第2次世界大戦がようやく終結に向かった時、世界は一様に荒廃していました。人々は食料を求め、衣類・住む家を求め、仕事を求め、より便利で安全に暮らせる社会的インフラを求めていたのです。そうした時代のニーズから、幅広い分野において数多くの企業が著しく成長していきました。
日本企業が、電機関連を中心に黄金時代を迎えたのも戦後からの再建が後押ししたからです。そして時は流れ、産業革命後の大量生産はピークを迎えました。現在は、かつて必要とされた多くのものが溢れかえり、その行き場に困っている状況です。今私たちは、深刻な地球温暖化と資源不足、ゴミ問題に直面し、事業・産業のあり方が問われてきています。これからは、数々の社会問題を解決する企業が選別されていく時代になるといわれています。
世界は脱炭素へと舵をとっている
大量生産、使い捨て、化石燃料の使用をこのまま継続すると、気候変動による自然環境破壊、地下資源の枯渇が免れないことが科学的に実証されています。2016年、パリ協定にて196か国が気候変動への施策をとることに同意しました。
リサイクルによる資源の再利用や、CO2排出量の削減、化石燃料から再エネへのシフト、プラスチック製品の減少など、世界は脱炭素・環境保全へと舵をとり始めています。大手企業を筆頭に、まずは企業が脱炭素の取り組みを先導していくことが社会的義務と見なされるようになり、次第にビジネスの形態も新しい時代に向けて変わりつつあります。
社会から必要とされる事業とは
日本、欧米など、世界経済をリードする先進国の国々では、物質的には十分に満たされています。21世紀を迎えた今、社会から必要とされる事業とは、どのような事業をいうのでしょうか。先進国における私たちが求める豊かな暮らしとは、どのような暮らしなのでしょうか。
過去を振り返ると、物不足の時代に幼少期を過ごした世代が大人になった時、物を持つことが最高のステイタスとして見られる風潮にありました。高級車、贅沢な住宅、土地・建物、高級ブランド品などがそうです。
ところが時代は変わり、物が溢れる時代に幼少期を過ごした世代は、すでに物を持っていたため、従来のステイタスにはほとんど関心を持たない傾向にあります。いわゆるZ世代と呼ばれる世代のことで、むしろすでに持っている物を再利用・リサイクル・シェアリングしたりと、新しい価値観によるビジネスが展開し始めています。
サステナビリティを満たす3つの指標
新しい時代の豊かさを象徴すべく、国際的な規範として持続可能な社会を目指してSDGsの17の目標が定められました。SDGsの目標は大まかに3つの柱で構成されています。
- 健康と安全、教育を基盤とした個人を尊重する平等な社会
- 生物多様性、自然の生息地を尊ぶ自然環境保全と災害防止
- 競争力、技術革新を追及した収入と雇用の促進
物の所有から、社会問題・環境問題が解決できるビジネスや経済、自然環境に根ざしたライフスタイルと、人々の関心は移り変わってきています。大量生産時代のかつての豊かさの価値は薄れ、本当の意味での環境の豊かさや、心・生き方の豊かさが追及される時代が訪れているのです。
これからは社会・人、自然環境、経済とそれぞれが上手く連携・成長していける、新しいビジネスモデルが必要だといわれています。脱炭素経営がまさにそうです。脱炭素経営は、新しい時代のビジネスを台頭する存在なのです。
参照:SDGsとは – 外務省
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事業の見直しが求められている
物中心の経済から、気候変動を考慮した新たな価値観・ライフスタイルを導く経済へと動き出している以上、これまでと同じやり方では、企業は生き残っていけません。ここにきて、脱炭素経営を契機に、どんな商品・サービスを提供していくのか、改めて事業の見直しが求められています。
事業には大きく2つのタイプがあります。1つはエッセンシャル・プロダクトと呼ばれる「生活必需品」です。食料や医療、住宅など人が暮らしていく上で最低限に必要なものとなり、一定以上のニーズが常にあります。これらに、再エネ・再生可能資源が加わることで、より強固で安定したビジネスとなり得ます。
そしてもう1つは、ノンエッセンシャル・プロダクトと呼ばれる「嗜好品・娯楽品」です。なくても困らないけれど、あった方が生活が便利になる、楽しくなる、といったものです。例えば、シェアリング自転車はあると便利なだけでなく、CO2削減や廃棄自転車の削減、資源の無駄遣いを防ぐなど社会や環境への貢献度が高いビジネスと見れます。
何が本当に必要なのか、その答えを見つけられる企業が、21世紀の脱炭素時代で生き残っていくに違いありません。
事業の価値は何なのか
仮に、ニーズが高く社会・自然環境への貢献度が高いビジネスだとしても、そういったビジネスは狙う企業も増えるため競争が激しくなる側面も合わせ持っています。では、他社との違いは何なのか、自社の企業価値をアピールせねばなりません。
また、脱炭素時代においても生活必需品の中には、多消費型で鉱物資源を使うケースも当然出てくるでしょう。その場合は、いかに安価でCO2を抑えた製品が生産できるのか、いかにリサイクルにて資源活用していくのかが、競合との差をつけることになります。それぞれで展開する事業の価値が何なのかを、改めて見直す必要があります。
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何か1つ他社より優れているものを
柔軟な思想と発想で、イノベーティブな商品開発・開拓が行えるような基盤をしっかり整えることが大切です。「これだけは他社には負けない」「これだけは他社には真似できない」と何が1つ、他社より優れているものを見つけていきましょう。
社会・人、自然環境、経済と新しい時代のニーズに応えながら、消費者や取引先を魅了する付加価値が創出していけたら素敵です。そうした企業が、原材料費の高騰にも負けず、企業の生き残り競争にもしっかりと打ち勝っていけるのです。
著者のプロフィール
- 太陽光発電・蓄電池等を専門とする住宅設備会社での勤務歴10年。再エネの専門知識からエネルギー系の株式投資と記事執筆を開始する。エネルギー専門の投資家兼ライターとして独立して7年。過去にNY、ロンドンの移住歴あり、国内・海外メディアを駆使した情報収集が強み。
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