
月次報告では、約定率、市場別の収入、充放電量、稼働停止時間、劣化の指標の5つの数字を確認します。数字そのものより、前月や事業計画の前提との差と、その理由が説明されているかを確かめることが大切です。
月次報告では、なぜ5つの数字を見るのですか
収入の量、収入の質、設備の状態の3つを、この5つの数字で押さえられるためです。
約定率と市場別の収入は収入の量と質を、充放電量は運用の中身を、稼働停止時間と劣化の指標は設備の状態を表します。どれか一つだけを見ると、収入が減った理由が市場なのか設備なのかを見誤ります。
- 約定率入札したコマのうち落札された割合
- 市場別の収入需給調整・卸電力・容量の内訳
- 充放電量充電と放電のkWh、充電の電力費
- 稼働停止時間故障・点検・制御で止まった時間
- 劣化の指標容量の維持率と保証値との比較
約定率は、どう読めばよいのですか
入札したコマ数と約定したコマ数を分けて見て、約定率の変化の理由を確かめます。
需給調整市場の売上は、出力×単価×約定したコマ数で決まります。1日は30分×48コマ、1年で17,520コマです。約定率が下がった場合、入札の単価が高すぎたのか、募集量が減ったのか、設備の都合で入札できなかったのかで対応が変わります。約定率の考え方は約定率とはで解説しています。
市場別の収入では、何を確かめるのですか
需給調整市場、卸電力市場、容量市場の内訳と、それぞれの平均単価を確かめます。
2026年は需給調整市場の前日取引への移行と上限価格の引き下げで、単価が全エリアで下がりました。需給調整市場の単価が下がった月に、卸電力市場の値差で補えているかどうかは、運用の巧拙が表れる部分です。商品別(一次調整力、二次調整力など)の内訳まで出ていると、どの商品で稼いでいるかが分かります。
充放電量からは、何が分かるのですか
運用の中身と、充電にかかった費用が分かります。
充放電には往復で85〜90%程度の効率があり、損失の分だけ電気を買い足します。充電の電力費には託送料金や再エネ賦課金がかかる場合があり、放電には発電側課金がかかります。収入だけでなく、これらの費用が差し引かれた後の金額を確認します。アグリゲーター手数料の計算基礎が売上か運用益かによっても、手取りは変わります。
稼働停止時間は、どう読めばよいのですか
停止の原因を、故障、計画点検、系統側の制御に分けて確認します。
停止している時間は入札できず、収入が生まれません。故障による停止が続く場合は、メーカーや保守会社の対応の速さを確認します。計画点検は収入の少ない時期に寄せられているかどうかも、運用の質を見る観点です。
劣化の指標は、何と比べればよいのですか
メーカーの容量保証の値と、事業計画で置いた劣化率の前提と比べます。
電池は充放電で容量が減ります。保証は「何年で何%」の形で示されることが多く、実際の維持率が保証の線を下回りそうであれば、早めにメーカーと協議します。PCSの交換時期もあわせて確認しておきます。詳しくは劣化と容量保証をご覧ください。
報告書の形式について、契約で決めておくことはありますか
報告する項目、頻度、根拠データの開示範囲を、運用委託の契約で決めておきます。
- 商品別・コマ別の入札と約定の記録を求められるか
- 充電の電力費と各種料金の内訳が出るか
- 停止の原因と時間の記録が出るか
- 容量の測定方法と測定の頻度
これらが開示されないと、収入の変化を説明できず、金融機関や将来の買い手への説明にも困ります。
報告の数字が計画を下回ったときは、どう対応すればよいのですか
原因を市場・運用・設備に分け、運用委託先と改善策を協議します。
市場が原因であれば、上限価格の改定や募集量の変化など、制度の動きとあわせて計画を見直します。運用が原因であれば、入札の方針や商品の組み合わせを見直す余地があります。設備が原因であれば、保守会社やメーカーとの協議が必要です。1か月の数字だけで判断せず、季節による変動も踏まえて数か月単位で傾向を見ることが大切です。
改善策を実行した後は、翌月以降の報告で効果を確かめ、協議の記録とあわせて残しておきます。将来、蓄電所を売却する際にも、運用の経緯を示す資料になります。
まとめ
- 月次報告では、約定率、市場別の収入、充放電量、稼働停止時間、劣化の指標の5つを確認します。
- 数字の変化には、市場・運用・設備のどれが原因かの説明が付いているかを確かめます。
- 報告の項目と根拠データの開示範囲は、運用委託の契約の段階で決めておきます。
高圧・特別高圧の案件は、蓄電所の案件と用地でご紹介しています。
出典
- タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月版)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「2025年度の取引実績について」(2026年6月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。