
トーリング契約とは、蓄電池をどう動かすかの権利を契約の相手方に渡し、その代わりに相手方から長期の固定料金を受け取る契約です。オーナーの収入は市場の単価に左右されにくくなりますが、市場が好調なときの上振れは手放すことになります。
トーリング契約はどんな仕組みなのか
トーリング契約では、相手方が20年間の固定料金を支払い、蓄電池の充放電を決める権利を持ちます。相手方は自らの判断で市場に入札して収益を得て、市場の単価の上下を引き受けます。
蓄電所オーナー設備を保有
運用の権利20年の固定料金
契約の相手方市場で運用
調整力・電気市場の収益
各市場需給調整・卸など
単価の上下と上振れの利益は、相手方に移ります。
市場運用とトーリング契約では何が違うのか
最も大きな違いは、収入の変動を誰が引き受けるかです。
| 項目 | 市場運用(アグリゲーター委託) | トーリング契約 |
|---|---|---|
| 収入の形 | 市場の単価で変動する | 相手方が固定料金を支払う |
| 運用の権利 | オーナーが委託し、方針を確かめる | 相手方が持つ |
| 上振れ・下振れ | オーナーが受ける | 相手方が受ける |
| 主な対象 | 2MW級の基本の形 | 30MW級の特別高圧が中心 |
変動収入(市場運用)
- 単価が上がれば収入も増える
- 単価が下がれば収入も減る
- 手数料は収益の10%前後が多い
定額収入(トーリング)
- 単価に左右されにくい
- 上振れは相手方に移る
- 大型案件が前提
なぜ蓄電所の規模でトーリング契約の可否が分かれるのか
トーリング契約の対象は、30MW級の特別高圧の大型案件が中心です。2MW級の蓄電所は主な対象にならず、アグリゲーターを通じた市場運用が基本になります。大型案件向けの制度との比較はトーリング契約と長期脱炭素電源オークションで整理しています。
トーリング契約を示されたら何を確かめるのか
契約の相手方、期間、料金の決まり方、途中解約の条件、税制への影響の5点を書面で確かめます。設備を貸し付ける形の契約になると、即時償却が使える税制の対象から外れる可能性があるため、収入の固定と税制の活用を両立できるかは個別に確認が必要です。
トーリング契約についてよくある誤解は何か
よくある誤解は、固定料金なら市場運用より必ず有利だという考え方です。固定と変動のどちらが望ましいかは一概には言えず、案件の規模と、持ち主がどの程度の変動を受け入れられるかで判断が分かれます。蓄電所の固定収入の選択肢は蓄電所に「固定収入」はあるのかでも解説しています。
まとめ
- トーリング契約は、運用の権利を渡して20年間の固定料金を受け取る契約です。
- 収入は安定しますが、市場の上振れは相手方に移ります。
- 対象は30MW級が中心で、2MW級は市場運用が基本です。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 高圧編」(2026年10月)
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。