
ΔkWとkWhの違いとは、指令に応じて出力を増減できる能力(待機)に払われる対価か、実際に流した電気の量に払われる対価かという、蓄電所の2つの売り物の違いです。系統用蓄電池の収入の中心はΔkWで、kWhの値差は副次的です。
ΔkWとkWhはそれぞれ何を数える単位なのか
ΔkWは出力を出せる状態を、kWhは流れた電気の量を数えます。ΔkW(デルタキロワット)は、いざというときに出力を増やしたり減らしたりできる能力を表し、需給調整市場で商品として取引されます。kWhは電力量の単位で、卸電力市場(JEPX)で売買されます。ΔkWの考え方はΔkW(デルタキロワット)とはで詳しく解説しています。
| 項目 | ΔkW(待機) | kWh(放電した電気) |
|---|---|---|
| 売るもの | 出力を増減できる能力 | 実際に流した電力量 |
| 主な市場 | 需給調整市場 | 卸電力市場(JEPX) |
| お金が出る条件 | 約定した時間に応じられる状態を保つこと | 電気を売ること |
| 放電しなかった時間 | 約定していれば対価が出る | 収入にならない |
| 金額の決まり方 | 出力×単価(円/ΔkW・30分)×約定したコマ数 | 値差から損失と費用を差し引いた残り |
| 位置づけ | 収入の中心 | 約定しなかった時間の補い |
ΔkW(待機)
- 出せる状態そのものが売り物
- 周波数の乱れが小さくても対価
- 応じられなければペナルティ
- 一次調整力などの上限は10円
kWh(放電)
- 昼に充電し夕方に放電
- 値差が開く日に限って行う
- 往復で85〜90%程度しか戻らない
- 託送料金や手数料を差し引く
なぜ待機に対価が払われるのか
電力網は使う量と発電する量を常に一致させないと周波数が乱れるため、すぐに出力を変えられる設備をあらかじめ確保しておく必要があるからです。その確保の対価がΔkWの代金で、買い手は各エリアの一般送配電事業者です。蓄電所は単独ではなく、アグリゲーターを通じて市場に参加するのが一般的です。お金の届き方は需給調整市場で蓄電所オーナーに届くお金の流れで整理しています。
2つの売り物はどう組み合わされるのか
同じ出力を同じ時間にΔkWとkWhの両方に使うことはできません。需給調整市場で約定した時間帯は、その出力を待機に充てているためです。どの時間をどちらに割り当てるかは、運用を受託するアグリゲーターが市場の動きを見て日々判断します。前日・30分単位で約定が決まるため、約定しなかったコマを卸電力市場でどう生かすかも運用の一部です。
試算を読むときはどこを見るのか
収入がΔkWとkWhのどちらを前提にしているかを分けて確かめます。
- ΔkWの単価と約定率の前提、上限価格の改定を反映しているか
- kWhの値差の前提がどの時期の価格にもとづくか
- 充放電の損失と充電にかかる費用を差し引いているか
低圧蓄電所でも売り物は同じなのか
出力49.9kW級の低圧蓄電所でも、収入の中心はΔkWの待機の対価で、kWhの値差は副次的です。低圧蓄電所は一次調整力のオフライン枠に入るのが主な役割で、最低入札量は1MWのため、アグリゲーターが同じエリアの設備を束ねて入札します。どちらの売り物でも、手数料、充電の電力費、ペナルティを差し引いた残りがオーナーの手取りになり、運用月から入金までは数か月かかるのが一般的です。
よくある誤解は何か
よくある誤解は、たくさん放電した蓄電所ほど需給調整市場で多く稼げるという見方です。需給調整市場では、約定した時間にどれだけ放電したかではなく、応じられる状態を保っていたかが問われます。反対に、待機の対価は確実に応じられる体制があってこそ得られるもので、充電の量を保つ計画や設備の保守が欠かせません。
まとめ
- ΔkWは出力を増減できる能力(待機)、kWhは実際に流した電気の量です。
- 需給調整市場は放電しなくても待機に対価が出て、これが収入の中心です。
- 同じ出力を同じ時間に両方へ使えないため、割り当てはアグリゲーターが判断します。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(高圧編)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。