
一次調整力と三次調整力の違いとは、周波数の変化を設備自身が検知して10秒以内に自動で応じる最も速い調整力か、より長い時間のずれに応じる遅い調整力かという、応動の速さの違いです。蓄電池は指令から1秒以内に出力を変えられるため、一次調整力で強みを発揮します。
一次調整力と三次調整力はどう分かれているのか
需給調整市場の調整力は、応える速さで5つの商品に分かれています。速い順に、一次調整力、二次調整力①、二次調整力②、三次調整力①、三次調整力②です。周波数の揺れには数秒単位の細かいものから、数十分から数時間単位の大きなずれまであり、それぞれに合う調整力を一般送配電事業者が確保しています。5商品の全体は需給調整市場の5つの商品で解説しています。
| 項目 | 一次調整力 | 三次調整力(①・②) |
|---|---|---|
| 応動 | 周波数の変化を自ら検知し10秒以内に自動で応じる | より長い時間のずれに応じる |
| 役割 | 周波数の最初の揺れを打ち消す | 大きなずれを埋める |
| 市場の開設 | 2024年4月に取引開始 | ②は2021年4月、①は2022年4月に開設 |
| 上限価格(2026年9月1日実需給分から) | 10円 | 三次調整力①は7.21円 |
| 低圧の参加 | オフライン枠に束ねて参加するのが中心 | 高圧は商品を組み合わせて入札できる |
一次調整力
- 速さと正確さが価値
- 蓄電池は1秒以内に応動
- 燃料が要らない
- 蓄電池の主戦場
三次調整力
- 応える時間に余裕がある
- より長く出し続ける力が問われる
- 前日・30分単位の取引の対象(①)
- 上限は一次より低い
なぜ蓄電池は一次調整力で強いのか
一次調整力が速さと正確さを評価する商品だからです。蓄電池は燃料が要らず、充電と放電の切り替えも速く行えます。火力発電は燃料を燃やして出力を変えるため、変化の速さには限りがあります。2025年度の一次調整力では、蓄電池の月別平均落札単価が8.82〜13.52円/ΔkW・30分だったのに対し、火力は2.05〜3.39円でした。数字の読み方は蓄電池と火力発電の一次調整力の単価差で説明しています。
どの商品に入るかは誰が決めるのか
どの商品にどの時間に入札するかは、オーナーではなくアグリゲーターが決めます。高圧の蓄電所は複数の商品を組み合わせて入札でき、低圧の蓄電所は一次調整力のオフライン枠に束ねて参加するのが主な役割です。商品によって上限価格が違うため、委託先の運用方針が自分の設備の性能や容量に合っているかを契約前に確かめます。
一次調整力で求められる体制は何か
一次調整力の価値を収入に変えるには、約定した時間に確実に待機・応動できる体制が前提です。アセスメントで評価を満たさなければペナルティがかかります。待機中に放電したあとは、次のコマに備えて充電の量を保つ必要があり、容量に余裕があるほど待機と充電の釣り合いがとりやすくなります。設備の稼働率と通信の安定性も、単価と同じくらい大切な要素です。
よくある誤解は何か
よくある誤解は、蓄電池はどの商品でも有利だという見方です。蓄電池は充電した分しか放電できず、長い時間出し続けることは得意ではありません。また、過去の単価は将来を約束するものではなく、一次などの上限は2026年3月14日に19.51円から15.00円へ、9月1日の実需給分からは10円に引き下げられました。収支は上限より低い単価で組むのが基本です。
まとめ
- 一次調整力は10秒以内に自動で応じる最も速い商品、三次調整力はより長い時間のずれに応じる商品です。
- 蓄電池は1秒以内に応動できるため、一次調整力で強みを発揮します。
- 商品の選択はアグリゲーターが行い、上限価格の違いが収入の見込みに影響します。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(高圧編)
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(低圧編)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)2025年度取引実績(解説ブックでの引用による)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。