
2026年10月6日の国の審議会で、低圧の系統用蓄電池の申込みが8月末時点で約2,800件、約13万kWに達したことが報告されました。この記事では、なぜ低圧に申込みが集まったのか、国は何を問題にしているのか、低圧の蓄電所に投資する際に何を確かめればよいのかを整理します。
低圧の蓄電所とは
低圧とは、出力が50kW未満の小規模な蓄電池を指します。40平方メートルほどの土地に設置でき、2,000万円台から保有できる規模です。この小さな蓄電所に、短期間で申込みが集中しています。
なぜ低圧に申込みが集まったのか
2026年度から低圧も需給調整市場の全商品に参加できるようになった。
最も大きな理由は、手続きの軽さです。高圧と低圧の主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 高圧 | 低圧 |
|---|---|---|
| 接続検討 | 必要(3か月) | 経ずに契約申込みに進むのが一般的 |
| 保証金 | 2026年4月から工事費負担金の見込額の10%に引き上げ | 引き上げの対象外 |
| 運転開始までの目安 | ― | おおむね半年から1年 |
加えて、2026年度から低圧の設備も需給調整市場の全商品に参加できるようになりました。49.9kWの蓄電池をアグリゲーターが束ね、一次調整力に入札するという形が整ったことで、申込みが一気に増えました。
国が問題にしていること
分割設置
1つ目は分割設置です。本来は1つの大きな設備であるものを、低圧に分けて申し込むことを指します。高圧の手続きや費用を避けるために、区画を細かく割る動きがあります。
系統用蓄電池は2023年4月から分割設置の規制対象です。判断の目安は次のとおりです。
- 隣り合う区画で、設置者や土地の名義が同じであれば分割と判断されやすい
- 名義は、申込みの年度から遡って1年以内のものも確認される
- 所有者が別でも、土地が実質的に1つの場所と認められれば、分割とされることがある
手続きへの影響
2つ目は、電力会社の手続きへの影響です。低圧は接続検討を経ずに申し込めるため、申込みが急に増えると電力会社の手続きが回らなくなるおそれがあります。
国の審議会での議論
2026年8月の審議会では、低圧にも接続検討や保証金、土地の権利を示す書類の提出を求めるかどうかの検討が始まりました。10月には、名義を遡って確認する期間を1年から5年に延ばす案も議論されています。ただし、10月時点ではいずれもまだ決まっていません。
電力会社の側でも対応が始まっています。東京電力パワーグリッドは2026年5月から、低圧の申込み書類に、系統から充電するかどうかを記入する欄を加えました。低圧の蓄電池を見分けようとする動きと言えます。
低圧に投資する前に確かめること
- 接続契約電力会社との契約が成立しているか
- 価格の中身土地・工事費負担金を含むか
- 名義隣の区画と土地・設備の名義が分かれているか
- アグリゲーター社名と1MWを束ねる見込み
低圧の区画を検討する際は、次の点を順に確認することが重要です。
- 電力会社との接続契約が成立しているか。設備と工事だけの見積りの段階では、その区画が実際に系統につながるかはまだ分かりません。
- 価格に何が含まれているか。土地や工事費負担金が含まれているかを確認します。
- 名義が分かれているか。隣の区画と、土地と設備の名義が分かれているかを確認します。
- アグリゲーターの体制。アグリゲーターの社名と、そのエリアで1メガワットを束ねられる見込みがあるかを確認します。
同じ価格でも、土地と接続契約まで済んだ区画と、設備と工事だけでこれから申し込む区画は、まったく別の商品です。
規制が入ると低圧は遅いのか
規制が強まることは、すでに条件を満たした区画にとっては必ずしも不利ではありません。ルールが変わる前に連系の承諾を得た区画は、それだけで価値が高まります。高圧でも同じことが起きました。手続きの壁が高くなるほど、壁を越えた案件の希少性は上がります。
また、低圧は小さな資金で、エリアや時期を分けて保有できるという特徴があり、調整力の需要も大きい状況です。接続契約まで済んだ区画を選ぶことが、低圧で検討する際の前提になります。
まとめ
- 低圧の系統用蓄電池の申込みは、2026年8月末で約2,800件・約13万kWに達した
- 手続きの軽さと、2026年度からの需給調整市場への参加拡大が申込み増加の背景にある
- 国は分割設置と手続きへの影響を問題視し、接続検討・保証金・名義確認期間5年案などを議論しているが、10月時点では未決定
- 投資前には、接続契約の成立、価格の中身、名義、アグリゲーターの体制を確かめる
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 資料(2026年8月・10月)
- 資源エネルギー庁「発電等設備の分割対策に関するQ&A」(2026年6月)
- 東京電力パワーグリッド 低圧の系統連系技術協議依頼票の改定(2026年5月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。