
一次調整力とは、周波数の変化を設備自身が検知し、10秒以内に自動で出力を変える、需給調整市場で最も速い調整力です。速く正確に応えられる蓄電池は、この商品で火力発電より高い単価で落札されてきました。
一次調整力はどのような働きをするのか
一次調整力は、電力網の周波数が乱れ始めた最初の揺れを打ち消す働きをします。使う量と発電する量がずれた瞬間に周波数は動き出します。一次調整力は送配電事業者の指令を待たず、設備が周波数の変化を自ら検知して自動で応じます。人が操作する場面はありません。
- 一次調整力10秒以内に自動で応動。最も速い
- 二次調整力①一次に次ぐ速さ
- 二次調整力②より長い時間のずれに応じる
- 三次調整力①前日・30分単位で取引
- 三次調整力②最も遅い商品
上ほど速い。一次の「10秒以内」以外の応動時間は本記事では扱わない。
なぜ一次調整力は蓄電池に向くのか
蓄電池は、指令から1秒以内に出力を変えられ、燃料も要らないからです。充電と放電の切り替えも速く、出力の上げ下げを正確に行えます。これまで調整力の中心だった火力発電は、燃料を燃やして出力を変えるため、ここまでの速さと正確さを出すのは得意ではありません。
2025年度の一次調整力では、蓄電池の月別の平均落札単価が8.82〜13.52円/ΔkW・30分だったのに対し、火力は2.05〜3.39円でした。単価差の読み方は蓄電池と火力発電の一次調整力の単価差で詳しく説明しています。
一次調整力の収入はどう確かめればよいのか
収入は出力×単価×約定したコマ数で決まるため、単価と約定率の前提を分けて確かめます。一次調整力の上限価格は、2026年3月14日に19.51円から15.00円/ΔkW・30分へ、2026年9月1日の実需給分からは10円へと引き下げられました。
- 試算の単価が、9月以降の上限を踏まえた水準で組まれているか
- 約定率を何%と置き、その根拠が示されているか
- 約定した時間に基準どおり応動できなかった場合のペナルティを、誰が負担するか
出力49.9kWの低圧蓄電所は、一次調整力のオフライン枠に入るのが主な役割です。最低入札量は1MWのため、アグリゲーターが同じエリアの複数の設備を束ねて入札します。他の4商品との違いは需給調整市場の5つの商品で整理しています。
一次調整力についてよくある誤解は何か
一つ目は、2025年度の単価が今後も続くと考えることです。上限価格が下がり、2026年度は単価が全エリアで下がっています。過去の実績は将来の単価を約束するものではありません。
二つ目は、速い設備であれば必ず満額を受け取れると考えることです。約定した時間に通信の途絶や機器の不具合で応動できなければ、アセスメントで評価を満たさずペナルティがかかります。設備の稼働率と通信の安定性も、単価と同じくらい大切です。
まとめ
- 一次調整力は、周波数の変化を設備が自ら検知し10秒以内に自動で応動する最も速い商品です。
- 蓄電池は1秒以内に出力を変えられるため、2025年度は火力より高い単価で落札されました。
- 上限価格は2026年9月から10円で、収支は上限より低い単価と現実的な約定率で確かめます。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)2025年度取引実績(解説ブックでの引用による)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。