脱炭素経営

カーボンニュートラル税制(CN税制)とは?令和8年度改正後の控除率と計算方法

Takasugi・

この記事は2026年10月時点の情報です。カーボンニュートラル税制(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)は、令和8年度税制改正で特別償却率・税額控除率を見直したうえで適用期限が2年延長されました。現在は、2028年3月31日までに「エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画」の認定を受けることが適用の前提です。2026年4月以降に認定を受ける場合は、特別償却率が30%となり、税額控除率と求められる炭素生産性の向上率も変わっています。

カーボンニュートラル税制は、脱炭素と付加価値向上を両立する設備投資に対して、特別償却または税額控除を認める制度です。この記事では、制度の全体像、令和8年度改正前後の控除率の違い、控除額・償却額の計算方法、新設された「サプライチェーン連携」の特例、手続きの流れを順に解説します。

カーボンニュートラル税制(CN税制)の概要

カーボンニュートラル税制の概要

カーボンニュートラル税制は、産業競争力強化法に基づく「エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画」の認定を受けた事業者が、計画に沿って設備を取得し事業の用に供した場合に、特別償却または税額控除のいずれかを選んで適用できる制度です。経済産業省などの事業所管省庁が計画を認定し、税務上の手続きは確定申告で行います。

制度の基本事項

項目 内容
正式名称 カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(生産工程効率化等設備を取得した場合等の特別償却又は税額控除)
対象税目 法人税・所得税。地方税では、特別償却が法人住民税・法人事業税に、税額控除が中小企業者等の法人住民税に適用されます
対象者 青色申告書を提出する法人(個人事業者は所得税で同様の措置)で、2021年8月2日から2028年3月31日までに計画の認定を受けた事業者
対象資産 認定計画に記載された「生産工程効率化等設備」で、新品のもの
適用期間 計画の認定日から、同日以後3年を経過する日まで
優遇の内容 特別償却または税額控除のいずれかを選択

対象となる設備の考え方

現在の対象は、生産工程などの脱炭素化と付加価値の向上を両立させる「生産工程効率化等設備」です。事業所単位で炭素生産性(付加価値額をエネルギー起源CO2排出量で割った指標)を一定以上向上させる計画の中で導入する設備が対象になります。具体的な設備の範囲や要件は、経済産業省の「申請方法・審査のポイント」で確認できます。

なお、この記事の初版(2023年)では、化合物パワー半導体や定置用リチウムイオン蓄電池などを生産する「需要開拓商品生産設備」も紹介していました。現在の国税庁の解説では、対象資産は生産工程効率化等設備として整理されています。過去の資料を参照する場合は、時点の違いに注意してください。

令和8年度税制改正で変わった控除率

令和8年度税制改正の大綱では、特別償却率と税額控除率を見直したうえで、適用期限を2年延長することとされました。改正後は、どの区分でも特別償却率が30%になり、税額控除率は計画上の炭素生産性向上率に応じて決まります。

中小企業者の場合

炭素生産性向上率 改正後 改正前(現行だった内容)
上位区分 22%以上:特別償却30%または税額控除10% 17%以上:特別償却50%または税額控除14%
下位区分 17%以上22%未満:特別償却30%または税額控除5% 10%以上17%未満:特別償却50%または税額控除10%

中小企業者以外の法人の場合

炭素生産性向上率 改正後 改正前(現行だった内容)
上位区分 25%以上:特別償却30%または税額控除8% 20%以上:特別償却50%または税額控除10%
下位区分 20%以上25%未満:特別償却30%または税額控除3% 15%以上20%未満:特別償却50%または税額控除5%

国税庁の解説(令和8年4月1日現在の法令等)では、2026年3月31日までに認定を受けた事業者については、特別償却率50%と、改正前の税額控除率が適用されると整理されています。すでに認定を受けている計画と、これから申請する計画とでは率が異なるため、どの時点の認定かを確認しておくことが大切です。

また、一定のサプライチェーン連携を実施する中小企業者以外の法人(特定大企業)は、炭素生産性向上率を改正前の算定方法のまま判定したうえで、改正後の特別償却率・税額控除率を適用することとされています(後述)。

税額控除額・特別償却額の計算方法

控除額・償却額は、対象設備の取得価額をもとに計算します。対象となる取得価額の合計には500億円の上限があります。

特別償却限度額

  • 取得価額の合計が500億円以下の場合:特別償却限度額 = 各設備の取得価額 × 特別償却率
  • 取得価額の合計が500億円を超える場合:特別償却限度額 = 500億円 ×(各設備の取得価額 ÷ 取得価額の合計)× 特別償却率

税額控除限度額

  • 取得価額の合計が500億円以下の場合:税額控除限度額 = 各設備の取得価額 × 税額控除率
  • 取得価額の合計が500億円を超える場合:税額控除限度額 = 500億円 ×(各設備の取得価額 ÷ 取得価額の合計)× 税額控除率
  • 税額控除できる金額は、調整前法人税額の20%が上限です(戦略分野国内生産促進税制と併用する事業年度は別の制限があります)。

特別償却は償却を前倒しして課税の繰り延べを図るもの、税額控除は法人税額そのものを減らすものです。どちらが有利かは、当期の利益水準や今後の見通しによって異なります。顧問税理士と試算したうえで選択することをおすすめします。

適用できない事業年度

国税庁の解説では、合併以外の理由による解散の日を含む事業年度、清算中の事業年度のほか、特定生産性向上設備等投資計画の実施期間内の事業年度には適用できないとされています。他の投資促進税制を検討している場合は、適用関係を事前に確認してください。

新設された「サプライチェーン連携」の特例

カーボンニュートラル税制の対象設備と特例

令和8年度改正では、大企業が取引先の中小企業の排出削減を支援する取組を後押しする特例が設けられました。特定大企業(一定のサプライチェーン連携を実施している中小企業者以外の法人)は、炭素生産性向上率を改正前の算定方法で判定できます。

「一定のサプライチェーン連携」とは、特定大企業のサプライチェーン上にある国内の中小企業者(グループ会社を除く。以下「連携企業」)のエネルギー起源CO2排出量の削減を目指す取組で、次の4つをすべて満たすものです。

  1. 連携企業への支援により、連携企業に対する取引量を減らさずに、連携企業の炭素生産性を事業所単位で30%以上向上させる計画を立てること
  2. 連携企業との間で、計画に関する費用負担を行うこと等を明記した一定の合意書を締結していること
  3. 特定大企業に追加の費用負担が発生するもので、連携企業の排出量削減に資する内容であること
  4. 連携企業が自らのエネルギー起源CO2の排出削減量を算定すること

取引先の脱炭素化を求められる中小企業にとっても、発注元と連携して設備更新を進める際の選択肢になります。

カーボンニュートラル税制の手続きの流れ

申請書類のイメージ

税制を利用するには、設備を取得する前に計画の認定を受ける必要があります。おおまかな流れは次のとおりです。

エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画の申請手続きのイメージ

出典:エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画の申請方法・審査のポイント(経済産業省)

  1. 事前相談:計画の開始予定時期のおおむね2か月前までに、事業を所管する省庁に相談します。
  2. 計画の申請:所定の申請書と添付書類を提出します。経済産業省所管の申請は原則としてWEB申請です。
  3. 計画の認定:計画の内容と、導入予定の設備が税制の対象になるかが審査されます。
  4. 設備の取得・稼働:認定後、計画に沿って設備を取得し、事業の用に供します。
  5. 税務申告:設備を事業の用に供した日を含む事業年度の確定申告で、特別償却または税額控除を適用します。
  6. 計画実施中の報告:認定後は、計画の実施状況を所管省庁に報告します。認定計画の実施状況の概要は、経済産業省のホームページ(事業適応計画認定案件)で公表されています。

認定の期限は2028年3月31日です。事前相談から認定までには一定の期間がかかるため、設備の発注時期から逆算して早めに相談を始めることが重要です。

問い合わせ先

計画の認定は、事業を所管する省庁が行います。経済産業省所管の業種では、要件を満たせば地方経済産業局へ申請できる場合があります。食品関連事業者や農林漁業者は、農林水産省も案内資料を公開しています。窓口の一覧や申請様式、Q&Aは、経済産業省の制度ページに掲載されています。

まとめ

脱炭素と環境のイメージ

カーボンニュートラル税制は、令和8年度税制改正で2年延長され、2028年3月31日までの計画認定が対象になりました。一方で、2026年4月以降に認定を受ける計画では、特別償却率が30%となり、税額控除率の引き下げと炭素生産性向上率の基準引き上げが行われています。

  • 対象は、認定計画に記載された生産工程効率化等設備
  • 特別償却と税額控除のいずれかを選択し、税額控除は調整前法人税額の20%が上限
  • 2026年3月31日までの認定分と、それ以降の認定分とで率が異なる
  • 大企業が取引先中小企業の削減を支援する「サプライチェーン連携」の特例が新設

計画の認定が最初の関門になるため、所管省庁への事前相談と、税理士による有利不利の試算を並行して進めると手続きが円滑です。

参考資料

著者のプロフィール

Takasugi
Takasugi
太陽光発電・蓄電池等を専門とする住宅設備会社での勤務歴10年。再エネの専門知識からエネルギー系の株式投資と記事執筆を開始する。エネルギー専門の投資家兼ライターとして独立して7年。過去にNY、ロンドンの移住歴あり、国内・海外メディアを駆使した情報収集が強み。

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