1998年、京都議定書(パリ協定の前身)の採択を受け、「地球温暖化対策推進法」、略して「温対法」と呼ばれる法律が発足しました。日本における地球温暖化への取り組むための枠組みをまとめた内容となっています。
温対法とはどんな法律なのか
温対法では、地球温暖化対策を国全体で推進させるために、温室効果ガスの排出量を算定・報告する義務や排出量抑制への取り組みを規定しています。国、地方公共団体、事業者とそれぞれの役割や責務を明確化するものです。
温対法が制定された理由
地球温暖化は、人の活動に伴って発生する温室効果ガス(GHG)の増加によって生じる、地球全体の過度な気温上昇のことを指す、と温対法では定義づけています。従って、人の活動を規制してG温室効果ガスの発生を減少させる必要がある、との目的から温対法が制定されました。
具体的には、「自ら排出する温室効果ガスの排出抑制」「製品改良や国際協力など他者への取り組みへの寄与」「国や自治体の施策への協力」などが事業者の責務として定められています。
温対法が対象とするGHG
温対法の規制対象とは、気温上昇の要因となる温室効果ガスです。以下の7種類を排出抑制の対象としています。
温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の調査統計によると、GHGの構成比率ではCO2が最も多く全体の75%を占めています。この事実から、温室効果ガスをCO2と表現する場面も多くなるわけです。温対法でも、とりわけCO2に関しては「エネルギー起源CO₂」と「非エネルギー起源CO₂」と2に分けて算定の対象としています。
「エネルギー起源CO₂」は、おもに燃料や電気・熱の使用にて生じるガスで、「非エネルギー起源CO₂」は、セメントや石灰の製造、ソーダ灰の使用、アンモニアの製造、シリコンカーバイドの製造、ドライアイスの使用など生産の過程で生じるガスです。
関連記事はこちら:エネルギー使用量・化石燃料使用量を見える化する
対象となる事業者
【特定事業所排出者】 | 全ての事業所のエネルギー使用量合計 が1,500kl/年以上となる事業者 (省エネ法の特定事業者) |
【特定輸送排出者】 | トラック200台以上、鉄道300両以上、 バス200台以上などの輸送業者 (省エネ法の特定貨物・旅客輸送事業者) |
【特定事業所排出者】 | 温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の 排出合計がCO2換算で3,000トン以上、 及び事業者全体の従業員数21人以上 |
対象となる事業者は、温対法の規定に沿って温室効果ガス排出量の算定・報告の義務があるとされます。未報告・不正報告を行った場合、20万円以下の罰則が科されます。
排出量の算定・報告義務
排出量の算定は、まず温室効果ガスが生じる活動を事業所全体で抽出します。次に、法令で定められている算定方法・排出係数を用いて排出量を計算します。
排出量 = 活動量 × 排出係数
さらに、温室効果ガスの種類ごとに、活動ごとに算定した排出量を合算します。算定した排出量をCO₂の単位に換算します。
排出量(tCO₂)= ガス排出量(tGas)× 地球温暖化係数(GWP)
用いる係数は、使用する電気の供給元によって異なる場合があります。電気事業者から供給された電気は「国が公表する排出係数」、電気事業者以外からの供給は「実測に基づく係数」、どちらにも該当しない場合は「環境大臣・経済産業大臣が公表する係数」を用いる仕組みです。
排出量の報告・手続きは、エネルギー起源CO₂の場合は「省エネ法 定期報告書」にて、それ以外の場合は「温対法 温室効果ガス算定排出量等の報告書」にて行います。提供された報告書は、排出量の情報と併せて公表されます。
排出量データは閲覧・請求できる
温対法の流れをまとめると、「対象となる業者」は排出量を算定し、期日までに前年度の排出量を「事業所管大臣」に報告します。報告された情報は、「環境大臣・経済産業大臣」に通知され国が情報を公表する流れになります。
「国民・事業者」は情報の閲覧及び請求が可能で、こうした情報開示の仕組みによって、脱炭素が推進されていくというのが、まさに温対法が狙うところです。
著者のプロフィール
- 太陽光発電・蓄電池等を専門とする住宅設備会社での勤務歴10年。再エネの専門知識からエネルギー系の株式投資と記事執筆を開始する。エネルギー専門の投資家兼ライターとして独立して7年。過去にNY、ロンドンの移住歴あり、国内・海外メディアを駆使した情報収集が強み。
最新の投稿
- CO2削減2023年10月21日【在宅VS出社】在宅ワークがカーボンニュートラルを加速させる理由とは
- CO2削減2023年10月17日【まだ間に合う】企業がCO2見える化する一番大きなメリットとは?ソフトウェアアプリのデメリットも紹介
- 第6章2023年12月16日【固定費と変動費】脱炭素経営では区分するところから始まる!脱炭素会計の基本
- 第6章2023年12月16日【人件費にお金を使え! 】優秀な人材が脱炭素経営を加速させる理由とは?GX人材の需要