補助金・助成金

SHIFT事業の補助金で進める工場・事業場の脱炭素化|類型・補助率・申請の流れ

福元 惇二・

この記事は2026年10月時点の情報です。環境省のSHIFT事業は、令和7年度補正予算・令和8年度予算で「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)」として実施されています。令和8年度は「省CO2型システムへの改修支援事業」と「DX型CO2削減対策実行支援事業」の2類型で公募が行われ、追加公募(改修支援事業は三次公募、実行支援事業は二次公募)は2026年10月15日正午に締め切られました。2026年10月時点で受付中の公募はありません。

工場や事業場の脱炭素化をどの順番で進めればよいか、設備投資の負担をどう抑えるかは、多くの事業者に共通する課題です。本記事では、SHIFT事業の補助金を使って脱炭素化を進める考え方と、令和8年度の類型・補助率・申請の流れを公式資料に基づいて整理します。

SHIFT事業とは

工場・事業場の脱炭素化のイメージ

SHIFT事業(Support for High-efficiency Installations for Facilities with Targets)は、環境省が工場・事業場の脱炭素化を支援する補助事業です。令和8年度の公募要領では、工場・事業場における電化・燃料転換・熱回収等の省CO2型システムへの改修と、DXシステムを用いた運用改善や効果的な改修設計を支援すると説明されています。執行団体は一般社団法人温室効果ガス審査協会(GAJ)です。

環境省は、先導的な事例を創出し、その知見を広く公表して横展開することを目的に掲げています。採択者の事業概要や排出量・削減量等の情報は、原則として環境省が公表する予定とされています。

事業の背景にある国の削減目標

令和8年度の公募要領では、令和7年2月に閣議決定された改定「地球温暖化対策計画」と、2035年度・2040年度に温室効果ガスを2013年度比でそれぞれ60%、73%削減することを目指す日本のNDC(国が決定する貢献)が、事業の背景として示されています。SHIFT事業は、脱炭素技術等の導入促進によってバリューチェーン全体のCO2排出削減を図り、こうした中長期目標の達成に貢献することを目的としています。

名称と制度の変遷

令和5年度までは「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」の名称で実施されていました。令和7年度補正予算・令和8年度予算では「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業」として実施されており、略称の「SHIFT事業」は引き続き使われています。

令和8年度SHIFT事業の2つの類型

工場からのCO2排出のイメージ

令和8年度のSHIFT事業は、設備・システムを改修する「省CO2型システムへの改修支援事業」と、DXシステムで計測しながら運用改善や改修設計を行う「DX型CO2削減対策実行支援事業」の2類型で構成されています。

類型 主な内容 補助率 補助上限 事業期間
省CO2型システムへの改修支援事業 電化・燃料転換・熱回収等により、工場・事業場単位で15%以上、または主要なシステム系統で30%以上のCO2削減を行う設備導入等 1/3 CO2排出削減量4,000t-CO2/年未満は1億円、4,000t-CO2/年以上は5億円 3カ年以内
DX型CO2削減対策実行支援事業 DXシステムを用いた設備運用改善や、運転管理データに基づく改修設計などのモデル的な取組 3/4 200万円 2カ年以内

省CO2型システムへの改修支援事業

既存の設備機器やシステムを、一定水準以上のCO2排出量を削減する設備・システムへ改修する事業が対象です。令和8年度三次公募の公募要領に示された主な要件は次のとおりです。

  • 基準年度排出量が50t-CO2以上の工場・事業場であること
  • 工場・事業場単位で年間CO2排出量を15%以上、または主要なシステム系統で30%以上削減するCO2削減計画に基づく改修であること
  • CO2削減計画書を策定し、申請時に提出すること
  • 補助事業の投資回収年数が3年以上であること(総事業費÷年間のランニングコスト削減額で計算)
  • 費用対効果が10万円/t-CO2以下であること
  • EEGS(省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム)による排出量報告を行うこと
  • 大企業は、基準年度排出量について第三者検証を受けること(費用は自己負担)

蒸気システム、空調システム、給湯システム、工業炉、CGSについては、電化や燃料転換を伴わない単純な高効率化改修は補助対象外です。たとえば、燃料種が変わらない更新や、LNGから都市ガスへの転換、セントラル空調からパッケージ空調への変更は対象外の例として挙げられています。制御機能付きLED照明は中小企業者のみが対象となり得るなど、設備ごとに条件があります。

補助対象経費は、本工事費、付帯工事費、機械器具費、測量及試験費、設備費です。既存設備の撤去・移設・廃棄費、見える化機器などCO2削減に寄与しない設備の経費、申請手続きに係る経費、第三者検証の経費などは対象外です。連名申請で複数事業所が連携する場合は事業所ごとの上限を合算できますが、事業全体および1実施事業者あたりの上限は10億円です。

DX型CO2削減対策実行支援事業

SHIFT事業に登録された「支援機関」の支援を受けながら、DXシステムで設備の稼働状況やエネルギー使用量を計測し、運用改善や改修計画につなげる事業です。令和8年度二次公募の公募要領に示された主な要件は次のとおりです。

  • 申請者は中小企業基本法第2条に定義される中小企業者(個人・個人事業主を除く)、独立行政法人、学校法人、社会福祉法人、医療法人等であること
  • 年間CO2排出量が50トン以上3,000トン未満の国内の工場・事業場であること(参考年度は令和7年度)
  • DX型支援に対応可能として登録された支援機関の支援を受けること(2者以上から見積もりを取得して選定)
  • DXシステムを導入して計測すること(既存のDXシステムの活用も可)
  • 運用改善等を3つ以上検討し、実施計画に位置付けた対策のうち1つ以上を補助事業期間内に実施すること

申請は1事業者あたり最大5つの工場・事業場まで可能です。同じ支援範囲(支援対象設備機器)で、改修支援事業と併願することはできません。

SHIFT事業を使った脱炭素化の進め方

2つの類型は、工場・事業場の状況に応じて使い分けたり、段階的に組み合わせたりすることができます。公募要領の内容に沿うと、進め方は次のように整理できます。

  1. 排出量の現状を把握する:電気・ガス等の使用量証明書や請求書をもとに、工場・事業場の年間CO2排出量と主要なシステム系統を整理します。
  2. 計測と削減対策の検討を行う:対策の当たりが付いていない場合は、DX型CO2削減対策実行支援事業で支援機関とともに計測し、運用改善や改修設計を検討します。
  3. CO2削減計画を策定する:電化・燃料転換・熱回収等の対策と削減率、投資回収年数、費用対効果を、環境省の「設備更新等によるCO2削減効果の算定ツール」などで算定し、所定様式にまとめます。
  4. 改修支援事業で設備・システムを改修する:削減率の要件を満たす計画であれば、省CO2型システムへの改修支援事業に申請します。過年度のSHIFT事業でCO2削減計画を作成した場合や、支援機関リストに掲載された支援機関の支援を受けて計画を策定した場合は、審査で加点対象となります。
  5. 削減効果を報告する:改修完了後は、EEGSへの排出量登録と、環境省が指定する者への事業報告(3年間)を行います。

申請から補助金受領までの流れ

改修支援事業(令和8年度三次公募)の公募要領では、次のスケジュールが示されていました。申請はJグランツ(電子申請)で行います。

時期 手続き
2026年9月11日 公募開始
2026年10月1日12時/10月15日12時 第1回締切/第2回締切(第1回で要件不備以外の理由で不採択となった場合は、辞退しなければ第2回でも審査)
11月上旬〜下旬 採択者公表
〜12月 交付審査・交付決定(採択から交付決定まで標準的に約30日)
交付決定後 発注・契約による補助事業の開始、事業工程表と月次報告書の提出
2027年2月13日まで 補助事業の完了(複数年度事業も各年度2月13日まで)
完了から30日以内または2月19日の早い方 完了実績報告書の提出
3月下旬まで 交付額確定通知、精算払請求を経て補助金交付

申請前に確認しておきたい注意点

  • 交付決定日より前に発注・契約した経費は補助対象外です。工事業者との契約日は交付決定日以降にする必要があります。
  • 補助金は事業完了後の完了実績報告と確定検査を経て支払われる精算払です。
  • 国の他の補助金の対象経費は含められません。固定価格買取制度(FIT)の設備認定を受けないことも条件です。
  • 補助事業で得たCO2排出削減効果は、一定期間カーボン・クレジットとして登録できません。
  • 改修が完了する年度の翌々年度から3年間、年度ごとにCO2排出削減効果等の事業報告書を提出する義務があります。
  • 単価50万円以上の取得財産は、法定耐用年数の期間、承認なく処分(譲渡・廃棄等)できません。

審査で評価される主な項目

改修支援事業は、申請者と事業の要件を満たした申請の中から、大企業・中小企業・その他法人等の母集団ごとに総合評価で選定されます。公募要領に示された主な審査項目は次のとおりです。

  • CO2排出削減量、CO2排出削減率、費用対効果
  • SBT、TCFD、RE100、エコアクション21、エコファースト、ISO14001などの環境指標への取組
  • 温室効果ガスの削減目標の設定と、デコ活応援団への参画・デコ活宣言
  • 加点項目:電力の低炭素化の実績、過年度SHIFT事業や支援機関の活用による計画策定、脱炭素先行地域での実施、LD-Tech認証製品の導入

DX型CO2削減対策実行支援事業は先着順ではなく、要件を満たす申請について、課題の分析、計測目的、計測範囲、削減対策、実施スケジュールの検討状況も審査したうえで、予算の範囲内で採択されます。

2026年に実施された公募の実績

2026年は、令和7年度補正予算分と令和8年度予算分の公募が行われました。いずれも執行団体は一般社団法人温室効果ガス審査協会です。

公募 公募期間 締切
令和7年度補正予算 2026年3月19日〜6月10日 改修支援事業:一次5月13日12時、二次6月10日12時
実行支援事業:6月10日12時
令和8年度 2026年6月12日〜8月26日 改修支援事業:一次7月15日12時、二次8月26日12時
実行支援事業:8月26日12時
令和8年度 追加公募 2026年9月11日〜10月15日 改修支援事業(三次公募):第1回10月1日12時、第2回10月15日12時
実行支援事業(二次公募):10月15日12時

温室効果ガス審査協会のウェブサイトでは、2026年9月18日に令和8年度改修支援事業(一次公募)の採択者が公表されています。令和9年度(2027年度)以降の実施や公募時期は、2026年10月時点で公表されていません。

過去の実績(令和5年度)との違い

脱炭素化が進んだ街と工場のイメージ

令和5年度のSHIFT事業は、「CO2削減計画策定支援」と「省CO2型設備更新支援」の2つの補助事業で構成されていました。参考として、令和5年度のリーフレットに記載された内容を示します。

令和5年度の補助事業 内容 補助率・補助上限
CO2削減計画策定支援 年間CO2排出量50t以上3,000t未満の工場・事業場を保有する中小企業等に対し、支援機関がCO2削減余地の診断と「CO2削減計画」の策定を支援 3/4、補助上限50〜100万円(DX型計画策定支援は100万円増額)
省CO2型設備更新支援 「CO2削減計画」に基づく設備更新を支援 A.標準事業:1/3、上限1億円
B.大規模電化・燃料転換事業:1/3、上限5億円
C.中小企業事業:CO2削減量比例型、上限0.5億円

令和5年度の公募期間は、CO2削減計画策定支援が令和5年5月15日〜7月14日、省CO2型設備更新支援が令和5年5月15日〜6月15日でした。令和8年度は、計画策定支援に代わってDXシステムによる計測と運用改善を重視する実行支援事業が置かれ、設備側も「設備更新」から電化・燃料転換・熱回収等による「システムへの改修」に重点が移っています。単純な高効率化改修が一部の設備で対象外となった点も大きな違いです。

SHIFT事業に関する用語

用語 説明
主要なシステム系統 工場・事業場のシステム系統のうち、エネルギー、経費、生産活動の面で事業者が主要と考える系統。定義しない場合は工場・事業場全体が対象になります。
自主的対策 補助金を使わずに実施するCO2削減対策(補助対象外経費での太陽光発電設備の導入、既存設備の改造など)。削減量に加える場合は上限があります。
EEGS 省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム。SHIFT事業ではCO2排出量の登録・報告に使います。
サプライチェーン 原材料の調達から販売に至るまでの一連の流れ。自社だけでなく取引先をまたいでモノの流れを捉える考え方です。
Scope3(スコープ3) 自社の直接排出(Scope1)とエネルギー起源の間接排出(Scope2)以外の、事業活動に関連する他社の排出量です。
カーボンニュートラル 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、排出量を実質的にゼロにすることです。

よくある質問

SHIFT補助金とは何ですか。

環境省のSHIFT事業で交付される補助金の通称です。令和8年度は「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業」として、省CO2型システムへの改修支援事業(補助率1/3)とDX型CO2削減対策実行支援事業(補助率3/4)の2類型で実施されています。

大企業も申請できますか。

省CO2型システムへの改修支援事業は、民間企業(個人・個人事業主を除く)などが申請でき、大企業も対象です。ただし大企業は基準年度排出量の第三者検証が必要です。DX型CO2削減対策実行支援事業の民間企業の申請者は中小企業者に限られます。

今から申請できますか。

令和8年度の追加公募は2026年10月15日正午に締め切られており、2026年10月時点で受付中の公募はありません。次回の公募情報は、環境省と温室効果ガス審査協会のウェブサイトで確認してください。

まとめ

SHIFT事業は、工場・事業場の脱炭素化を「計測と計画」と「設備・システムの改修」の両面から支援する環境省の補助事業です。令和8年度は、DX型CO2削減対策実行支援事業(補助率3/4・上限200万円)と省CO2型システムへの改修支援事業(補助率1/3・上限1億円または5億円)の2類型で公募が行われました。

改修支援事業では削減率、投資回収年数、費用対効果などの要件を満たすCO2削減計画が必要です。次の公募に備えて、排出量の把握と削減計画の検討を早めに進めておくことが、制度を活用するうえでの準備になります。

参考資料

著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。

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