
工事中のトラブルは、搬入路、重機作業、機器の納期、系統側工事の遅れ、近隣対応の5つに集中します。多くは着工前の契約で備えられるため、どの時期に何が起きやすいかを把握し、EPC契約と工程表に反映しておくことが大切です。
工事はどのような流れで進むのですか
工事費負担金契約で系統側の工程が決まり、その後に設計・建設、市場参加の準備を経て運転開始に至ります。
機器の発注から据付、試験までは6〜12か月が目安です。並行して消防への届出、保安規程の届出、電気主任技術者の選任を進めます。系統側の工事は3か月から数年まで幅があり、運転開始の時期を左右します。全体の期間は運転開始までの18〜24か月で整理しています。
- 着工準備搬入路の確認不足
- 基礎・造成重機作業と近隣の苦情
- 機器の据付納期の遅れ
- 系統側の工事工期の延長
- 試験・受電手続きの不備
搬入路では、どのようなトラブルが起きるのですか
大型車両やクレーンが入れず、搬入の方法を変えるために工期と費用が増えるトラブルが起きます。
蓄電池コンテナや変圧器は大型で、道路の幅、曲がり角、電線の高さ、橋の重量制限で搬入できないことがあります。現地の確認を用地の段階で済ませ、EPC契約では搬入の条件を誰が確認したか、条件が違った場合の費用を誰が負担するかを明記しておきます。
重機作業と近隣対応では、何に注意するのですか
騒音、振動、車両の出入り、粉じんについて、事前に説明し、作業時間を決めておきます。
工事の苦情は、運転開始後の近隣との関係にも影響します。着工前に工事の期間、作業時間、車両の台数を近隣に伝え、連絡先を示しておきます。自治体の条例・要綱で住民説明を求められている場合は、その説明の内容と工事の実態がずれないようにします。
機器の納期が遅れたら、どうなるのですか
据付と試験が後ろにずれ、運転開始の時期が遅れます。
蓄電池、PCS、変圧器のいずれかが遅れれば、工程全体が止まります。EPC契約では、工期、遅延の補償、性能保証、瑕疵の保証期間を確認します。2027年4月1日以降に受け付ける高圧・特別高圧の契約申込みでは、PCSなどにJC-STAR★1の認証が求められる予定のため、機器の選定でも対応品かどうかを確かめておきます。契約の要点はEPC契約で確かめる4点をご覧ください。
系統側の工事が遅れた場合、事業者にできることはありますか
系統側の工事は一般送配電事業者が行うため、事業者が工期を短くすることは難しく、遅れを前提に契約を組むことが現実的な備えです。
- 工事費負担金契約で示された工程を、EPCの工程表と突き合わせる
- 設備が完成しても受電できない期間の保管・保険の扱いを決める
- アグリゲーターとの契約開始日を、受電の時期に連動させる
- 賃借地の場合、地代の発生時期と運転開始の遅れの関係を確認する
試験と受電の段階では、何が起きやすいのですか
届出や書類の不備で、受電や市場参加の準備が遅れることがあります。
保安規程の届出、電気主任技術者の選任、消防への届出が受電までに整っている必要があります。受電後も、アグリゲーターによる実働試験(約3か月)と市場への登録を経て、ようやく運用が始まります。この期間を工程表に入れておかないと、収入の開始時期を見誤ります。
トラブルを減らすために、着工前に何をそろえればよいですか
工程表、搬入計画、近隣への説明資料、各契約の開始日の一覧の4つをそろえます。
トラブルの多くは、関係者の間で前提が共有されていないことから生じます。EPC、一般送配電事業者、アグリゲーター、保守会社の工程を一つの表にまとめておくと、遅れが出たときの影響範囲がすぐに分かります。
保険は、工事中のどの事象に備えるのですか
工事中の事故、資材や機器の損傷、第三者への賠償に備えます。
工事中の保険はEPCが掛けるのか、事業者が掛けるのかを契約で明確にしておきます。完成から受電までの間に設備が置かれたままになる場合は、その期間の保険の扱いも確認します。運転開始後の火災、機器故障、事業中断、賠償の保険へ切り替える時期を決め、保険の空白期間をつくらないようにします。
まとめ
- 工事中のトラブルは、搬入路、重機作業と近隣対応、機器の納期、系統側工事の遅れ、試験・受電の手続きに集中します。
- 搬入条件や遅延の補償はEPC契約で、系統側の遅れは各契約の開始日の連動で備えます。
- 受電後もアグリゲーターの実働試験と市場登録の期間があるため、収入の開始時期を工程表に入れておきます。
高圧・特別高圧の案件は、蓄電所の案件と用地でご紹介しています。
出典
- タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月版)
- 東京電力パワーグリッド 発電量調整供給契約申込みの手続き(2026年)
- 消防庁 火災予防条例(例)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。