この記事は2026年10月時点の情報です。環境省のSHIFT事業は、令和8年度は「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)」という名称で実施されています。令和8年度の公募は、6月12日に開始された一次・二次公募と、9月11日に開始された追加公募(改修支援事業の三次公募、DX型実行支援事業の二次公募)がいずれも2026年10月15日正午に締め切られました。執行団体の一般社団法人温室効果ガス審査協会は10月8日付で問い合わせ受付を終了しており、再開する場合はホームページで知らせるとしています。
本記事では、工場や事業場で脱炭素化に取り組みたい製造業などの事業者に向けて、SHIFT事業の仕組み、令和8年度の補助内容と要件、申請の流れを整理します。次年度以降の公募に備える際の参考にしてください。
SHIFT事業とは

SHIFT事業は、工場・事業場における電化・燃料転換・熱回収などによる省CO2型システムへの改修や、DXシステムを用いた運用改善・改修設計を支援する環境省の補助事業です。支援で得られた知見を普及させ、工場・事業場の省CO2化を広げることも目的とされています。
事業の背景
令和8年度の公募要領では、令和7年2月に改定された地球温暖化対策計画と、同日に国連に提出された新たな「日本のNDC(国が決定する貢献)」が背景として示されています。NDCでは、温室効果ガスを2013年度から2035年度に60%、2040年度に73%削減することを目指すとしています。SHIFT事業は、脱炭素技術等の導入促進によってバリューチェーン全体のCO2排出削減を図り、こうした中長期目標の達成に貢献することを目的としています。
令和8年度の事業区分
| 区分 | 内容 | 補助率 | 補助上限 | 補助期間 |
|---|---|---|---|---|
| 省CO2型システムへの改修支援事業(改修支援事業) | 電化・燃料転換・熱回収等により、工場・事業場単位で15%以上、または主要なシステム系統で30%以上CO2を削減する設備導入等 | 1/3 | CO2排出削減量4,000t-CO2/年未満:1億円 4,000t-CO2/年以上:5億円 |
3か年以内 |
| DX型CO2削減対策実行支援事業(実行支援事業) | DXシステムを用いた設備の運用改善や、運転管理データに基づく効果的な改修設計などのモデル的な取組 | 3/4 | 200万円 | 2か年以内 |
改修支援事業の上限は、同一年度で1実施事業者あたり1億円または5億円です。連名申請で複数事業所が連携する場合は事業所ごとの上限を合算できますが、事業全体および1実施事業者の上限は10億円です。
申請できる事業者

改修支援事業
代表事業者(補助対象設備の所有者)と共同事業者が申請者となります。次のいずれかに該当する本邦法人・団体が対象です。
- 民間企業(個人、個人事業主を除く)
- 独立行政法人、地方独立行政法人
- 国立大学法人、公立大学法人、学校法人
- 社会福祉法人、医療法人
- 特別法の規定に基づき設立された協同組合等
- 一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人
- その他環境大臣の承認を得て協会が適当と認める者
- 地方公共団体(上記のいずれかと建物を共同所有し、共同事業者として申請する場合に限る)
あわせて、補助事業に必要な経理的基礎を有すること、直近2期の決算で連続の債務超過(純資産が2期連続マイナス)がないこと、暴力団排除に関する誓約ができることなどが求められます。工場・事業場の所有者と設備の所有者が異なる場合や、ESCO・リースを活用する場合は共同申請が必要です。
DX型CO2削減対策実行支援事業
中小企業基本法に定める中小企業者(個人、個人事業主を除く)が対象です。年間CO2排出量が50トン以上3,000トン未満の国内の工場・事業場であること、DX型支援に対応可能として登録された支援機関の支援を受けること、DXシステムを導入して計測すること(既存システムの活用を含む)が要件です。事業者は、支援機関リストから2者以上に見積もりを依頼して支援機関を選定します。
改修支援事業の主な要件
改修支援事業では、次の要件をすべて満たす必要があります(令和8年度三次公募の公募要領より抜粋)。
- 基準年度排出量が50t-CO2以上の工場・事業場で、工場・事業場単位で年間CO2排出量を15%以上、または主要なシステム系統で30%以上削減するCO2削減計画に基づく改修であること
- 「補助対象設備に追加して行うCO2削減対策」または「自主的対策の検討」を実施すること
- CO2削減計画書を策定し、申請時に提出すること
- CO2削減効果とランニングコスト削減効果を定量的に把握できること
- 投資回収年数が3年以上であること
- 費用対効果が10万円/t-CO2以下であること
- 省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)による排出量報告を行うこと
- 大企業は、基準年度排出量について第三者検証を受けること
CO2削減効果は、環境省の「設備更新等によるCO2削減効果の算定ツール」で算定します。自主的対策による削減量を加える場合は、補助対象設備による削減量以下、かつ工場・事業場の基準年度排出量の5%以下・主要なシステム系統の基準年度排出量の10%以下という上限があります。
補助対象となる設備

対象となるもの
- エネルギー使用設備機器:CO2排出削減に寄与する高効率化、電化・燃料低炭素化した産業・業務用設備機器や生産設備。廃エネルギーを利用するものも対象です。
- 低炭素燃料供給設備・受変電設備:電化や燃料転換を伴うエネルギー使用設備機器の付属設備として導入する場合など
- 再生可能エネルギー発電設備・熱供給設備(太陽光発電設備を除く):エネルギー使用設備機器を1つ以上導入し、100%自家消費であることなどが条件
- コジェネレーション発電設備:発生した電力・熱が100%自家消費であることが条件
- 照明設備:中小企業者のみ対象。制御機能付きLED照明に限り、エネルギー使用設備機器と併せて導入する場合
対象とならないもの
- 蒸気・空調・給湯システム、工業炉、コジェネレーションの単純な高効率化(電化・燃料転換を伴わない更新)
- 太陽光発電システム、蓄電池
- インバータ、BEMS、FEMS(単独で導入する場合)
- 予備機、非常用設備、中古設備、車両、建物
- 故障した設備の改修や、単なる機能回復
例えば、LNGから都市ガスへの燃料転換は排出係数が変わらないため、セントラル空調からパッケージ空調への変更も燃料種が変わらないため、補助対象外とされています。
審査で見られる項目
改修支援事業では、申請者要件と改修要件を満たしたうえで、次の項目に基づき大企業・中小企業・その他法人等の母集団ごとに総合評価されます。
| 区分 | 主な審査項目 |
|---|---|
| 基礎的な審査項目 | CO2排出削減量、CO2排出削減率、費用対効果、環境指標(SBT、TCFD、RE100、エコアクション21、ISO14001など)への批准、温室効果ガスの削減目標の設定と「デコ活」応援団への参画・デコ活宣言 |
| 加点評価 | 電力低炭素化の取組実績、過年度SHIFT事業での計画策定や支援機関による支援、脱炭素先行地域での実施、環境省LD-Tech認証製品の導入 |
申請から事業完了後までの流れ
- CO2排出量計算書・CO2削減計画書の作成(設備ごとの削減効果を算定)
- 公募期間内に交付申請
- 審査・採択、交付決定
- 交付決定後に発注・設備導入(1〜3年)
- 完了実績報告(EEGSへの排出量登録の写しを提出)
- 補助金の交付
- 改修が完了する年度の翌々年度から3年間、CO2排出削減効果等の事業報告書を提出
交付決定の通知前に発注した経費は、原則として補助対象になりません。虚偽の申請などで交付決定が取り消された場合は、年10.95%の加算金を加えて返還する必要があります。また、補助事業で得たCO2排出削減効果は、一定期間カーボン・クレジットとして登録できません。
過去の実績(令和5年度までの事業メニュー)
令和5年度のSHIFT事業(当時の名称は「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」)は、次の4メニューで構成されていました。現在の制度とは区分・要件が異なるため、参考情報として扱ってください。
- CO2削減計画策定支援(補助率3/4、上限100万円。DX型計画は上限200万円)
- 省CO2型設備更新支援(A.標準事業:1/3・上限1億円、B.大規模電化・燃料転換事業:1/3・上限5億円、C.中小企業事業:上限0.5億円)
- 企業間連携先進モデル支援
- 補助事業の運営支援(委託)
令和8年度は計画策定支援のメニューはなく、中小企業向けの小規模な支援としてDX型CO2削減対策実行支援事業が設けられています。設備更新支援は電化・燃料転換・熱回収等を中心とした「省CO2型システムへの改修支援事業」に整理されています。また、サプライヤーと連携した取組は、別事業の「Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業」として予算化されています。
事例:令和4年度SHIFT事業事例集から
環境省の「令和4年度 SHIFT事業事例集」には、設備更新補助事業の活用例が掲載されています。数値は事例集に記載された計画値です。
日本食品化工株式会社 富士工場(食料品製造業)
C重油焚きの蒸気ボイラータービン発電設備(30年以上稼働)を、都市ガス焚きのガスタービンコージェネレーション等に燃料転換する事業です(補助金額10,000万円)。高効率LED照明・高効率空気圧縮機・太陽光発電設備の導入を自主的対策として組み合わせ、事業場全体の排出量を176,438t-CO2/年から136,164t-CO2/年へ、22.8%削減する計画とされています。
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター(医療業)
A重油を使う蒸気ボイラーと組み合わせた吸収式冷凍機(30年経過)を、高効率なビル用・業務用マルチエアコンに更新する事業です。集中コントローラーによる運用改善を自主的対策とし、事業場全体で7.6%、空調の主要システム系統で46.5%の削減、エネルギーコスト削減額は約430万円/年と示されています。
SHIFT事業以外の相談先・関連制度
- 中小企業・小規模事業者は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「カーボンニュートラルに関する相談」を利用できます。
- 環境省の令和8年度予算には、SHIFT事業のほかにも「Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業」など、工場・事業場の脱炭素化に関わる事業が掲載されています(脱炭素化支援事業 事業概要 合本版)。
よくある質問
SHIFT事業とはどのような制度ですか?
工場・事業場のCO2排出削減に取り組む事業者に対し、電化・燃料転換・熱回収等による省CO2型システムへの改修(補助率1/3)や、DXシステムを用いた運用改善・改修設計(補助率3/4)を補助する環境省の制度です。
令和8年度の公募はまだ申請できますか?
2026年10月時点では、令和8年度の公募はすべて締め切られています。追加の公募がある場合は、執行団体の温室効果ガス審査協会のホームページで告知されます。
太陽光発電や蓄電池は補助の対象になりますか?
改修支援事業では、太陽光発電システムと蓄電池は補助対象外です。太陽光発電による削減は、補助対象外経費で導入する自主的対策として削減量に加えることができます(上限あり)。
改修支援事業の補助上限はいくらですか?
CO2排出削減量が4,000t-CO2/年未満の場合は1億円、4,000t-CO2/年以上の場合は5億円です。補助率はCO2排出削減量にかかわらず1/3以内です。
まとめ
SHIFT事業は、工場・事業場の電化・燃料転換・熱回収などによる省CO2化を支援する環境省の補助事業です。令和8年度は、改修支援事業(補助率1/3、上限1億円または5億円)とDX型CO2削減対策実行支援事業(補助率3/4、上限200万円)の2区分で公募が行われ、2026年10月15日までにすべて締め切られました。申請にはCO2削減計画の作成や15%・30%の削減要件、投資回収年数・費用対効果の要件があるため、次の公募に備えて、自社の排出量の把握と削減計画の検討を早めに進めておくことが有効です。
SHIFT事業に関する用語
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 基準年度排出量 | 改修前の工場・事業場のエネルギー起源CO2排出量。令和8年度は直近3年間(令和5〜7年度)の平均値または令和7年度の値を用います。 |
| 主要なシステム系統 | 工場・事業場のシステム系統のうち、エネルギー・経費・生産活動の面で事業者が主要と考える系統(例:空調システム)。 |
| 自主的対策 | 補助対象外経費で実施するCO2削減対策。削減量に加える場合は上限があり、完了時に実績の報告が必要です。 |
| EEGS | 省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム。SHIFT事業では排出量の登録と写しの提出が求められます。 |
参考資料
- 環境省 報道発表「令和8年度 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)の公募について」
- 環境省 報道発表「令和8年度 SHIFT事業(三次公募)の公募について」
- 一般社団法人温室効果ガス審査協会「SHIFT事業」
- 一般社団法人温室効果ガス審査協会「公募・交付関連資料(令和8年度)」
- 省CO2型システムへの改修支援事業 三次公募 公募要領(令和8年9月)
- DX型CO2削減対策実行支援事業 二次公募 公募要領(令和8年度)
- 環境省「脱炭素化支援事業 事業概要(合本版)令和8年度予算」
- 環境省「設備更新等によるCO2削減効果の算定ツール」
- CO2削減計画策定支援 公募要領(令和5年度)
- 環境省「令和4年度 SHIFT事業事例集」
- 中小企業基盤整備機構「カーボンニュートラルに関する相談」
著者のプロフィール

- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。
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