
需給調整市場と卸電力市場の違いとは、出力を出せる状態で待機すること(ΔkW)に対価が払われるか、実際に流した電気の量(kWh)を売買して値差を得るかという、売り物の違いです。系統用蓄電池では需給調整市場が収入の中心で、卸電力市場の値差は副次的な位置づけです。
需給調整市場と卸電力市場は何を売る市場なのか
需給調整市場は調整力を、卸電力市場は電力量を売る市場です。需給調整市場では、一般送配電事業者が周波数を保つための調整力を前日に30分ごとに調達し、約定した時間に正しく待機していれば、放電しなくても対価が支払われます。卸電力市場(JEPX)では電力量が売買され、蓄電所は安い時間に買った電気をためて高い時間に売ります。3つの収入源の全体像は蓄電所の3つの収入源で整理しています。
| 項目 | 需給調整市場 | 卸電力市場(JEPX) |
|---|---|---|
| 売るもの | 調整力(ΔkW) | 電力量(kWh) |
| お金の出し手 | 一般送配電事業者 | 市場の買い手 |
| お金が出る条件 | 約定した時間に正しく待機すること | 実際に電気を出すこと |
| 金額の決まり方 | 出力×単価×約定したコマ数 | 昼夜の値差から損失と費用を差し引いた残り |
| 効く単位 | kW | kWh |
| 蓄電所での位置づけ | 収入の中心 | 約定しなかった時間の補い |
卸電力市場では、蓄電所が市場から昼の電気を買い、夕方に市場へ売ります。
需給調整市場
- 待機そのものが売り物
- 放電しなくても対価
- 一次調整力で蓄電池が強い
- 上限は一次調整力などで10円
卸電力市場
- 昼に充電し夕方に放電
- 値差がそのまま利益ではない
- 充放電で往復85〜90%程度しか戻らない
- 天候で値差が開かない日もある
金額の決まり方はどう違うのか
需給調整市場は単価と約定コマ数で、卸電力市場は値差の大きさで決まります。需給調整市場の単価には上限があり、2026年9月1日の実需給分からは一次調整力などが10円、二次調整力②と三次調整力①が7.21円です。上限は最高でもその価格という意味で、収支は上限より低い単価で組むのが基本です。卸電力市場では、充放電の損失、充電にかかる託送料金や賦課金、発電側課金、アグリゲーター手数料を差し引いた残りが利益になります。値差の仕組みは卸電力市場(JEPX)で収入を得る仕組みで解説しています。
2つの市場はどう組み合わされるのか
同じ出力を同じ時間に両方の市場で使うことはできないため、アグリゲーターが時間ごとに割り当てます。需給調整市場で約定した時間帯は、その出力を待機に充てています。前日・30分単位で約定が決まるようになったことで、約定しなかったコマを卸電力市場でどう生かすかの判断が日々の運用の一部になりました。
低圧蓄電所でも同じ考え方なのか
低圧蓄電所でも、収入の中心は需給調整市場で、卸電力市場の値差は補いという位置づけは変わりません。出力49.9kW・容量200kWh前後の低圧蓄電所は、一次調整力のオフライン枠に束ねて参加するのが主な役割です。需給調整市場の最低入札量は1MWのため、そのエリアで束ねが成立しているかが収入を得る前提になります。約定しなかった時間を卸電力市場でどう生かすかも、アグリゲーターが判断します。
よくある誤解は何か
よくある誤解は、蓄電所は電気を安く買って高く売る事業だという見方です。値差は副次的な収入で、毎日安定して得られるものではありません。試算を受け取ったら、2つの市場の収入が分けて示されているか、値差の前提がどの時期の価格かを確かめます。
まとめ
- 需給調整市場は待機(ΔkW)に、卸電力市場は流した電気(kWh)の値差に対価が出ます。
- 系統用蓄電池の収入の中心は需給調整市場で、卸電力市場は補いです。
- 時間ごとの割り当てはアグリゲーターが行い、試算では2つの収入を分けて確認します。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(高圧編)
- 系統用蓄電池 解説ブック2026(低圧編)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。