
上限価格とは、需給調整市場で調整力(ΔkW)の単価がそれを超えないように定められた天井の価格です。上限は「最高でもこの価格」という意味であり、その価格で約定し続けるわけではないため、収支は上限より低い単価で組むのが基本です。
上限価格はいくらで、どう変わってきたのか
一次調整力などの上限価格は、2026年に2度引き下げられました。2026年3月14日に19.51円から15.00円/ΔkW・30分へ、2026年9月1日の実需給分からは10.00円になりました。同じ9月1日から、二次調整力②と三次調整力①の上限は7.21円です。
単位は円/ΔkW・30分。二次調整力②・三次調整力①は2026年9月1日実需給から7.21円。
なぜ単価に天井が設けられているのか
上限価格は、調整力の調達にかかる費用が際限なく膨らまないように置かれています。調整力を買う一般送配電事業者の費用は、最終的に電気を使う側の負担につながるためです。2025年度は一次調整力の調達量に対して応札が大きく不足し、東京エリアの平均単価は通年で全国平均を上回りました。2026年度は前日取引への移行、募集量の見直し、揚水発電の随意契約、上限価格の引き下げが重なり、単価は全エリアで下がっています。
試算では上限価格をどう扱えばよいのか
試算では、上限を単価として置くのではなく、上限より低い単価を複数置いて、何円まで下がっても成り立つかを確かめます。売上は出力×単価×約定したコマ数で決まり、単価に比例します。高圧編の計算例では、出力2,000kW・約定率90%で、平均の約定単価が10円なら年間売上は約3.15億円、5円なら約1.58億円です。計算の例であり、見込みではありません。
- 試算の単価が上限と同じ値になっていないか
- 2026年9月以降の上限を前提に組み直されているか
- 単価を2割、3割下げた場合の結果が示されているか
上限引き下げ後の市場の見通しは上限10円時代の需給調整市場で、上限を前提にした試算の危うさは「上限10円で売れる」という誤解で詳しく扱っています。
上限価格についてよくある誤解は何か
最も多い誤解は、上限価格を「売れる価格」と読むことです。約定単価は上限以下で市場の状況により決まり、蓄電池の参入が増えれば下がる可能性もあります。海外の先行市場では、蓄電池の設備量が調整力の必要量を超えたところで単価が下がりました。
もう一つは、すべての商品の上限が同じだと考えることです。一次などは10円、二次②と三次①は7.21円と、商品によって上限は異なります。
まとめ
- 上限価格は、需給調整市場でΔkWの単価がそれを超えないように定められた天井です。
- 一次調整力などの上限は2026年に19.51円から15.00円、9月から10円へ下がりました。
- 上限は「最高でも」の価格であり、試算は上限より低い単価を複数置いて確かめます。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)2025年度取引実績(解説ブックでの引用による)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。