近年、脱炭素社会への実現に向けて、ESG事業に取り組む企業が増え、多くの投資家がESG投資に関心を持っています。
2050年のカーボンニュートラル実現を達成するために、これからESG事業の取り組みを考えている方も多いのではないでしょうか?
「ESG投資ってそもそも何?」
「ESG投資のメリットが知りたい!」
そこで、本記事ではESG投資の概要からメリットや課題まで解説します。
ESG事業に取り組む効果を最大化させ、企業価値アップのご参考にしてください。
ESG投資とは
そもそもESG投資とは、どういうものなのでしょうか。
ここでは、ESG投資の概要から将来性まで以下のような流れで解説します。
- ESG投資概要
- ESG投資が注目されている背景
- ESG投資の将来性
ESG投資概要
ESG投資とは、「環境(Environment・社会(Social)・ガバナンス(Governance)」に配慮した投資を行うことです。本来であれば、企業の売上や経費、予算、資金調達など資金の運用にについてまとめた財務資料だけが投資の対象に選ばれます。しかし、近年ではこういった投資の対象でさえ、地球に配慮した取り組みが選ばれやすくなっています。
これまで、ESGの分野では環境問題に取り組むことは成果へ反映しにくいとされていました。現在は、消費者や社会全体の動きとして、長期的に企業が発展していくためには、財務情報だけでは不十分という声が上がってきているのも事実です。
ESG投資が注目されている背景
2015年に国連サミットにより、SDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。SDGsは、2030年を期限に、持続可能な社会を目指す国際指標として各国が取り組むべき目標にもなっています。
SDGs達成のために、今後企業が取り組むべき課題として挙げられているのが、ESG分野です。これまでのような大量生産、大量消費のような短期的な利益を求めて企業活動を行うよりことよりも、環境や社会に配慮し、長期的に事業継続することが企業に追及されています。
日本でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESGを観点にした投資を行ったことがESG投資が注目されるきっかけになりました。
ESG投資の将来性
2006年には、国連責任投資原則(PRI)による投資の判断材料としてESGの活用が始まりました。それ以降、世界中の投資機関がPRIに署名をしたことを踏まえて、今後も投資におけるESGの観点が重要になっていくことが予想されます。
さらに、PRIに署名した期間の資産総額合計は、100兆米ドル以上になり、世界株式市場にも引けを取らないほどです。
投資家にも企業側の双方にもメリットがあるため、ますますESG投資が注目を集めることでしょう。
ESG投資種類
ESG投資にはどういった種類があるのでしょうか。ここでは、以下の6つのESG投資について解説します。
- ESGインテグレーション
- ネガティブスクリーニング
- ポジティブスクリーニング
- 国際規範スクリーニング
- サステナビリティ・テーマ投資
- インパクト・コミュニティ投資
- 企業エンゲージメント
ESGインテグレーション
ESGインテグレーションとは、企業の「財務情報」やESGに関連する「非財務情報」を組み合わせた選択方法です。ESGの要素に加え、従来重視されていた財務情報も反映できるのが特徴です。
ネガティブスクリーニング
「ネガティブ」とあるように、環境破壊に繋がるなど、社会へ悪影響を及ぼす業種や企業を排除した投資対象を選択する方法です。具体的には、ギャンブルやタバコ、CO2を大量に排出する化石燃料を扱う業界などが該当します。
ポジティブスクリーニング
反対に、環境へ良い影響を及ぼす業種や企業を投資対象として選ぶ方法です。例えば、CO2削減に積極的に取り組み企業やダイバーシティの実現を目指している企業などが当てはまります。
国際規範スクリーニング
ESGに関連した国際規範を基準にして投資対象を選択するのが、国際規範スクリーニングです。国際労働機関(ILO)や国際連合が提唱している「国連グローバル・コンパクト」などの規範が適用されます。
サステナビリティ・テーマ投資
環境に配慮した持続可能な社会を重視する企業やプロジェクトを選択して投資する方法です。
サステナビリティは、SDGsとも密接な関係にあるため、近年注目を浴びています。
インパクト・コミュニティ投資
ESGへの取り組みが社会に及ぼした好影響をデータ化し、企業の経済的利益と社会への貢献度を重要視する方法です。
企業エンゲージメント
投資家が企業の株主になり、企業のESGへの取り組みを推し進める方法です。
具体的には、株主による議決権の行使や企業の上層部との話し合いなどでESGへの取り組みを促進させます。
ESG投資メリット
ESG投資のメリットは数多くありますが、ここでは、以下の3つに絞って解説します。
- 長期投資による運用のリスクヘッジができる
- 市場規模の拡大が見込める
- 持続可能な社会の実現に寄与できる
長期投資による運用のリスクヘッジができる
ESG投資は、持続可能な社会を作るために、企業の安定性や事業の持続性が重視されます。そのため、長期運用での投資によるリスクヘッジが可能です。
投資では、短期的な利益を求めがちですが、リスクヘッジのためには、長期投資の方が望ましいです。
また、日本の高度経済成長の時代などに代表される、短期的な利益追及により環境問題や公害などの社会問題を増幅させてしまう恐れがあります。
ESGでは、こういった環境や社会、ガバナンスへの配慮をするために、長期的な視点での成果を目指しています。そのため、企業価値の上昇や長期運用による投資のリスクヘッジなどが可能になり、企業や投資家の両方ともにメリットがあるのが特徴です。
企業価値が上がることは、さらなる投資家を集める要素になり得るので企業にとって、ESGへの取り組みが欠かせません。
市場規模の拡大が見込める
先述の通り、国際的にESGへの取り組みが注目されているため、今後も市場規模の拡大が期待できます。
ESGと密接に関わっているSDGsでは、17の目標、169のターゲットの達成を目指しています。SDGsはターゲットが広く、企業がESGに取り組む範囲が広いです。
国連開発計画(UNDP)の試算によると、世界でも問題になっている環境破壊や貧困・飢餓などの解決には、5~7兆ドルもの資金が必要になっています。
持続可能な社会の実現に寄与できる
企業がESGへの取り組みを積極的に行うことで、環境や社会の問題解決に繋がるため、持続可能な社会の実現に寄与できます。
また、投資家も間接的に持続可能な社会への発展へと貢献していることが実感できるのもメリットの1つです。
企業により、社会貢献への活動はさまざまです。
環境面では、フードロスや海洋ゴミ、森林破壊などの問題に対して、ボランティア活動やその支援などを行っている企業が増えつつあります。
社会面においては、育児や介護と仕事への両立支援、ワークライフバランスの実現、女性の社会復帰支援などが挙げられます。
ESGのガバナンス面では、経営構造の明確化やステークホルダーとの利益最大化などです。
ESG投資が抱える課題
ESG投資は、近年広まりつつありますが、まだまだ課題が残っています。以下の課題をおさえて効率的にESG投資に取り組んでください。
- 情報開示が不十分
- 評価基準が整備されていない
- 短期的な利益が見通せない
情報開示が不十分
投資家がESG投資をする際には、企業側がESGへの取り組みによる成果を開示する必要があります。
これまでは、企業の財務情報を投資の判断材料にしていました。しかし、非財務情報に当たるESG関連の情報を公表していない例があり、投資家が抱える課題になっています。
コンサル企業の調査によると、ESG関連の事業の情報開示は、60%〜90%程度しか企業の情報開示されていないです。
今後、ESG投資を拡大していくためにはこういった非財務情報の公表が必須になるでしょう。
評価基準が整備されていない
ESGは、最近始まった取り組みでもあるので、歴史が浅く、評価基準の整備が不十分なことが課題になっています。
そのため、標準的な評価基準が策定されておらず、ESG投資機関の多くが独自の評価基準い基づいて評価を決定しているところが多いです。同種の企業でも評価が異なるケースが見受けられます。
今後は、ESG投資が拡大していくにつれ、評価基準が統一されることが予想されます。しかし、現段階では投資家は評価の参考を慎重にならざるを得ない状況です。
短期的な利益が見通せない
ESG投資は、持続可能な事業を目指しているため長期的な利益は見込めますが、短期的には利益が見通せないのが課題です。
ESGの性質上、成果が反映しにくいということもあり、短期的にはリターンが不透明なのも事実です。
しかし、SDGsの取り組みや脱炭素経営などが拡大していくことが期待されるので、長期的な視点で見ると、企業価値の上昇の可能性が高いです。
企業価値がどの程度上がるかは予想しづらいですが、その点を含めてESG投資を行う必要があります。
まとめ
持続的な社会を推進している中でESG投資は、拡大していくことが期待されます。その一方で、ESG投資の課題が残っているため、投資家はその点に注意して投資を行う必要があります
。企業においては、SDGsやESGへの取り組みを進めていくと企業価値が上がる可能性があり、投資家によるさらなる投資も見込める可能性が高いです。企業の方は、ぜひESGに取り組んでみてください。
著者のプロフィール
- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。