
3ケースの収支は、単価と約定率という二つの前提を一つずつ変えて、収入がどれだけ動くかを示したものです。読むときは、各ケースで何を変えたかを先に確かめ、費用の前提がそろっているかを確認します。
なぜ収支は1本ではなく3ケースで示されるのですか
将来の単価と約定率は確定しないため、前提を変えた複数の試算で幅を示すのが基本だからです。
低圧蓄電所の売上は「出力×単価×約定したコマ数」で決まります。出力49.9kWは機器で決まりますが、単価と約定率は市場の動きで変わります。一次調整力の上限価格は2026年9月に10.00円に引き下げられ、7.21円までの段階的な引き下げ方針も示されています。上限は「最高でも」の価格であり、その価格で約定するわけではないため、1本の試算だけでは将来の幅が見えません。
3つのケースは、それぞれ何を変えているのですか
スタンダードを基準に、2027年9円のケースは単価を、約定率85%のケースは約定率を変えています。
スタンダード
- 基準となる前提
- 単価と約定率の想定をそのまま置く
- 他のケースの比べる起点
2027年9円
- 単価の前提を変える
- 2027年以降の単価を9円と置く
- 上限価格の引き下げを意識した形
約定率85%
- 約定率の前提を変える
- 入札したコマの85%が約定と置く
- 落札できないコマの影響を見る
ケースの名前は前提の違いを表すもので、起こりやすさの順番ではありません。
読み解くうえで大切なのは、一つのケースで変えている前提が一つだけかどうかです。単価と約定率を同時に変えていると、どちらの影響で収入が変わったのかが分かりません。試算書の前提欄で、ケースごとの違いを一行ずつ確かめます。
収入をいちばん大きく動かすのはどの前提ですか
売上は単価と約定率の掛け算で決まるため、両方とも収入に比例して効きます。
解説ブックの計算例では、約定率90%のまま平均の約定単価を10円から7円にすると、年間売上は約787万円から約551万円に下がります。単価を10円のまま約定率を90%から70%にすると、約612万円になります。単価が1割下がることと、約定率が1割下がることは、売上に対しては同じ割合の影響です。年単位の単価別の売上は単価別の年間売上の記事で整理しています。
| 平均の約定単価 | 年間の売上(約定率90%) | 約定率70%の場合 |
|---|---|---|
| 10円 | 約787万円 | 約612万円 |
| 7円 | 約551万円 | 約428万円 |
| 5円 | 約393万円 | 約306万円 |
計算の例です(49.9kW×17,520コマ×単価×約定率)。見積りや収益の見込みではありません。
費用の前提は、ケースの間でそろっていますか
収入の前提だけを変え、費用の前提は3ケースでそろえているのが読みやすい試算です。
差し引く費用には、アグリゲーター手数料、充電の電力費、保守・監視、保険、固定資産税(償却資産)、地代、劣化と撤去があります。アグリゲーター手数料は収益の10%前後が多く、売上に連動するため、売上が下がるケースでは手数料も下がります。一方で、保守費や保険料は売上が下がっても変わりません。売上が下がったときに固定的な費用がどれだけ残るかを見ると、各ケースの手残りの差が理解しやすくなります。
- 手数料の計算の基礎が「売上」か「運用益」か
- 充電の電力費を年額でいくらと置いているか
- 劣化による容量の低下を、年ごとに反映しているか
- 機器の更新費と撤去費を、どの年に計上しているか
3ケースを読んだあと、何を判断すればよいのですか
判断するのは、最も厳しいケースでも資金繰りが成り立つかどうかです。
スタンダードの数字だけで投資を決めると、単価や約定率が下振れしたときの備えがありません。厳しいケースの年間の手残りが、借入れの返済や他の支出を賄えるかを確かめます。さらに、単価が何円まで下がると回収できなくなるかという「耐えられる単価」を販売会社に尋ねると、ケースの間の幅をより具体的に把握できます。回収年数と内部収益率の読み方は回収年数とIRRの記事にあります。
試算書を受け取ったら、どの順で確認するとよいですか
前提欄、売上、費用、手残りの順で、ケースを横に並べて確認します。
- 前提欄で、ケースごとに変えている項目を確かめる
- 売上の差が、変えた前提の比率どおりになっているかを見る
- 費用の各項目が、3ケースで同じ考え方になっているかを見る
- 投資額に土地と工事費負担金が入っているかを確かめる
- 最も厳しいケースの手残りで、資金繰りを確かめる
まとめ
- 3ケースは、基準のスタンダードから単価または約定率を一つずつ変え、収入の幅を示すものです。
- 売上は単価と約定率の掛け算で決まり、どちらの下振れも同じ割合で売上に効きます。
- 費用の前提がそろっているかを確かめ、最も厳しいケースでも資金繰りが成り立つかで判断します。
出典
- タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月版)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)2025年度取引実績、上限価格に関する公表資料
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。