益率が15%以上の見込みであること
- 経済産業大臣の確認を受けてから設備を取得すること(確認前に取得した設備は対象外)
対象にならないもの
- 土地や接続の権利、工事費負担金は取得価額に含まれません
- 未使用の完成品は対象になりますが、稼働済みの中古は対象外です
- 設備を貸し付ける形の契約も対象外です
2MW級の蓄電所1か所では5億円に届かない場合があります。その場合、複数か所をひとつの投資計画にまとめることで、合計で5億円の要件を満たせる場合があります。
手続きの順番は特に注意が必要です。確認を受ける前に設備を取得してしまうと、要件を満たしていても対象外になります。発注や契約の前に、税制の手続きの段取りを組んでおく必要があります。
「節税できるなら高く買ってもよい」は誤解
税制について最も多い誤解は、節税効果があるなら多少高く買っても元が取れる、という考え方です。投資利益率15%の計算の分母は、設備の取得価額です。高く買うほど利益率は下がり、要件から遠ざかります。税制を使う前提であれば、むしろ取得価格の妥当性がより重要になります。
税制は、価格が妥当で、そもそも収益性の高い案件にとって回収を早める仕組みです。取得価格が割高な案件を正当化するものではない点を押さえておく必要があります。
低圧の蓄電所の場合
国と東京都の補助金は、いずれも1,000kW以上が対象です。49.9kWの低圧蓄電所に使える制度は、公表資料では確認できません。税制についても、1基では5億円に届きません。中小企業経営強化税制は、電気を全部売る事業が対象外とされています。
一方で、制度の制約を受けないという面もあります。交付決定を待たずに進められ、機器の選び方や将来の売却の判断も、事業者自身で決められます。
補助金と税制の考え方
補助金と税制は、案件の収益性を補う手段であって、収益性そのものを生むものではありません。まず補助金がなくても成り立つ案件かどうかを確かめ、そのうえで使える補助金と税制で回収を早める、という順番で考えることが基本です。調整力の需要は大きく、国も蓄電池を後押ししています。順番を誤らなければ、制度は蓄電所投資を支える手段になります。
国の補助金
- 補助率1/3・上限10億円
- 1,000kW以上が対象
- 交付決定後の発注が条件
大胆な投資促進税制
- 即時償却か税額控除7%
- 投資額5億円以上(中小)
- 投資利益率15%以上の見込み
まとめ
- 東京都の助成(2/3・上限20億円)は2026年9月30日で今年度の受付を終了しました。
- 国の補助金は1/3・上限10億円。交付決定後の発注が条件で、処分の制限や機器要件があります。
- 大胆な投資促進税制は即時償却か税額控除7%を選べますが、投資額と投資利益率15%以上の要件があり、取得の順番も重要です。
- 考える順番は、補助金がなくても成り立つ案件かを見たうえで、使える制度で回収を早めることです。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 環境共創イニシアチブ(SII)系統用蓄電システム等導入支援事業 公募要領(2026年)
- 東京都 系統用大規模蓄電池導入促進事業(令和8年度)
- 経済産業省 特定生産性向上設備等投資促進税制 申請要領(2026年)
- ※適用の可否は、案件ごとに顧問税理士・各制度の窓口にご確認ください。
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。