
容量市場は将来の供給力を約束することへの対価、需給調整市場は約定した時間に調整力を提供することへの対価です。長期脱炭素電源オークションは容量の収入を長期に受け取る大型案件向けの仕組みで、高圧2MW級や低圧の蓄電所は対象になりません。
3つの仕組みは、何に対してお金が払われるのですか?
容量市場は「将来出せる能力の約束」、需給調整市場は「約定したコマで応じられる状態」、長期脱炭素電源オークションは「長期の容量の確保」に払われます。
容量市場
- 売るのは供給力(kW)
- 4年先の1年分を年1回のオークションで
- 蓄電池は継続放電時間で評価
- 最低1,000kW
需給調整市場
- 売るのは調整力(ΔkW)
- 前日の入札で30分単位に約定
- 約定した時間の待機の対価
- 最低入札量1MW(束ねて参加可)
長期脱炭素電源オークション
- 容量の収入を原則20年
- 他市場の収益の約9割を還付
- 蓄電池は3万kW以上
- 1日1回6時間以上の連続運転
高圧編と既存コラムの記述に基づく整理です。
時間軸はどう違いますか?
容量市場は4年先、需給調整市場は翌日、長期脱炭素電源オークションは20年という時間軸で動きます。
容量市場のメインオークションは、電力広域的運営推進機関が年1回実施し、オークションの時点から4年後の年度の供給力を確保します。応札する時点で、4年後にその設備が確実に動いていることを前提に約束することになります。需給調整市場は、実需給の前日に入札が締め切られ、その日のうちに約定が決まります。長期脱炭素電源オークションは、落札すると原則20年間、容量の収入を受け取ります。基本は容量市場とは何かで解説しています。
同じ蓄電所で、両方の対価を受け取れますか?
規模の要件を満たせば、容量市場と需給調整市場の収入を組み合わせることができます。
高圧2MW級は、一次〜三次調整力、卸電力、容量の各市場に参加でき、組み合わせはアグリゲーターが日々最適化します。低圧の49.9kWは、需給調整市場ではアグリゲーターが束ねて一次調整力のオフライン枠に入るのが中心ですが、容量市場は最低1,000kWの要件があり、単独では参加できません。
容量市場で約束した供給力は、実需給の年度に応じられる状態を保つ必要があるため、需給調整市場での運用と矛盾しない計画にしておくことが前提になります。この組み合わせ方は需給調整市場と容量市場の重ね方で扱っています。
長期脱炭素電源オークションは、小さな蓄電所にも関係しますか?
直接は関係しませんが、市場の価格を考える背景として知っておく意味があります。
長期脱炭素電源オークションは、収益を伸ばす制度というより、固定費を回収するための保険に近い性格です。他の市場で得た収益の約9割を還付する仕組みのため、市場が好調なときの上振れ分はほとんど手元に残りません。蓄電池の参加要件は3万kW以上で、2MW級や低圧は対象外です。小規模の蓄電所の収入は、単価が動く市場運用が基本になります。
資料でこの3つが出てきたら、何を確かめればよいですか?
その収入がどの仕組みのもので、対象規模と時間軸に合っているかを確かめます。
- 容量市場の収入が見込まれている場合、出力が1,000kW以上か、または束ねの前提が示されているか
- 容量市場の収入が、どの年度のオークション結果を前提にしているか。4年先の約束であることが反映されているか
- 需給調整市場の単価が上限価格のまま置かれていないか
- 長期脱炭素電源オークションや固定収入が、規模の要件を満たさない案件に書かれていないか
具体的な場面では、どう考えればよいですか?
需給調整市場の単価が下がったとき、容量市場の収入がどの程度支えになるかという観点で考えます。
需給調整市場の一次調整力の上限価格は、2026年9月1日に10.00円/ΔkW・30分となり、7.21円までの段階的な引き下げ方針も示されています。待機の対価の単価が下がる局面では、収入源を組み合わせているかどうかが収支の安定に関わります。ただし、容量市場の収入は4年先の約束であり、応札した年度の結果が実需給の年度に支払われるため、いつの収入として見込むかを年ごとに分けて確かめる必要があります。2030年度分のオークションは2026年10月に応札を受け付け、結果は12月頃に公表される予定です。
まとめ
- 容量市場は4年先の供給力の約束、需給調整市場は約定したコマの調整力への対価です。
- 長期脱炭素電源オークションは3万kW以上の大型案件向けで、小規模の蓄電所は市場運用が基本です。
- 資料ではどの仕組みの収入か、規模と時間軸の要件に合っているかを確かめます。
高圧・特別高圧の案件は、蓄電所の案件と用地でご紹介しています。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック2026 高圧編」
- タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック2026 低圧編」
- 電力広域的運営推進機関 容量市場の公表資料
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。