
投資利益率15%の要件は、分母が設備の取得価額であるため、同じ収益でも高く買うほど満たしにくくなります。税制を使う前提ほど、取得価格の妥当性の確認が重要になります。
投資利益率はどのように計算するのですか
営業利益の増加額と減価償却費の年平均を合計し、設備の取得価額で割って求めます。
大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)は、令和8年度の税制改正で創設された制度で、系統用蓄電池を含む設備投資で即時償却または税額控除を選べます。要件の一つが、年平均の投資利益率15%以上の見込みです。
- 分子① 営業利益の増加額売上から手数料・充電費・保守などを差し引いた利益の年平均
- 分子② 減価償却費設備の取得価額を耐用年数で配分した額の年平均
- 分母 設備の取得価額土地・接続の権利・工事費負担金は含まない
(①+②)÷分母が15%以上の見込みであることが要件。
2MW級の売上はどの程度の幅で動くのですか
単価と約定率の組み合わせで、年間売上は数倍の幅で動きます。
需給調整市場の売上は、出力×単価×約定したコマ数で決まります。出力2,000kW、年間17,520コマで計算すると、次のようになります。
| 平均の約定単価 | 約定率90% | 約定率70% |
|---|---|---|
| 10円(2026年9月からの上限) | 約3.15億円 | 約2.45億円 |
| 7円 | 約2.21億円 | 約1.72億円 |
| 5円 | 約1.58億円 | 約1.23億円 |
| 3円 | 約0.95億円 | 約0.74億円 |
計算の例であり、見積りや収益の見込みではありません。実際には商品の組み合わせ、卸電力市場と容量市場の収入、アグリゲーター手数料や充電の電力費で手残りが変わります。
高く買うと要件から遠ざかるのはなぜですか
分子の営業利益は市場の単価で決まり、取得価格を上げても増えないためです。
減価償却費は取得価額に比例して増えますが、営業利益は逆に減価償却費の分だけ減るため、両者を足した分子は取得価格にほとんど左右されません。一方で分母は取得価格そのものです。同じ蓄電所を2割高く買えば、投資利益率はおおむね2割低く出ます。「節税になるから高くてもよい」という考え方は、要件の構造上は逆向きです。
試算ではどの前提を確認すればよいですか
単価・約定率・費用の前提を複数の水準で置き、下振れした場合にも15%を上回るかを確認します。
- 単価が上限価格の改定後(一次調整力などで10.00円/ΔkW・30分)の水準で組み直されているか
- 約定率が90%だけでなく70%程度でも試算されているか
- アグリゲーター手数料(収益の10%前後が多い)、充電の損失、固定資産税などの費用が分子から差し引かれているか
- 分母に土地・接続の権利・工事費負担金を混ぜていないか
費用の項目はアグリゲーター手数料の見方と蓄電所の固定資産税で整理しています。経済産業大臣の確認を受けてから設備を取得する手続きのため、試算は発注前に固める必要があります。適用の可否は顧問税理士と確認してください。
まとめ
- 投資利益率は(営業利益の増加額+減価償却費)の年平均を設備の取得価額で割って求める
- 分子は市場の単価で決まり、取得価格を上げても増えないため、高く買うほど要件を満たしにくい
- 単価と約定率を複数の水準で置き、下振れ時にも15%を上回るかを発注前に確認する
高圧・特別高圧の案件は、蓄電所の案件と用地でご紹介しています。
出典
- 経済産業省 特定生産性向上設備等投資促進税制 申請要領(2026年)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月)
- 本記事の売上表は 2,000kW×17,520コマ×単価×約定率 による計算例
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。