省エネ法の正式名称は、「エネルギー使用の合理化等に関する法律」といい、1973年~1979年にかけて起こったオイルショックが契機となっています。
省エネ法とはどんな法律なのか
1973年~原油産油国である中東で戦争が相次ぎ、原油価格は70%以上に高騰しました。原油の価格高騰に始まった激しいインフレにて、「紙がなくなる」との噂が全国で拡まり、スーパーではあらゆる商品の買占めパニック騒動が起きたのでした。日本経済の低迷と深刻な資源不足が危惧され、エネルギー利用の効率化を目的とした省エネ法が制定されたのです。
この規制により、一定規模以上(1,500kl/年度 原油換算)のエネルギーを使用する事業者は、エネルギーの使用状況を定期的に報告し、省エネに関する取組を見直し策定・計画を行うことが義務づけられています。
省エネ法の対象者
事業分野は、工場・事業などの産業分野、及び運輸業が対象となり、工場・事業所の設置者、輸送業者・荷主に対して省エネ取組の目安となる基準が省エネ法にて定められています。
産業・事業部門
事業全体のエネルギー使用量が1,500kl/年度を超える事業者は「特定事業者」「特定連鎖化事業者」または「認定管理統括事業者」に分類され、提出書類や措置の実践など省エネ法の義務が課せられます。
- エネルギー管理者・企画推進者などの選任義務
- エネルギー使用状況届出書の提出(定期報告・中長期計画書)
- 年平均1%以上または平準化評価によるエネルギー消費原単位の低減
※2021年の法改正により、グループ企業全体で一体的に省エネ法の義務が履行できるようになりました。
運輸部門
運輸部門に関しては、貨物・旅客輸送業者で、トラック200台以上の業者を「特定貨物/特定旅客輸送業者」と分類、また3,000万t,km(トンキロ)以上の荷主を「特定荷主」と分類し、省エネ法の対象としています。荷主の定義は「貨物の所有者」ではなく、「輸送の方法を決定する者」と規定されています。
- エネルギー使用状況届出書の提出(定期報告・中長期計画書)
- 燃料法・燃費法・トンキロ法によるエネルギー使用量の算定
- 複数の荷主が連携する場合は認定を受ける
その他、32品目以上のエネルギー消費機器を扱う製造業者、一般消費者向けの小売業者、対象に該当しない事業者においても、エネルギー効率を向上させる努力義務があるとしています。建築物に関しては、建築物省エネ法をご参照下さい。
関連記事はこちら:省エネ法の対象事業者とは?直接規制と間接規制も解説
2022年の法改正 概要(2023年~)
2050年カーボンニュートラルの目標や2030年のCO2削減目標の達成に向けて、省エネ法はこれまでの「化石エネルギー使用の合理化」から「引き続き省エネに努めるとともに、非化石エネルギーの導入拡大」と「エネルギー需要の最適化」」が求められる内容へと改正されています。2022年(令和4年度)の省エネ法改正のポイントをまとめておきました。
エネルギー使用の合理化
これまでの省エネ法は、石油、揮発油、天然ガス、石炭などの化石エネルギーのみに限られていましたが、2023年より新たに、太陽光、太陽熱、水素、アンモニアなどすべてのエネルギー使用の合理化が求められます。非化石エネルギーも報告対象です。
非化石エネルギーへの転換
省エネ法の対象となる特定事業者は、従来の報告書に加えて非化石エネルギーへの転換目標・中長期計画書・報告書の提出が求められます。鉄鋼業(高炉・電炉)、化学工業(ソーダ工業)、セメント製造業、製紙業(洋紙・板紙)、自動車製造業の5業種は、国が定める目標設定の目安が定められています。
目安が設定されていない業種の特定事業者は、使用電気全体における非化石電気に関する目標を設定、かつ各事業者はあらかじめ設定した目標に加えて任意の目標設定も可能です。
電気需要の最適化
改正法で定められた、電気の需要の最適化では、特定事業者は電気使用量の報告だけでなくDR(電力需要の調整)の実績報告を行う必要があります。これまでの省エネ法では、電気使用量は平準化に基づいて、昼間・夜間に分けて報告していました。
今後は、再エネ出力制御時の電力シフトや、需給ひっ迫時の需要減少を目指してDRを実施します。電力の需給状況に応じて「上げDR(再エネ余剰時に電力需要を増加)」あるいは、「下げDR(電力需給ひっ迫時に電力需要を抑制)」と、DRを実施した日数を報告しなければなりません。合わせて、月別・時間帯別の電気使用量の提出も必要です。
関連記事はこちら:省エネ法は2023年に改正された?概要や改正点を詳しく解説
エネルギー消費量を見える化・管理する
改正省エネ法では、「エネルギー使用の合理化」に加えて、「非化石エネルギーへの転換」「電気の需要の最適化」と3つの評価軸にて、取組状況への評価が行われます。これまでになく、無駄なエネルギー消費、効率化が可能なエネルギー消費を把握することが肝心です。エネルギー消費量を見える化して管理・対策を講じることが必要不可欠となってくるでしょう。
著者のプロフィール
- 太陽光発電・蓄電池等を専門とする住宅設備会社での勤務歴10年。再エネの専門知識からエネルギー系の株式投資と記事執筆を開始する。エネルギー専門の投資家兼ライターとして独立して7年。過去にNY、ロンドンの移住歴あり、国内・海外メディアを駆使した情報収集が強み。
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