
需給調整市場とは、一般送配電事業者が電力網の周波数を保つための調整力(ΔkW)をあらかじめ確保する市場です。蓄電所にとっては、約定した時間に出力を出せる状態で待機することへの対価が得られる、収入の中心となる市場です。
需給調整市場では何が売買されているのか
売買されているのは電気の量ではなく、指令に応じて出力を増減できる能力である調整力(ΔkW)です。電力網は使う量と発電する量を常に一致させないと周波数が乱れます。そのずれを打ち消すために、各エリアの送配電網を運営する一般送配電事業者が、調整力を前もって買っておきます。
約定した時間帯は、実際に放電しなくても待機の対価が支払われます。この点が、発電した電気を売る太陽光発電との大きな違いです。考え方の土台は調整力とは何かで詳しく説明しています。
取引の単位は1日48コマ。商品は応動の速さで一次から三次②までの5つに分かれる。
なぜ蓄電所にとって重要な市場なのか
需給調整市場は、高圧2MW級の蓄電所でも低圧の蓄電所でも、収入の中心に置かれる市場だからです。蓄電池は指令から1秒以内に出力を変えられ、燃料も要りません。2025年度の一次調整力では、蓄電池の月別の平均落札単価が8.82〜13.52円/ΔkW・30分で、火力の2.05〜3.39円を上回りました。速く正確に応える設備ほど評価される市場の性格が、蓄電池の強みと重なっています。
卸電力市場(JEPX)の値差や容量市場の収入もありますが、位置づけは補いです。3つの収入源の関係は蓄電所の3つの収入源にまとめています。
売上はどのように決まるのか
需給調整市場の売上は、出力(kW)×単価(円/ΔkW・30分)×約定したコマ数で決まります。1日は30分×48コマ、1年では17,520コマです。2026年3月14日からは一次〜三次①の取引が前日・30分単位に移り、2026年9月1日の実需給分からは一次調整力などの上限価格が10円、二次調整力②と三次調整力①が7.21円になりました。
- 入札と制御は、アグリゲーター(特定卸供給事業者)に委託するのが一般的です。
- 2026年4月からは、低圧の設備をアグリゲーターが束ねて応札できるようになりました。
- 約定代金からは手数料、充電の電力費、ペナルティなどが差し引かれます。
需給調整市場についてよくある誤解は何か
最も多い誤解は、上限価格で売れ続けると考えることです。上限は「最高でもこの価格」という意味で、その価格で約定するわけではありません。2026年度は前日取引への移行や上限価格の引き下げが重なり、単価は全エリアで下がっています。
もう一つは、オーナーが自分で入札すると考えることです。どの商品のどのコマに入札するかはアグリゲーターが決めます。オーナーは、運用の方針と報告の内容を契約の前に確かめておくことが大切です。
まとめ
- 需給調整市場は、一般送配電事業者が調整力(ΔkW)を前日に30分単位で買う市場です。
- 約定したコマで待機すれば放電しなくても対価が出るため、蓄電所の収入の中心になります。
- 上限価格は最高値であり、収支は上限より低い単価で組むのが基本です。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)2025年度取引実績(解説ブックでの引用による)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。