省エネ住宅化へのリフォーム工事は戸建てだけでなく、マンションも対象になります。近年はマンションを対象にした補助金制度も徐々に増えています。脱炭素化の推進やCO2排出量削減には、多くの方が省エネに取り組むことが重要です。

この記事では、住宅エコリフォーム推進事業の概要や高性能断熱材の選び方、マンションリフォームのポイントなどに関してまとめました。

住宅エコリフォーム推進事業の概要

住宅エコリフォーム推進事業とは、国土交通省が主導する既存住宅の省エネ住宅化を支援する事業です。補助金の支給要件や手続きの流れなど、事業概要に関して説明します。

補助金制度の対象となる住宅の条件

補助金を受け取るには以下2つの要件を満たす必要があります。

  • 既存住宅をZEHレベルでの省エネ住宅へ改修
  • 2023年4月1日以降に施行会社と契約し、施工会社が事業者登録をした上で工事に着工

参照:令和5年度 住宅エコリフォーム推進事業

ZEHレベルとは、年間のエネルギー消費量0を目指す住宅のことです。省エネ推進でエネルギー消費量を削減し、再生エネルギーの利用によってエネルギーをまかない、収支0を目指します。

省エネ住宅へのリフォーム推進を事業目的としており、新築は含まれていません。要件を満たすと補助率が1/3、最大35万円まで補助金が支給されます。

省エネ性能向上を目指す改修工事の種類

省エネ診断や省エネ設計、省エネ改修が補助金の支給対象工事です。住宅の建て替え工事も支給対象とみなされます。省エネ住宅へ改修するメリットは、快適な室内環境を整備できる点です。

高性能断熱材の導入や窓ガラスの素材変更によって、保温性の高い空間を作りだし、ヒートショックを予防します。室内の温度差も小さくなり、暖房代やストーブ代も大幅に削減できます。空調効率が高まるため、夏も涼しく過ごせるでしょう。

エアコンやストーブの使用機会減少によって、CO2の排出量削減にもつながります。

申請手続きと利用方法の詳細

補助金の申請手続きは工事をおこなう施工会社が実施します。以下の流れに沿って手続きを進めていきます。

  1. 交付申請マニュアルに目を通す
  2. jGrants上で「事業者登録」を済ませた施工会社を選ぶ
  3. 施工会社が工事の種類に応じた提出書類を作成する
  4. 施工会社がjGrantsで必要事項の入力と書類提出をおこなう
  5. 補助金交付の決定を待つ

参照:窓リフォーム研究所

「jGrants」は、デジタル庁が運営する補助金交付申請用のシステムです。法人または個人事業主が申請手続きの際に利用します。申請手続きを進めるには、jGrants上で事業者登録を済ませておかなければなりません。

リフォームを依頼する場合は、事業者登録済みの施行会社を優先的に選びましょう。事業者登録が済んでいない施行会社に工事を発注する場合は、「gBizIDプライム」のアカウント取得と登録手続きを依頼します。

国土交通省の支援・相談窓口

事業の概要や手続きに関する相談は、住宅エコリフォーム推進事業実施支援室が窓口となります。以下にリンクを掲載しておきました。参考にご活用ください。
相談先:住宅エコリフォーム推進事業実施支援室

断熱・窓リフォームで家庭の省エネ効果を最大化

断熱材の貼り付けや断熱性に優れた窓ガラスを設置すると、室内の熱が外部に流出しにくくなり、室内の保温性が高まります。快適な室内環境の構築によって、冷房と暖房の使用機会が減り、電気代やCO2排出量の削減につながります。

高性能な断熱材・窓ガラスの選び方

断熱材は繊維系と天然素材系、発泡スチロール系の大きく3種類に分類できます。タイプ別の素材の特徴を以下の表にまとめました。

表:素材別の特徴

グラスウールウールブレスウレタンフォーム
タイプ無機繊維系天然素材系発泡スチロール系
強み・劣化しにくい
・耐熱性に優れる
・費用が安い
・断熱性に優れる
・調湿性に優れる
・環境にやさしい
・気密性が高い
・断熱性に優れる
・湿気に強い
弱み・湿気に弱い
・結露を含むと、断熱性が低下する
・国産の供給量が少ない
・費用が高い
・火に弱い
・シロアリの被害にあいやすい

断熱材に加え、施工方法に充填断熱や付加断熱を選ぶと、室内の保温性を高められます。また、窓ガラスに関してはLow-E複層ガラスを選択するのがおすすめです。2枚のガラスの間に設けた金属膜が赤外線の反射率を高め、屋外への放射熱流出を防ぎます。

保温性や熱伝導率が高まり、季節を問わず快適な室内環境を構築できます。

施工会社選びのポイントと注意点

特別なメリットがない限り、施工実績が多い企業を優先的に選びましょう。実績が多い施行会社は施工技術や費用対効果、サポート体制に関して、ユーザーから高い評価を受けていると認識できます。

住宅に断熱材を多く貼り付けたい場合は、充填断熱の対応可否を確認しておきましょう。充填断熱とは、断熱材を密閉させる施工方法です。使用頻度が多い反面、施工技術に優れた職人が作業を担当しないと、断熱材の断熱性能が低くなります。

また、補助金の申請手続きをスムーズに進めるため、問い合わせの際に補助金申請の対応実績を確認しておくことも重要です。事業者登録やgBizIDプライムのアカウント取得を済ませていない施工会社の場合、補助金申請枠が埋まる可能性が生じます。

耐震性能の向上も考慮したリフォームプラン

耐震リフォームには屋根材の新調や外壁サイディングの張り替えなど、さまざまな選択肢があります。住宅の築年数や劣化具合、予算に応じて、どの工事を選択するかを決めましょう。

屋根材を変える場合はスレートがおすすめです。耐震性に加え、断熱性や耐火性にも優れています。工事での使用頻度も高く、施工会社が限定される心配もいりません。サイディング材を張り替える場合は、耐震性と耐水性に優れた金属サイディングを選びましょう。

エコリフォーム事業を活用した新築・中古マンションの改修

新築マンションの事例や中古マンションリフォームの注意点を紹介します。

新築マンション向けの省エネリフォーム事例

インナーサッシの設置や高効率給湯器の設置がおすすめです。インナーサッシとは、既存窓の内側に新たな窓をもう1枚取り付けることです。気密性の向上によって室内の断熱性が高まり、結露が発生しにくくなります。

防音性の向上や防犯対策強化を図れる点もメリットです。また、高効率給湯器は従来よりも少ない燃料でお湯を作れるため、光熱費やCO2排出量を削減できます。

中古マンションのリフォームで見逃せないポイント

古マンションのリフォームまたはリノベーションを検討している場合、3つのポイントを整理しておきましょう。1つめは生活するまでに時間がかかる点です。配管の劣化具合確認や間取り変更など、工事の規模を問わず作業量が多いです。

工事完了までに少なくとも3か月以上はかかり、フルリノベーションの場合は半年以上時間が必要です。
参照:Renomama

2つめはリフォームできる範囲が限定される点です。マンションの場合、専有部分しかリフォームは認められていません。水回りの配管位置変更やフローリング材の変更は、管理組合が禁止している可能性もあるため、注意しましょう。

3つめは工事費用の高騰です。建物全体が老朽化している場合、修繕箇所も多くなるため、自然と工事費用が高騰します。複数の施工会社から見積を取得した上で、工事をするべきかを判断しましょう。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー)レベルへの取り組み

環境省と経済産業省、国土交通省が連携し、補助金制度の拡充に努めています。マンション向けには、以下4つの事業で補助金制度が設立されています。

  • 超高層ZEH-M実証
  • 高層ZEH-M支援事業
  • 中層ZEH-M支援事業
  • 低層ZEH-M支援事業

主に寒冷地や低日照地域、多雪地域などに設立されているマンションが補助金の対象です。また、超高層ZEH-M実証事業以外の事業では、蓄電システムやEV充電設備などを導入した際、追加で補助金が支給されます。

予算・費用に応じた最適なエコリフォームの選び方

補助金と助成金の併用や設備グレードの見直し、一括注文など、工事費用を減らす方法に関して紹介します。

補助金・助成金活用の上手な組み合わせ例

2つの請負工事で補助金と助成金を活用すると、工事費用の大幅な削減が望めます。たとえば、既存住宅の窓ガラス交換およびインナーサッシの設置工事を実施したとしましょう。先進的窓リノベ事業の補助金を活用すると、最大200万円の補助金が支給されます。
参照:先進的窓リノベ事業

また、耐震工事を検討している場合は、地方自治体が管轄する助成金を活用しましょう。東京大田区の住宅リフォーム助成事業の補助金を利用した場合、最大20万円の補助金が支給されます。
参照:大田区

補助金や助成金を併用する場合、違う工事に個々の制度を活用するのがルールです。同じ請負工事に2つの補助金は活用できないため、注意しましょう。

自己負担額の最小化を目指すリフォーム計画

リフォームの費用を抑える方法はさまざまです。1つめは設備や建材のグレードを見直すことです。高性能設備や建材は生活を便利にする反面、導入費用は高めに設定されています。優先的に改善したい箇所のみに導入し、他の箇所には汎用品を使いましょう。

既存設備や建材を積極的に使うと、新たに購入する設備や建材の数を抑えられます。また、リフォームはまとめて実施するのがおすすめです。屋根材や外壁材の張り替え工事を別々に実施すると、都度足場を設置しなければなりません。

同じ施工会社にまとめて依頼すると足場の設置が1回だけで済むため、追加費用の発生を避けられます。

よくある質問

エコリフォーム補助金とは?

省エネ住宅へのリフォーム推進を目的に設立された補助金制度です。2023年4月1日以降に工事を着工した場合、最大35万円が支給されます。省エネ住宅への改修に加え、省エネ診断や省エネ設計も補助金の支給対象です。

既存住宅の省エネ住宅化を目的としており、新築住宅は補助金の支給対象に含まれていません。

窓リフォーム補助金2023はいつまでですか?

先進的窓リノベ事業の補助金申請は、2023年12月31日まで応募を受け付けています。戸建て枠が予算の86%、マンション枠が予算の96%を消化しています。
参照:住宅省エネキャンペーン2023

予算に達した場合は応募が打ち切られるため、検討している場合は早めに申請手続きをおこないましょう。

断熱リフォーム補助金2023の申請期限はいつまでですか?

複数の種類がありますが、多くの補助金がすでに申請受付を終了しています。すでに利用したい補助金が決まっている場合は、小まめにホームページの更新情報をチェックしておきましょう。人気の補助金は応募が殺到するため、早めに準備をしておくことが重要です。

まとめ

今回の記事では以下の4点に関して述べてきました。

  • 住宅エコリフォーム推進事業の概要
  • 高性能断熱材や窓の選び方
  • マンションのリフォーム事例
  • リフォーム費用を減らすポイント

既存住宅を省エネ化する方法は、断熱材の張り替えや窓ガラスの素材変更、高効率給湯器の設置など、さまざまです。予算や住宅の劣化状況を含め、どの工事が合っているか、判断することが重要です。

国の補助金と地域自治体の助成金を併用すると、工事費用の負担を大幅に抑えられます。リフォームの際は、複数の工事を一度に実施しましょう。また、マンションでリフォームをおこなう場合、改修可能な範囲が限られているため、事前に確認をしておく必要があります。

国土交通省エコリフォームに関する重要用語

項目説明
ZEH(Net Zero Energy House)エネルギー生産量と消費量の差し引き0を目指した住宅です。エネルギー消費自体をなくすことは難しいため、太陽光発電設備を導入しエネルギーを生み出します。

エネルギー消費量削減のため、外皮の断熱性能向上や電力の無駄使い回避によって、省エネを推進します。
gBizIDプライムアカウント行政システムにログインするための共通アカウントです。必要な書類を提出した後、すべてのサービスにアカウントを活用できます。アカウントの有効期限はありません。
窓リフォーム補助金2023環境省が主導する先進的窓リノベ事業で利用可能な補助金制度です。一定の条件を満たすと、最大200万円まで補助金が得られます。

著者のプロフィール

タンソーマン 事務局
株式会社タンソーマンGXのメディア編集長です!日々、脱炭素に関わる情報を発信しています♪