
この記事では、蓄電所が卸電力市場(JEPX)で昼夜の値差を取って収入を得る仕組みを説明します。なぜ値差が生まれるのか、収入の中でどのような位置づけになるのか、注意したい費用の点が分かります。
スポット価格には昼夜の差がある
日本卸電力取引所(JEPX)では、電力量(kWh)が売買されています。翌日の30分ごとの電気を取引するスポット市場の価格は、時間帯によって大きく変わります。
太陽光発電が多い春や秋の晴れた日の昼は、発電量が増えて電気が余りやすく、価格が下がります。夕方になると太陽光の発電が減る一方で、電気を使う量は大きく減らないため、価格が上がりやすくなります。この昼と夕方の価格の差が、蓄電所にとっての収入の機会になります。
- 昼に充電太陽光が多く価格が安い時間
- ためておく夕方まで電池に保つ
- 夕方に放電需要が残り価格が高い時間
- 値差が収入損失と費用を差し引いた残り
お金とモノの流れ
値差運用では、蓄電所は市場から電気を買い、時間をずらして市場に売ります。蓄電所自身は発電しないため、買った電気をためて売るという取引になります。実際の入札や充放電の計画は、アグリゲーターが市場の動きを見て行います。
入札と充放電の計画はアグリゲーターが担う。
収入の中心ではなく補い
系統用蓄電池の収入の中心は、需給調整市場での待機の対価です。卸電力市場での値差は、需給調整市場で約定しなかった時間の補いとなる副次的な収入と位置づけられます。
値差が大きく開くのは、太陽光が多く、昼に価格が大きく下がる日です。天気や季節によっては値差がほとんど生まれない日もあります。毎日安定して得られる収入ではないため、収支の柱として見込むよりも、需給調整市場の収入を支えるものとして捉えるのが適切です。
値差がそのまま利益になるわけではない
値差運用では、次の費用や損失を差し引いた残りが利益になります。
| 差し引くもの | 内容 |
|---|---|
| 充放電の損失 | 往復で85〜90%程度しか戻らず、失われる分がある |
| 託送料金・賦課金 | 充電の電気にかかる場合がある |
| 発電側課金 | 系統に放電する設備にかかる託送料金の一部 |
| アグリゲーター手数料 | 収益の10%前後が多い |
たとえば昼と夕方の価格差が小さい日は、充放電の損失や費用を差し引くと利益が残らないことがあります。値差運用は「十分な値差がある日に限って行う」運用であり、その判断をアグリゲーターが日々行っています。
需給調整市場との組み合わせ
蓄電池の容量には限りがあるため、需給調整市場で待機するコマと、卸電力市場で値差を取るコマは、同時に最大限使うことはできません。どの時間をどちらに充てるかの組み合わせが、全体の収入を左右します。前日・30分単位で需給調整市場の約定が決まるようになったことで、約定しなかったコマを卸電力市場でどう生かすかという判断も、日々の運用の一部になっています。
低圧と高圧で違いはあるか
値差運用の仕組みは、高圧の蓄電所でも低圧の蓄電所でも同じです。どちらも、収入の中心は需給調整市場で、卸電力市場の値差は補いという位置づけになります。出力49.9kW・容量200kWh前後の低圧蓄電所でも、需給調整市場で約定しなかった時間を卸電力市場でどう生かすかはアグリゲーターが判断します。
試算を受け取ったときの確認点
- 卸電力市場の収入を、需給調整市場とは分けて示しているか
- 値差の前提を、どの時期の価格をもとに置いているか
- 充放電の損失と充電にかかる費用を差し引いているか
- 値差が小さい日を考慮した控えめなケースがあるか
値差の前提が直近の特定の時期だけに基づいていると、季節や天候による変動が十分に反映されないことがあります。複数の時期の価格を踏まえた前提かどうかを確かめると、試算の読み違いを避けやすくなります。値差運用は、うまくいく日とそうでない日の差が大きい運用であることを前提に、全体の収入の中での比重を見ておくことが大切です。
まとめ
- JEPXのスポット価格は、太陽光の多い昼に下がり、夕方に上がる傾向があります。
- 昼に充電し夕方に放電して得る値差は、需給調整市場の補いとなる副次的な収入です。
- 充放電の損失や託送料金、手数料を差し引くため、値差がそのまま利益にはなりません。
- 需給調整市場とどう組み合わせるかが、アグリゲーターの運用の要になります。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。