
複数の蓄電所を持つときは、エリア、市場、運用委託先、運転開始時期の4つの軸で分けると、特定の要因で収入がまとめて減るリスクを下げられます。ただし、制度変更や単価の全体的な下落は分散しても残るため、それに耐えられる計画が前提になります。
なぜ蓄電所を分散して持つのですか
1か所の蓄電所では、その地点や契約先に固有の事象で収入が大きく変わるためです。
系統側の工事の遅れ、地域の需給の偏り、運用委託先の体制の変化など、1か所の蓄電所の収入を左右する要因は多くあります。複数の蓄電所で要因を分けておけば、一つの事象で全体が止まることを避けられます。
| 分散の軸 | 下がるリスク | 分けても残るもの |
|---|---|---|
| エリア | 特定エリアの単価下落、系統工事の遅れ | 全国共通の制度変更 |
| 市場 | 需給調整市場だけへの依存 | 市場間の連動 |
| 運用委託先 | 1社の運用の巧拙、体制の変化 | 委託先の比較にかかる手間 |
| 運転開始時期 | 一時点の単価水準への集中 | 長期的な単価の低下 |
エリアを分けると、何が変わるのですか
需給調整市場の単価や約定の状況、系統側の工事の進み方がエリアごとに異なるため、その差を平準化できます。
2025年度は、一次調整力の応札が調達量に対して大きく不足し、東京エリアの平均単価は通年で全国平均を上回りました。このようにエリアの差は存在しますが、将来も同じ差が続くとは限りません。複数のエリアに分けておけば、一つのエリアで単価が下がったときの影響を和らげられます。
市場と運用委託先を分けるとは、どういうことですか
収入を需給調整市場だけに頼らない運用と、委託先を1社に集中させない契約のことです。
蓄電所の収入源は、需給調整市場、卸電力市場、容量市場の3つです。海外の先行市場では、調整力の単価が下がると収益の中心が卸電力市場の値差へ移りました。複数の市場で稼げる運用を求めることが、市場の分散になります。運用委託先については、手数料の計算基礎や契約条件が会社ごとに違うため、複数社に委託して実績を比べる方法もあります。
運転開始時期を分けると、何が良いのですか
単価の水準が異なる時期に分けて運転を始めることで、収入の時期の偏りを減らせます。
単価が高いうちに運転を始めた案件ほど、初期の数年で多く回収できます。一方で、すべてを同じ時期に始めると、その時期の単価の水準に全体が左右されます。手続きの進み具合が異なる案件を組み合わせると、自然に時期が分かれます。
分散しても残るリスクは何ですか
制度変更、単価の全体的な下落、機器に共通する不具合の3つです。
- 制度変更:2026年の上限価格の引き下げのように、全エリアに同時に影響する
- 単価の全体的な下落:蓄電池の設備量が増えれば、調整力の単価は全国で下がる可能性がある
- 機器に共通する不具合:同じメーカー・型番をそろえると、同じ不具合が全拠点で起こり得る
これらは分散では防げないため、各拠点の収支を単価を下げた前提でも検証しておく必要があります。考え方は収支の下振れの見方をご覧ください。
まとめて持つ場合、手続きで注意することはありますか
接続検討の件数の上限と、補助金の申請件数の上限に注意します。
東京電力パワーグリッドは2026年8月から、高圧・特別高圧の接続検討を1事業者11件までに制限しています。国の補助金も1社2件までです。複数か所を一つの投資計画にまとめると価格交渉の余地が広がる一方、こうした上限があるため、持ち方を特別目的会社に分けるかどうかも含めて計画します。上限の詳細は接続検討の11件上限で解説しています。
分散の効果は、どう確かめればよいのですか
拠点ごとの月次の収入を並べ、同じ月に同じ方向へ動いているかを確かめます。
すべての拠点の収入が同じように上下しているなら、分散の効果は小さく、制度や市場全体の要因に左右されていると考えられます。拠点ごとに異なる動きをしていれば、分散が機能しています。運用委託先ごとの報告の形式をそろえておくと、この比較がしやすくなります。
まとめ
- エリア、市場、運用委託先、運転開始時期の4つの軸で分けると、特定の要因で収入がまとめて減るリスクを下げられます。
- 制度変更、単価の全体的な下落、機器に共通する不具合は、分散しても残ります。
- まとめて持つ場合は、接続検討の件数制限や補助金の申請件数の上限を踏まえて計画します。
高圧・特別高圧の案件は、蓄電所の案件と用地でご紹介しています。
出典
- タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月版)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「2025年度の取引実績について」(2026年6月)
- 東京電力パワーグリッド 約款改定のお知らせ(2026年)
- 環境共創イニシアチブ 系統用蓄電システム等導入支援事業 公募要領(2026年)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。