
需給調整市場の売上は「出力×単価×約定したコマ数」で決まるため、約定率の前提が高すぎると、計画の売上と実際の差がそのまま回収の遅れになります。約定率と単価を変えた複数のケースで試算を見ることが、この失敗を防ぐ基本です。
どのような失敗が起きるのですか?
売り手の収支計画で、入札したコマのほとんどが約定する前提が置かれ、それを基準に投資を決めてしまう例です。実際の約定率は、市場の募集量、他の参加者の応札、アグリゲーターの入札の組み方で変わります。前提が楽観的だと、運転開始後の売上が計画を下回り続けます。
約定率とは何ですか?
約定率は、入札したコマのうち、実際に落札されたコマの割合です。1日は30分×48コマ、1年で17,520コマあります。約定しなかったコマは需給調整市場の待機の対価が得られず、卸電力市場の値差などで補うことになります。用語の詳しい説明は約定率とはをご覧ください。
約定率で売上はどれだけ変わるのですか?
解説ブックの計算例では、約定率90%と70%で次の差が出ます。
2,000kW×17,520コマ×単価×約定率の計算例。見積りや収益の見込みではありません。
低圧49.9kWでも、単価7円で約定率90%なら約551万円、70%なら約428万円です。約定率が20ポイント違うだけで、売上はおよそ2割強変わります。単価の前提も合わせて下がると、差はさらに広がります。
| 平均の約定単価 | 高圧2MW 90% | 高圧2MW 70% | 低圧49.9kW 90% | 低圧49.9kW 70% |
|---|---|---|---|---|
| 10円 | 約3.15億円 | 約2.45億円 | 約787万円 | 約612万円 |
| 5円 | 約1.58億円 | 約1.23億円 | 約393万円 | 約306万円 |
| 3円 | 約0.95億円 | 約0.74億円 | 約236万円 | 約184万円 |
高圧の単価別の早見は約定率70%と90%で年間売上はいくら違うかで整理しています。
なぜ約定率は高く置かれやすいのですか?
単価の上限が下がる中で計画の売上を保とうとすると、約定率を高く置く方向に引っ張られやすくなります。上限価格は2026年3月に15円、9月に10円へ引き下げられました。上限は「最高でも」の価格で、その価格で約定するわけではありません。解説ブックでは、90%を超える約定率は楽観的な前提であることが多いとしています。
試算を受け取ったら、何を確かめればよいのですか?
- 約定率の数字と、その根拠(実績か想定か)が示されているか
- 単価が「いつの」「どの商品の」「どのエリアの」数字か
- 約定率と単価を変えた複数のケースが示されているか
- 約定しなかったコマの収入(卸電力市場など)をどう置いているか
- アグリゲーター手数料、充電の電力費、劣化の前提が開示されているか
売り手の試算が1本だけなら、約定率と単価を下げたケースの試算を求めます。単価を2割、3割下げても回収できるかが、案件の強さを測る目安になります。
約定しなかったコマは、どう扱われるのですか?
需給調整市場で約定しなかったコマは、卸電力市場で昼夜の値差を取る運用などで補います。解説ブックでは、卸電力市場は需給調整市場で約定しなかった時間の補いになり、収入の支えになるとしています。ただし、値差の大きさは日によって違い、需給調整市場の待機の対価と同じ水準になるとは限りません。試算で、約定しなかったコマの収入をどう置いているかを確かめます。
なぜ単価と約定率を同時に下げて見るのですか?
単価と約定率は、どちらも市場の参加者が増えると下がる方向に動きやすいためです。海外の先行市場では、蓄電池の設備量が調整力の必要量を超えたところで単価が下がり、収益の中心が卸電力市場の値差へ移りました。日本でも同じ流れが見込まれます。単価だけ、約定率だけを下げた試算では、両方が同時に下がる場合の影響が見えません。単価3円・約定率70%のように、両方を下げたケースでも回収できるかを確かめると、案件の強さが分かります。
アグリゲーターの違いは約定率に効くのですか?
効きます。どのコマに入札するか、充電をいつするかはアグリゲーターが市場の動きを見て決めるため、入札の組み方で約定率は変わります。試算の約定率が、委託予定のアグリゲーターの運用を前提にした数字かどうかを確かめます。2026年度は前日取引への移行で、運用の巧拙で差がつきやすくなっています。
高圧の案件は蓄電所の案件と用地で、手続きの進み具合とあわせてご紹介しています。低圧の区画は低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
まとめ
- 約定率は入札したコマのうち落札された割合で、売上に直接効きます
- 計算例では約定率90%と70%で売上がおよそ2割強変わります
- 約定率と単価を変えた複数ケースの試算を求め、下振れに耐えるかを確かめます
出典
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「2025年度の取引実績について」(2026年6月)、「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。