電気代やガソリン代の高騰により、ランニングコストを削減したい企業も多いでしょう。
そのような企業は、省エネ設備の導入によるコスト削減がおすすめです。

省エネ設備の導入は消費エネルギーを抑制し、電気代やガス代などのコスト削減につながるためです。
補助金の制度を活用して、エネルギー使用量を半分以下にした企業も多くあります。

本記事では省エネ設備のメリットや導入事例、補助金申請の手続き、注意点を紹介します。

省エネ設備導入のメリットと補助金

温暖化の影響により世界では、海面上昇や異常気象が頻発すると予想されています。
その温暖化の主な要因は、二酸化炭素に代表される温室効果ガスです。

温暖化抑制に向けた世界的な脱炭素への意識の高まりから、日本では2050年のカーボンニュートラルを宣言しています。
実現のために2030年の温室効果ガス排出量の目標は、2013年比で46%の削減を目指しています。

目標達成のために省エネ設備の導入を推進しており、補助金による支援も行っています。

中小企業にとって補助金制度は、設備を入れ替えるチャンスといえるでしょう。

省エネ設備を導入するメリットは3つです。

  • エネルギーコスト削減と環境負荷軽減
  • 補助金活用で導入負担軽減
  • 企業のイメージ向上と業務効率化

設備の更新を検討している企業に向けて、各メリットを解説します。

エネルギーコスト削減と環境負荷軽減

省エネ設備を導入すると、エネルギーコストの削減や環境負荷の軽減が期待できます。

省エネ設備はエネルギーを効率的に使えるため、従来の設備よりもエネルギーの使用量を抑えられるためです。

エネルギーを生み出すには、多くの場合で環境に負荷を与えます。
例えば火力発電所は、石炭を燃やして発生する熱を電気に変えますが、代わりに二酸化炭素が排出されます。

省エネ設備の導入は二酸化炭素の排出量の削減につながるので、地球環境にもメリットがあるのです。

補助金活用で導入負担軽減

省エネ設備の導入には、活用できる補助金制度があります。

例えば、経済産業省が実施している「省エネルギー投資促進支援事業」では、設備費の1/3以内の補助金が支給されます。

事業者にとって、新たな設備の導入費用が抑えられるのはメリットです。

企業のイメージ向上と業務効率化

省エネ設備を導入すると、企業のイメージ向上が期待できます。
二酸化炭素排出量の削減は、社会問題に取り組んでいると一般消費者や取引先にアピールできるためです。

省エネ設備は、従来の設備よりも新しい技術の導入や、生産性を高められる工夫がされています。
そのため、省エネ設備で業務効率が向上するのもメリットです。

近年、ESG投資と呼ばれる環境問題や社会問題に取り組む企業に対して、優先的に投資する手法も一般的な投資方法となりました。

省エネ設備の導入は、企業価値を高めるのにも有効な手法といえます。

中小企業向け省エネ設備の具体例

中小企業の担当者で、「省エネ設備の導入は大企業にしか効果がない」と考えている人はいませんか。

実際には多くの中小企業が補助金を活用し、省エネ設備を導入しています。
例えば、令和2年度の「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」で採択された中小企業は1,063事業者です。

具体的な中小企業向けの省エネ設備は3つあります。

  • 照明設備のLED化
  • 高効率空調
  • 加湿器やボイラー

それぞれの設備について詳しく解説します。

参照:SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|成果報告会 実施報告(令和2年度「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」について)

照明設備のLED化で消費電力削減

「あかりの日」委員会の「住まいの照明BOOK」によると、白熱電球からLEDに変えると約86%の消費電力を削減できます。
蛍光灯からLEDの場合は約50%です。

企業の設備においても同様に、白熱電球や蛍光灯からLEDに変更することで消費電力を削減できます。
LED化はランニングコストの抑制という効果があるため、資金を回収できる設備投資です。

令和3年度省エネ補助金において、制御機能付きLED照明器具を導入した企業の年間平均削減コストは129万円/年でした。

参照:SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|公募情報(2次公募)(令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業)

LEDの定格寿命は40,000時間で、1日10時間点灯すると約10年間使用できるほど長寿命です。
企業からすると、長期間交換をする必要がないので、管理のための時間や作業量を減らせるメリットもあります。

空調設備の高効率機器への更新

高効率な空調設備とは、省エネ性能に優れた業務用エアコンのことです。

既存の空調設備を高効率空調に更新することで、消費電力が減少し、電気代の削減が期待できます。
ランニングコストを下げられるので、資金を回収できる投資といえます。

経済産業省の「省エネルギー投資促進支援事業」において、高効率空調の補助金の対象範囲は以下の5種類です。

  • 電気式パッケージエアコン
  • ガスヒートポンプエアコン
  • チリングユニット
  • 吸収式冷凍機
  • ターボ冷凍機

5種類のうち、一定水準以上の製品を導入した企業に、設備費の1/3以内の補助金が支給されます。

令和3年度の省エネ補助金において、高効率空調の導入企業の年間平均削減コストは118万円/年でした。
事業所に欠かせない空調設備の高効率化は、効果的にコストを削減できることを示しています。

給湯器やボイラーの効率UP

中小企業向けの省エネ対策には、給湯器やボイラーの効率UPが有効です。

古い給湯器やボイラーは、省エネ設備に比べて熱損失が多くなります。
熱損失が多いと、水を沸かすまでにより多くのエネルギーが必要です。

一方、省エネ設備は効率良くエネルギーを水に伝えられるため、電気代や燃料代のコストを抑えられます。

令和3年度省エネ補助金を利用した企業の年間平均削減コストは、給湯器で28万円/年、ボイラーで92万円/年でした。

補助金申請の手続きと注意点

省エネ設備の更新・導入は、ランニングコストを削減できるため、経営の安定化につながる施策です。
しかし、設備が大規模になるほど投資額も増えるため、中小企業には負担感が大きいでしょう。

そこで活用すべきなのは補助金です。
補助金を受け取るには、申請を経て採用される必要があるため、以下のポイントを押さえてください。

  • 申請対象となる設備
  • 必要書類の準備と提出方法
  • 補助金の受給条件と上限額

省エネ設備の導入で利用できる補助金制度、「省エネルギー投資促進支援事業」の各ポイントを紹介します。

申請対象となる設備の確認

「省エネルギー投資促進支援事業」の申請対象の設備は、「ユーティリティ設備」と「生産設備」で計15種類あります。

指定設備申請対象の設備
ユーティリティ設備高効率空調産業ヒートポンプ業務用給湯器高性能ボイラー高効率コージェネレーション低炭素工業炉変圧器冷凍冷蔵設備産業用モーター制御機能付きLED照明器具
生産設備工作機械プラスチック加工機械プレス機械印刷機械ダイカストマシン

※上記の15種類に加えて、執行団体の環境共創イニシアチブが高性能と認めた設備も対象に含まれます。

申請対象のなかで、省エネ性能に優れている設備が補助金の対象となります。
その根拠となるのは、トップランナー制度の基準値です。

15種類の設備にはそれぞれ基準値が設定されています。
基準値を超える性能があると環境共創イニシアチブが認め、登録した設備が補助対象となります。

具体的な製品については、「補助対象設備一覧」から確認してください。

必要書類の準備と提出方法

「省エネルギー投資促進支援事業」への申請には、提出書類を作成・準備する必要があります。
提出書類の区分は、「必要書類」「導入設備区分毎」「添付書類」があります。

書類区分概要
必要書類すべての申請に提出が求められる書類例:交付申請書・役員名簿・事業者情報など
導入設備区分毎申請する導入設備により提出が必要な書類例:省エネルギー計算総括表など
添付資料条件に該当する場合に必要な書類例:決算書・登記簿謄本など

3つの区分のうち、自社の申請内容に適した書類は、「公募情報」の「提出書類一覧」を確認してください。

提出方法は、書類を指定の方法でファイリングし、期日内に環境共創イニシアチブまで郵送します。
ファイリング方法については、「公募情報」の「公募要領」に記載されています。

なお令和4年度補正予算の2次公募の応募期間は、2023年5月25日~2023年6月30日でした。

補助金の受給条件と上限額

「省エネルギー投資促進支援事業」の補助金の受給条件は、補助対象事業者が既存設備を補助対象設備へ更新することです。
補助対象設備は、環境共創イニシアチブが登録した省エネ設備を指します。

補助対象事業者は、9つの要件を満たす必要があります。

  1. 国内において事業活動をしている法人、または個人事業主であること。
  2. 必要な経営基盤や事業の持続性があると認められること。
  3. 設置する補助対象設備の所有者で、継続的に使用すること。
  4. 取得した補助対象設備を取得財産等管理台帳に記載し、施設の管理に加えて効率的に運用を図ること。
  5. 経済産業省から補助金交付等停止措置や氏名停止措置を受けていないこと。
  6. 公的資金の交付先として、社会通念上、適切と認められること。
  7. 風俗営業やそれらに類する営業活動に該当しないこと。
  8. 補助対象設備の最低1週間の実測データを用いて、省エネルギー効果を報告できること。
  9. 会計検査院の現地検査を会社単位で誠実に対応できること。

補助率は中小企業・大企業ともに設備費の1/3以内です。
上限額は1事業あたり1億円で、下限額は30万円です。

省エネ設備導入事例とその効果

次はどのような省エネ設備を導入するかを検討します。
省エネ設備選びの参考として、工場用と住宅用の導入事例、エネルギー削減効果について紹介します。

工場や事業所の設備改善事例

株式会社六花亭は、北海道を拠点に和菓子や焼き菓子、洋菓子の製造販売を行っている企業です。
本社工場の設備改善として、「LED照明器具」と「高性能ボイラー」を更新しました。

2つの省エネ設備を導入したことで、エネルギー使用量が導入前と比較すると、87.6%減の124kl/年を実現しています。

株式会社六花亭は以前より、A重油から都市ガスへの燃料転換を検討していました。

省エネ設備の導入時に都市ガスへ転換できたことで、降雪による燃料供給確保の不安から解消されたのも成果といえます。

出典:株式会社六花亭(本社工場)

住宅用省エネ設備の導入事例

住宅用省エネ設備といえば、高効率コージェネレーションがあります。
コージェネレーションとは、ガスなどの熱を利用して電気を生み出し、さらに排熱で給湯や冷暖房などを行う設備のことです。

ツルカメO&E株式会社は、温浴施設を全国10カ所に運営している企業です。
温浴事業のため、電気代やガス代、水道代の占める割合の大きさが課題でした。
そこで、高効率空調と高効率コージェネレーションを導入します。

2つの省エネ設備を導入したことで、エネルギー使用量が導入前と比較すると、63.7%減の31.2kl/年を実現しました。
さらに大幅にランニングコストを削減できたことで、リニューアルに踏み切り、顧客満足度の向上や集客増につながっています。

出典:ツルカメO&E株式会社(源気温泉 八尾おゆば)

設備更新によるエネルギー削減効果

2つの事例からもわかるように、省エネ設備への更新はエネルギー削減効果があります。
その他の事例における削減効果は以下の表のとおりでした。


事業者名

設備
エネルギー使用量省エネルギー率
導入前導入後
城山観光株式会社業務用給湯器ボイラー675kl/年192kl/年28.4%
日本電気化学株式会社変圧器12.12kl/年6.44kl/年53.1%
トーホウリゾート株式会社産業ヒートポンプ2,860kl/年487kl/年17.1%
株式会社バロー冷凍冷蔵設備125.4kl/年46.8kl/年37.3%

多くの企業が省エネルギー率を半分以下にまで下げているため、設備更新によるエネルギー削減効果は高いといえます。

「出典」

城山観光株式会社(SHIROYAMA HOTEL kagoshima)
日本電気化学株式会社(加悦工場)
トーホウリゾート株式会社(登別温泉ホテルまほろば)
株式会社バロー(バロー織田店)

よくある質問

省エネ設備の導入に関するよくある質問に回答します。

省エネルギーの具体例は?

省エネルギーの具体例は、LED電球や高効率空調、省エネ性能の高い給湯器などへの更新です。
既存の設備よりも省エネ性能の高い設備に更新することで、ランニングコストの削減が期待できます。

省エネ対策の例は?

補助金を活用して省エネ設備に更新することは、省エネ対策になります。
利用できる補助金制度は、「省エネルギー投資促進支援事業」です。

省エネ設備を導入するメリットは?

省エネ設備の導入には、3つのメリットがあります。

  • 消費エネルギーが減るので、エネルギーコスト削減や環境負荷軽減につながる。
  • ランニングコストが下がることで、経営の安定化につながる。
  • 社会問題に取り組むことで、企業のイメージアップにつながる。

まとめ

省エネ設備の導入は、ランニングコストの削減や企業のイメージアップにつながります。
補助金制度を活用することで、費用の負担を軽減できるため、中小企業にもおすすめです。

令和6年度の補助金事業に向けて、「令和5年度余生予算案における省エネ支援策パッケージ」が公表されました。
来年度は補助金制度を活用し、省エネ設備に更新してみてはいかがでしょうか。

省エネ設備に関する重要用語

最後に、省エネ設備に関する重要用語を紹介します。

項目説明
カーボンニュートラル二酸化炭素の排出量と吸収量を合算して、実質ゼロにすること。
温室効果ガス二酸化炭素やメタン、フロンなど、温室効果をもたらす気体のこと。
ESG投資社会問題や人権問題への企業の取り組みを評価して、投資対象を選別する手法のこと。

著者のプロフィール

福元惇二
福元惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。