この記事は2026年10月時点の情報です。既存の住宅や建築物の省エネ改修を支援する国の制度は、現在「住宅・建築物省エネ等改修推進事業」として令和8年度も実施されています。国は地方公共団体を通じて補助する仕組みのため、実際の申請先はお住まいや建物のある自治体の補助制度です。東京都では、令和8年度に住宅向けの「既存住宅省エネ診断・設計等支援事業」と、中小企業等向けの「既存非住宅省エネ改修促進事業」の申請を受け付けています(いずれも令和9年3月31日まで、予算額に達した時点で終了)。
本記事では、個人の住宅所有者と法人の建物所有者のどちらも使える省エネ改修の補助について、国の制度の仕組み、東京都を例にした補助内容、改修による効果、申請時の注意点を説明します。
住宅・建築物省エネ等改修推進事業とは
住宅・建築物省エネ等改修推進事業は、住宅・建築物のカーボンニュートラルの実現に向けて、既存住宅・建築物の省エネ改修を進めるための国土交通省の支援制度です。令和5年度は「住宅・建築物省エネ改修推進事業」という名称で、省エネ診断・設計・改修をパッケージで支援する形が整えられました。令和8年度は、省エネ改修に加えて、長寿命化や子育て、防犯など地域の課題解決に向けた既存住宅の改修への支援も強化されています。
令和8年度の予算は「社会資本整備総合交付金等の内数」とされています。国が直接個人や企業に補助するのではなく、地方公共団体が設ける補助制度に国が上乗せする仕組みです。このため、自分の住宅や建物がある自治体に対応する補助制度があるかどうかを、まず確認する必要があります。
国の交付額(令和8年度)
国土交通省住宅局の令和8年度予算概要では、省エネ型の交付額が次のとおり示されています。
| 区分 | 対象 | 交付額・補助割合 |
|---|---|---|
| 住宅(省エネ型) | 省エネ診断 | 民間実施の場合、国と地方で2/3(民間1/3) |
| 住宅(省エネ型) | 設計・改修 | 省エネ基準:300,000円/戸(交付対象費用の4割が限度) ZEH水準:700,000円/戸(交付対象費用の8割が限度) |
| 建築物(省エネ型) | 省エネ診断・設計 | 民間実施の場合、国と地方で2/3(民間1/3) |
| 建築物(省エネ型) | 改修 | 民間実施の場合、国と地方で23%(民間77%) 限度額:省エネ基準 5,600円/㎡ |
非住宅のZEBレベルの限度額は、国土交通省の令和7年度の事業ページで9,600円/㎡と示されています。このほか、インスペクションや維持保全計画の作成などを伴う「性能向上型」の改修(評価基準800,000円/戸、認定基準1,600,000円/戸、三世代同居・子育て世帯等・既存住宅購入の場合は500,000円/戸加算)も設けられています。
対象となる工事の主な条件
- 対象は、省エネ基準または ZEH水準(非住宅は ZEB水準)に適合させる改修で、省エネ診断・設計・改修の費用です。
- 設備の効率化に係る工事は、開口部・躯体等の断熱化工事と併せて実施するものに限られます(住宅は断熱化工事と同額以下)。
- 改修後に耐震性が確保されていること(計画的な耐震化を行うものを含む)が必要です。
- 省エネ基準適合義務の施行後に新築された住宅・建築物(またはその部分)は、ZEH・ZEBレベルへの改修のみが対象です。
- 令和8年度は、レジリエンス性能の確保、雪害対策、防犯対策など、地方公共団体の住生活基本計画に位置付けられた課題に対応する「特定課題対応リフォーム」の費用も、省エネ改修と併せて実施する場合に対象に含まれます。
東京都の例(令和8年度)
国の制度を活用した自治体の補助の例として、東京都の制度を紹介します。都の制度は、住宅向けと非住宅向けで窓口と内容が異なります。
住宅向け:東京都既存住宅省エネ診断・設計等支援事業
都内の民間の既存住宅を対象に、省エネ診断と省エネ設計等の費用の一部を補助する制度です。窓口は東京都住宅政策本部です。なお、窓・壁等の断熱改修や設備の高効率化といった省エネ改修工事そのものは、この事業の補助対象外です。改修工事については、国の住宅省エネ2026キャンペーン(みらいエコ住宅2026事業、先進的窓リノベ2026事業など)や、東京都環境局の「既存住宅における省エネ改修促進事業」、区市町村の補助制度が案内されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象者 | 住宅の所有者(個人・法人を問わない。共同住宅の区分所有者を含む)、共同住宅等の管理組合 |
| 対象住宅 | 都内に存する民間の既存住宅(一戸建て、長屋、共同住宅、下宿、寄宿舎) |
| 交付申請の受付期間 | 令和8年4月1日から令和9年3月31日まで(予算額に達した時点で終了) |
| 区分 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 省エネ診断 | 対象経費の2/3 | 210,000円/戸 |
| 省エネ設計等(省エネ基準に適合する場合) | 対象経費の2/5 | 180,000円/戸 |
| 省エネ設計等(ZEH水準に適合する場合) | 対象経費の4/5 | 360,000円/戸 |
同一の住宅について、省エネ診断と省エネ設計等はそれぞれ原則1回が限度です。また、募集要項では、区市町村による実施体制が整った場合は区市町村が事業を行うこととされています。
非住宅向け:東京都既存非住宅省エネ改修促進事業補助金
中小企業等が都内で所有する事務所などの既存非住宅について、省エネ診断、省エネ設計等、省エネ改修の費用の一部を補助する制度です。大企業(みなし大企業を含む)は対象外です。令和8年度の交付申請は、令和8年4月1日から令和9年3月31日まで、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターで受け付けています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象者 | 中小企業者(中小企業者・中小企業団体・中小企業等協同組合)、個人事業主、学校法人、一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人・公益財団法人・特定非営利活動法人、医療法人、社会福祉法人、これらに準ずるものとして都が適当と認めるもの。これらと共同で実施するリース事業者・ESCO事業者等も対象 |
| 対象建築物 | 住宅以外の建築物またはその部分で、申請者が都内で所有し、延べ面積10,000㎡以下のもの。省エネ改修の場合は耐震性の確保が必要 |
| 対象となる改修 | 開口部・躯体等の断熱改修と、それと併せて行う空調・換気・照明・給湯・昇降機等の効率化。全体改修だけでなく部分改修も対象。太陽光発電設備等の創エネ設備は対象外 |
交付額は、補助率による額と上限額のいずれか低い額です。令和7年度の募集要領では次のとおりとされていました。令和8年度の金額は、最新の募集要領で確認してください。
| 補助事業 | 補助率 | 上限額(令和7年度募集要領) |
|---|---|---|
| 省エネ診断 | 対象経費の2/3 | ― |
| 省エネ設計等 | 対象経費の2/3 | ― |
| 省エネ改修(全体改修) | 対象経費の23% | 省エネ基準相当:建物全体の床面積×5,600円/㎡ ZEB水準相当:建物全体の床面積×9,600円/㎡ |
| 省エネ改修(部分改修) | 対象経費の23% | 省エネ基準相当:改修部分の床面積×5,600円/㎡ ZEB水準相当:改修部分の床面積×9,600円/㎡ |
部分改修が対象になるため、テナントビルで区画ごとに改修する場合にも使いやすい制度です。建物全体が省エネ基準に適合していることが既に確認されている場合は、ZEB水準相当まで性能を高める部分改修が対象となります。
申請から補助金受領までの流れ
東京都の住宅向け・非住宅向けの制度は、おおむね次の流れで進みます。
- 事前相談(任意。非住宅は東京都防災・建築まちづくりセンターで受付)
- 見積もり取得、申請書類の作成
- 交付申請(窓口・郵送のほか、非住宅はJグランツによる電子申請も可能)
- 審査・交付決定
- 契約締結、診断・設計・改修の実施
- 完了実績報告
- 審査・補助金額の確定
- 請求
- 補助金の支払い
交付決定の前に契約を締結した場合、補助金は交付されません。また、事業が複数年度にわたる場合は、初年度の交付申請と同時に全体設計(一括設計審査)の承認申請が必要です。
省エネ改修で期待できる効果
断熱性能の向上
窓などの開口部や、外壁・屋根などの躯体を断熱化すると、外気の熱が室内に伝わりにくくなり、室内の熱も逃げにくくなります。冷暖房の負荷が下がるため、エネルギー消費の削減につながります。国の制度でも都の制度でも、断熱改修が補助の中心に位置付けられています。
設備の効率化
断熱改修と併せて、空調、換気、照明、給湯などの設備を高効率なものに更新することで、さらにエネルギー消費を抑えられます。ただし、補助制度では設備の効率化は断熱改修と併せて行うことが条件とされているため、設備更新だけを行う場合は対象になりません。
省エネ性能の見える化
改修の前後で省エネ性能を評価する方法として、国土交通省の指針に基づく第三者認証制度「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」があります。東京都の制度では、BELSの評価取得に要する費用も診断・設計の対象経費に含まれています。改修による性能の変化を客観的に示せるため、所有者やテナントへの説明にも活用できます。
補助金を活用するときの注意点
- 国の制度は自治体の補助制度を通じて利用するため、自治体ごとに対象者・補助額・受付期間が異なります。まずは自治体の住宅・建築担当窓口で確認してください。
- 東京都の制度はいずれも予算額に達した時点で受付を終了します。申請書類に不備があると受付されず、書類がすべて揃った日が受付日となるため、余裕をもって準備することが大切です。
- 交付決定の前に契約・着手すると補助の対象外になります。
- 国の他の補助制度と対象経費が重複しないよう、併用の可否を事前に確認してください。
よくある質問
住宅の省エネ改修とは何ですか?
窓や外壁・屋根などの断熱化と、それと併せて行う空調・給湯・照明などの設備の効率化によって、住宅のエネルギー消費を減らす改修のことです。補助制度では、改修後に省エネ基準やZEH水準を満たすことが求められます。
個人でも法人でも利用できますか?
国の制度は住宅・非住宅の両方を対象としており、所有者が個人か法人かは制度ごとに定められています。東京都の住宅向け制度は個人・法人を問わず住宅の所有者が対象で、非住宅向け制度は中小企業者や個人事業主、医療法人などが対象(大企業は対象外)です。
東京都の住宅向け制度で改修工事費も補助されますか?
令和8年度の東京都既存住宅省エネ診断・設計等支援事業は、省エネ診断と省エネ設計等が対象で、改修工事は対象外です。改修工事には、国の住宅省エネ2026キャンペーンや東京都環境局、区市町村の制度の利用を検討してください。
まとめ
既存住宅・建築物の省エネ改修は、国の住宅・建築物省エネ等改修推進事業と、それを活用した自治体の補助制度によって支援されています。令和8年度の国の交付額は、住宅の設計・改修で省エネ基準300,000円/戸、ZEH水準700,000円/戸、非住宅の改修で23%(省エネ基準5,600円/㎡が限度)です。東京都では、住宅の省エネ診断・設計と、中小企業等が所有する非住宅の診断・設計・改修を補助しています。申請は交付決定前の契約が認められないなど手順が決まっているため、自治体の募集要項を確認したうえで計画的に進めてください。
省エネ改修補助に関する用語
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 省エネ基準 | 建築物省エネ法に規定する建築物エネルギー消費性能基準。東京都の住宅向け制度では、UA値0.87以下・BEI1.0以下を概要として示しています。 |
| ZEH水準 | 断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6の基準を満たす住宅の省エネ性能の水準。 |
| ZEB水準 | 再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量が、省エネ基準の基準値から用途に応じて30%または40%(300㎡未満の小規模建築物は20%)削減となる非住宅の省エネ性能の水準。 |
| 省エネ診断 | 設計図や現地調査で現状の省エネ性能を把握し、改修の方向性や改修後のメリットを検討・提案すること。 |
| BELS | 国土交通省の指針に基づく建築物省エネルギー性能表示の第三者認証制度。建物全体だけでなく部分での評価もできます。 |
参考資料
- 国土交通省住宅局「令和8年度 住宅局関係予算概要」(住宅・建築物省エネ等改修推進事業)
- 国土交通省「住宅・建築物省エネ等改修推進事業」(令和7年度 支援事業一覧)
- 国土交通省「住宅:予算関係」
- 東京都住宅政策本部「令和8年度 東京都既存住宅省エネ診断・設計等支援事業」
- 東京都住宅政策本部「令和8年度東京都既存住宅省エネ診断・設計等支援事業 募集要項」(PDF)
- 東京都都市整備局「東京都既存非住宅省エネ改修促進事業補助金」
- 東京都「令和7年度 東京都既存非住宅省エネ改修促進事業補助金 募集要領」(PDF)
- 国土交通省「建築物省エネ法の表示制度」
著者のプロフィール
- 株式会社タンソーマンGXのメディア編集長です!日々、脱炭素に関わる情報を発信しています♪
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